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悪の限りを尽くす…つもり  作者: 雷抖
東大陸編
1/51

誘拐…のつもり

初投稿で右も左も、前も後ろも良く分かっていませんが、宜しくです。

 俺の名は…いや、それはいいか。

 俺は今日から、悪になる。盗み、詐欺、恐喝、強奪etc.

 とにかく悪い事をして、誰もが震え上がる大悪党になる。なってやる。


 これから行うのは、俺が悪になって初めての悪事だ。…まぁ、初めても何もないけどな。悪になるって決めたのさっきだし。


 さて、初めての悪事は、【誘拐】だ。


 今俺がいるのは、オーディア王国。初代オーディアが大陸の西端を切り拓いて造ったとされる、東大陸一の大国だ。温暖な気候で、海も山も森もある自然豊かなこの国では、交易が盛んだ。


 記念すべき初めての悪事、誘拐。今回狙うのは、オーディア王国王都グランディア。その中心にそびえ立つ王城。そこにいるオーディア王国第一王女の、ヒメリア・アルオス・オーディアだ。つまりお姫様だ。


 国王の一人娘にして、次期女王のお姫様をさらうのが、俺の初めての悪事だ!腕が鳴るぜ!


「待ってろよ姫様。あんたをさらって王国を混乱させてやる!」


 周りの人が驚いた。やっべ逃げろ!





 一週間が経った。下準備、調査、鍛練。やるべき事はやった。後は実行するだけだ!


 という訳でやってきましたオーディア城。4本の槍が如き尖塔が東西南北にそそり立ち、中心の城は見ているだけで萎縮しそうな荘厳さだ。普通に怖い。

 とはいえ、そんな事は言ってられない。さぁさぁお姫様をさらいに行こうかな。


「…にしても、変だな。人っ子一人いねぇや」


 サクッと侵入した城内で一人呟く。

 そう、侵入してから今まで誰にも遭っていないのだ。確かに、万全を期して侵入は深夜になってからにしたし、あまり兵士とかも通らない様な通路をコソコソしてたけど、それにしても誰にも遭わなすぎだ。不自然極まりない。


「…まさか、計画がバレてる?」


 馬鹿な、有り得ない。計画は綿密に立てたし調査も慎重に行った。街中で堂々とさらってやる発言をした事以外に計画が漏れる可能性なんかない。


「…それとも、これが罠か?」


 あえて無防備に見せて、油断している所をキャッチ&プリズン?捕縛即収監?


「…ま。それならそれで、別にいいや」


 例え罠でも、切り抜ければいいだけだし。

 灯りの乏しい通路を進む。…どうやら、人がまったくいないという訳ではない様だ。通り過ぎたいくつかの部屋から、人の気配がしていたからだ。とはいえ、寝ている様だけど。

 通路を進む。進む。進む。

 やがて、目的地であるお姫様の寝室が見えてきた…のだが。


「…おーい、職務怠慢だぞー」


 お姫様の寝室の前には二人の警備兵がいたが、どちらも夢の世界へ旅立っていた。つまり寝てた。

 不用心だなーと思いつつ、二人を起こさない様に扉に手をかける。

 さぁ、後は、扉を開けてお姫様をさらい、そして王様とかなんかその辺の人に身代金とかそういうのを要求するのかな?

 ふむ、誘拐なんて初めてだから、作法が分からないな。ま、それはお姫様をさらってからでいいか。

 俺は、ゆっくりと扉を開け……


「………う、大人し…」

「………か、助け…」

「………い、口塞…」


ようと思ったけど何やら取り込み中の様だ。ソロッと扉を閉める。


「………だ?気配が…」

「………い、確認し…」


 さて、どうしよう。このまま帰ろっかなー……


「…帰すと思うか?」

「…ですよねー」





 私の名前はヒメリア・アルオス・オーディア。東大陸一の王国オーディアの第一王女です。

 現在私は、三人組の賊によってさらわれかけています。

 …何故、冷静にそんな事を考えていられるのか。それは、状況が少々変わったからでしょう。


「いてて、ちょっとは加減しようぜー」


 そういって、その方は立ち上がります。

 黒い髪に翠の瞳のその方は、先程賊の一人に部屋の外から中へ投げ飛ばされてきた方です。

 彼は部屋中を見回し、そして私と目が合いました。


「あーらら、これぞ誘拐って感じだな」


 現在私の体には頑丈な縄が縛り付けられて、口には猿轡をはめさせられています。確かに、誘拐される人がしている格好ですね。


「チッ、テメェがモタモタしてるから、警備兵が来ちまったじゃねぇか!」

「…否、我ではなく【参】の責だ」

「いや俺かよ!?【弐】だって共犯だろ!?」

「…ならば【壱】もだな」

「おい、ふざけんなボケ共」


 賊達はそうやって互いに責任を擦り付けあっていました。…馬鹿なんでしょうか?


