謁見の間で父と対話
父:ムゲンとの対話です
謁見の間では、父でありカウン・アルヒ国王ムゲンが厳めしい顔をしてナゴムが現れるのを待っていた。
「父上、遅くなって申し訳ありません。」
「構わぬ。本日行う儀式は王族の者にとって大切な事だからな。不安で眠れなかったのだろう?」
「は、はい…そうです。」
ズバリ言い当てられて、ナゴムは気まずそうに笑った。
そんな彼を見て、うんうんと頷きながら暖かい目で見つめながら、ムゲンは話を続ける。
「あまり気負いするな。儀式といっても無理難題を突き付けられる訳ではない。心を落ち着けて行ってきなさい。」
「はい、頑張ります!」
ムゲンの言葉に励まされ、元気よく返事をするナゴム。
「よい返事だ。それではナゴム、そなたが向かうのはあの場所だ!」
ムゲンはくるりと背を向けると、一点を指差した。
玉座の壁面には大きなガラスが嵌め込まれており、外の景色が一望出来るようになっている。
彼が先ほど示した場所には、ナゴムの部屋からも見えた生命の樹が見えた。
「…父上、あの場所って、生命の樹の事ですか?」
「正確に言うならば、生命の樹の近くに祠がある。そこに行けば儀式の内容が分かるであろう。」
「昨晩、父上とお話されていた方がいるんですね。」
「…そういう事だ。では、気を付けて行ってこい。」
「はい、行ってきます!
行こう、カナメ!」
兵士達の列に並んでいたカナメを連れて謁見の間を出ようとした瞬間、父に呼び止められた。
「ちょっと待てナゴム、祠へは一人で行くのが決まりだ!カナメを連れていく事は出来ないぞ。」
「えーそんなぁ!ボク、城の外に出るの生まれてはじめてなんだよ?祠につく前に迷子になって悪い人に襲われちゃうよぉ!」
「それは確かに困るが、一人で行く事がきまりとなっている。」
「イヤだよ、怖いよ!カナメが一緒じゃなきゃ行けないよぉ!」
半べそをかいて駄々をこねる息子に困惑し、目を閉じて思案するムゲン。
しばらくして、ふぅ、とため息をついた。
「…仕方あるまい、カナメを連れていきなさい。
ただし、これはそなたの儀式なのだ。決して手助けを求めてはならん、よいなナゴムよ。」
「やったー!ありがとうございます、父上。」
満面の笑みを浮かべてペコリと頭を下げると、カナメを連れて謁見の間を出ていった。
「…やれやれ、我が息子ながら予想通りの行動すぎて少し情けないな。」
二人が出ていったのを確認してから、ぼそりと呟くムゲンであった。