「馬鹿な連中だなー」


 あ、警備兵?の方が代弁して下さいました。


「テメェ、状況分かってんのか?」

「んー、それは俺が聞きたい事だな。お前らこそ状況分かって騒いでんの?」


 そう、彼等は騒いでいます。そんなに騒いでいたら、直ぐに他の警備兵の方が…


「ハッ、舐めんな。とっくに《遮音(しゃおん)》を展開済みだっつの」


 《遮音》…。その名の通り、効果範囲内の全ての音を外部に漏らさない魔法ですね。まさか魔法が使える賊だったとは。


「…あぁ、なるほど。だから聞こえ難かったのか」

「あ?何か言ったか?」

「ん?別に?」


 それにしても…、あの警備兵の方は随分余裕がありそうですね。こんな状況なのに…。

 …本当に警備兵でしょうか?見た記憶が無い方なのですが。


「さて、《遮音》はしてあるが、急ぐに越した事はねぇ」


 そういって賊の一人、確か【壱】と呼ばれていた方が懐から大振りのナイフを取り出し、警備兵かもしれない方に向けました。


「…何でわざわざ懐に?抜き身じゃ危なくない?」

「俺の体の心配よりテメェの身の安全確保が先じゃねぇ!?」

「意外と優しいな」

「お前が危機感なさ過ぎるからだ!ふざけんな!」

「あ、何かゴワゴワすると思ったら服の前後間違えた」

「この状況で着替えてんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」


 …何故でしょう、賊の方が哀れです。

 それはそれとして、やはり警備兵ではなさそうです。何故なら着ているのが服だけで、防具の類を着用していないからです。


「テメェ、警備兵じゃねぇな!?」

「うん。つか俺は一言も言ってねーよ?お前らが勝手に騒いでいただけで」

「こいつ嫌いだー!」

「ありがとう、嫌ってくれて」

「こいつの相手やだ!!」


 …にぎやかですね。


「…落ち着け、【壱】。奴のペースに呑まれるな」

「そうだぜ、ちっと落ち着けよ」

「あ、あぁ…悪い」

「…【壱】とは相性が良くないようだな。我が相手をしよう」


 そういって、【弐】と呼ばれた方が前に出ました。


「…【壱】を混乱させて隙を突こうとしているようだが、無駄だ。何故なら我がいるからな」

「…ん?あっ、違うなこれ。上着じゃなくて肌着が逆なんだな」

「…おい、やめろ脱ぐな。前後の確認をするな。首を傾げるな!」

「んー?…まさか、……下?」

「ふざけるなァァァァァ!!!」

「お、落ち着け【弐】!気持ちは分かるが…」

「こ、この、クソ餓鬼!殺す!殺し尽くす!!」

「殺すのはいいがまだ聞くこと聞いてねぇから待て!」

「……あっ、違った。こういうデザインなだけか。」

「「殺す!!」」

「おおお落ち着けって二人共!」


 何でしょう。緊張感が完全に消え去ってしまいましたね。

 しかし、気になる事を言いましたね。聞くこととは一体…


「もう俺が聞くよ。おい!ふざけた部外者!」

「…?お姫様、呼んでますよ?」

「ムムグ?」

「いやテメェだよ!?」

「あ、俺か。なに?」

「なに?って…。…お前、何処の賊だ?俺達の仕事の邪魔するからには、相応の覚悟があんだよな?」

「………。」

「おいおい今更ビビったのか?だがもう遅…」

「やべ、外雨降ってんじゃん。傘持ってねぇのに」

「テメェぶっ殺したるらワァァァ!!!」


 ……あ、本当だ。雨降ってますねー。





 ふむ。ずいぶん沸点の低い連中だな。

 最初はともかく、途中からはわざと怒らせる様に挑発していたけど、こうもあっさり引っ掛かるとは。

 さて、どうするか。お姫様は口も体も縛られていて、さらうには好都合だけど、不審者三人組が邪魔だなー。

 かといって三人と戦うのは時間が勿体ない。流石にいい加減《遮音》があるといっても、城の連中が気付いてここに来るかもしれない。そうなったらアウト。だからさっさと目的を果たしたいけど、三人が邪魔。もうすっごく邪魔。


「…もう無理もう限界だ。…殺す。異存はねぇよな?」

「…あぁ、もういい。誰とかもうどうでも良い」

「…是。殺す」


 おっと、向こうも限界か。なら仕方ない。


「……やるか?いいぜかかってこい」


 最後にもうひとつ挑発した瞬間、三人から凄まじい殺気が溢れだした。…うん、やり過ぎたかな?


「…死ね」


 誰が言ったか、そう聞こえた瞬間、三人が消える。


「…へぇ。《遮音》だけじゃなく、《隠身(いんしん)》も使えるんだ。三下かと思ったけど、やるじゃん」


 そう呟いた直後、後方から僅かに殺気が漏れた。

 瞬間、俺は前方へ向けて蹴りを放つ。


「ガァッ!?」


 【参】が、腹部を抑えながら現れた。


「やっぱり三下だな。あの程度で騙せると思ったのか?」


 言って、後方に少し跳ぶ。直後、先程まで俺が居た場所を、二つのナイフが突いた。


「ほいっ…と」


 軽い掛け声と共に右側のナイフの柄部分の少し横を蹴りあげ、そしてもうひとつのナイフの少し向こうを踏みつける。


「なっ…!?」

「……ッッッ!?」


 すると《隠身》が解けて、腕を蹴り上げられた【壱】と、俺に手首を踏みつけられた【弐】の姿が現れた。


「よいしょー」

「ガフッ…!?」


 踏みつけた足を少し上げ、【弐】を蹴り飛ばす。

 【壱】の方を見ると、いつの間にか【参】の側に移動していた。そして蹴り飛ばされた【弐】も合流する。


「…大丈夫か、【弐】」

「ゲホッ…。余り、余裕は無いな」

「…こいつ、ふざけてる癖に、強ぇな」


 ん?足に《痺縛(ひばく)》纏わせて蹴ったんだけど、あんまり効いてなさそうだな。やっぱり、只の三下ではないか。


「…気を付けろ。奴も魔法を使うぞ」

「…チッ、王国お抱えの魔法騎士か?」

「おいおい、だとしたら俺達じゃ手に負えねぇぞ?」

「否、魔法騎士ではないだろう。奴等が使うのは、効果の派手な光魔法や強化魔法だ。間違っても、暗殺者向きの状態魔法は使わん」

「…なら、暗部の奴か」

「暗部にしては、ふざけ過ぎてるけどな」


 …コイツら、本物の馬鹿か?敵の目の前で悠長に会話してんなよ。それを待ってくれるのは、物語の中の悪役ぐらいだぞ?

 そりゃあ俺も悪になったつもりだけど、そんな馬鹿な真似はしない。


「つー訳で、《幻夢(げんむ)》」


 魔法を放つ。すると、三人は一瞬体をビクッとさせた後、虚ろな表情で虚空を見つめていた。


「ふぅ。状態魔法の耐性は高くても、精神魔法の耐性は低くて良かった」


 呟いて、お姫様を見る。


「ムムゥ、ムムマムム」


 お姫様が、キラキラした眼でこちらを見つめている。仲間にしますか?


「いや、違うだろ」


 あれ?俺、お姫様をさらいに来たのに、何でこんなヒーローを見る様な……ってそうか。お姫様は俺が何しに来たかは知らないよな。

 だからお姫様的には、俺がお姫様を助けに来たヒーローに見えてんのか。…ん、ちょっとだけ心苦しいな。

 でもまぁそれなら、少しの間は大人しくしててくれるかも。

 そうして、お姫様をさらおうと一歩踏み出した時、部屋の外から多数の足音が聞こえてきた。


「あ、《遮音》解けてんじゃん…」


 いつの間にか、《遮音》が解けていた。つまり、さっきまでのどたばたが外に漏れてた訳で…。


「姫!!無事か!?」


 当然、こうなる訳で…。やべー…、どうしよう。


「ムァ、ムアアママ」

「おおぅ、なんという…。すぐに解いてやるからな」


 お姫様の部屋に乗り込んで来たのは、兵士が五人と多分王様。

 いや、王様だな。でも、王様が直接来るとか、不用心だなー。

 王様はお姫様の体に巻かれた縄をほどき、口の猿轡を外した。


「あぁ、お父様…。」

「リア、怪我は無いか?…すまぬ、奴等の仕掛けた陽動の対処に手こずり、お前を危険に晒してしまった……。…無能な儂を罵っても良いぞ」


 あぁ、疑問が解けた。何で警備が少ないんだろって思ったけど、三人組が何かやってたのか。ふむ、タイミングが良かったのか悪かったのか…。


「…いいえお父様。お父様は悪くありませんわ。それに…」


 お姫様が俺を見た。王様もつられて俺を見る。いやん見ないで。


「あの方が助けて下さったから、私は何ともありません」

「………フム」


 王様は立ちあがり、俺を見据える。その顔は先程までの好々爺然としたそれではなく、国を統べる王の顔だ。


「…礼を言う。貴殿が居なければリアは…、姫の身は無事ではなかったかもしれん。一国の主として、そして何より一人の父親として、貴殿に最上の礼を」

「あぁ、いや、えっと……、どういたしまして?」


 王様の謝辞に、僅かに怯む。いや、いくらなんでも、王様が軽々しく頭下げちゃダメだろ。


「お、王よ!?」

「そんな、頭を垂れるなど…」

「静まれ」


 ほら、兵士達も困惑してる。…しかし、何だろう。物凄く嫌な予感がしているんだけど。


「…ところで、こんな噂話を耳にしたのだか」

「は?」


 王様が、頭を上げながら突然そんな事を言い出した。


「我が王都のとある場所で、白昼堂々姫をさらう発言した者が居たらしいのだ」

「まぁ。もしや彼らですか?」


 お姫様は平和にも三人組を見ながらそう言うが、王様は三人組に一切目もくれず、只々俺を見据える。…ひやあせがとまらないよ。


「その不埒者の姿だがな、黒い髪に灰と白の服を身に纏っていたそうじゃ」


 …あら奇遇。俺も黒髪で灰と白の服着てるわー。


「まぁ、所詮噂話じゃからな。何処まで信憑性があるかのぅ…?」

「あ、あはははは…」


 ヤバい…。王様の眼が獲物を狩るときの狩人の眼だ…。そして兵士が俺の挙動を注視してる…。


「さて…、もう良いかな?」

「あ、お話がお済みでしたらお名前を…」

「お主、何者じゃ?どうして此処に居る?」


 遂に来た…。兵士はいつでも何があっても良いように集中してる。これは、もうどうにもならないな…。あとお姫様、空気読んで。


「………。……ふっ」

「?」

「あの、お名前…」


 お姫様の方を向き、ニコッと微笑む。そして…


「名乗る程の者じゃありませんよ…。ってか、そんな余裕無いって事で《疾脚(しっきゃく)》!!」


逃げた。強化魔法使って逃げた。


「な!?くっ、追え!逃がすな!!」

「は…、ハ!!」


 少し遅れて、王様が兵士に命令を出した。それを受けて兵士が追跡に移る。


「…と、追わせはしたが、まぁ無理じゃろうな。相手は強化魔法を用いて逃げたからのぅ」


 兵士を送り出した後、王様はそう呟いた。


「………」

「む、リア?」


 そこで、王様はお姫様の異変に気付く。お姫様は青年の去った方を、うっとりとした表情をしながら見つめていた。まるで、恋する乙女の様な…


「あぁ、名も知れぬ御方。なんて罪な御方……」


 お姫様は、艶っぽい声音で、陶酔する様に、そう呟いた。





「奴は指名手配じゃァァァァァ!!!」





 こうして、青年はオーディア王国で、指名手配になった。

 罪状・姫を狂わせやがってムキー!!罪。




青年は悪の道を歩み始めた…か?

こんな感じで、ゆるーくいきますので、温かい目で見守っていて下さい。

誤字脱字等がありましたら、教えて戴けるとありがたいです。

宜しくお願い致します。

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