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風の章 21

次に、俺達はグロームと一緒にザーパト村に降り立った。


小僧とグロームは真っ直ぐザーパト村の真ん中にある小さな礼拝堂に向かって行く。


――お前ら、俺にもうちっとなんか説明があってもいいんじゃねぇか?!


俺の事なんかお構い無しだ。。



礼拝堂の中から小僧と同ような格好をしたばあさんが出てきた。


「魔物が2匹。一体、何の用だぃ」

と、俺達をじろじろ見る。その視線には、あからさまな敵意を感じる。


小僧がすっと前に進み出た。

「東の都ツェーントルの神殿から来た者です」


「ふん。神殿の中に住んでいる奴が、こんな辺境に来るものかい」

と、信用しない。


「そちらで眠っている方にお返しするモノをお持ちしました」

と、小僧はその場で両手を差し出した。

小僧の手の中から、気の塊が浮かびあがって吸い込まれるようにの礼拝堂の奥に消えた。


「お姉ちゃん!」

小さな男の子が聞こえた。


「シーラ!」

と、グロームが家の中に飛び込んでいった。


――グローム?


「おい!」

俺がグロームを追いかけて家に入ろうとすると、ビリビリと結界に阻まれて中に入れなかった。


――結界があるじゃないか。


俺は少々びっくりした。グロームが結界を物ともぜずに飛び込んでいった。

それも人間のために?グローム、お前はいつからそんなに人間思いになったんだ?


――何が起こっているんだ?!


好奇心が俺を動かした。


「体が千切れそうだから結界解けよ」

と、俺が言うと、


「ふん」

と、言いながら、ばあさんは片手を上げた。


今まで見えなかった村人の姿が遠くにちらほら見えた。


グロームを追いかけて中に入りかけると、中から悲鳴が聞こえた。


「キャー!」


俺と小僧とばあさんが家の中に飛び込んだ。中には、男の子がいて、グロームがいて、そして、ベッドには雪のような白い肌をした黒檀のような黒髪の女がいた。


「キャー、魔物!」

と、叫ぶ女に、


「姉ちゃん、グローム兄ちゃんだろ?」

と、不思議そうな顔する男の子、


「知り合いじゃないのか?」

と、俺は言い、


「魔物に憑かれている間の記憶が…混乱しているのはないでしょうか」

と、小僧は説明し、


「・・・そうか」

と、グロームが消え入りそうな声で呟いた。


それから、しばらく時間が止まったようだった。


グローム、がっくりと肩を落としてしばらく動かなかった。俺がそう感じただけで本当は少しの間だったのかもしれないが、とにかくグロームが動かないから、何故だが俺も動けない。


間もなくグロームは何も言わずにふっとどこかに消えてしまった。


呆然と立っていた俺に、

「帰りましょう」

と、小僧が言った。


「そうだな」

と、俺達は礼拝堂の外に出た。 


アルス山の向こうでは暗雲が立ち込めてゴロゴロと雷鳴がとどろかせながら雨が降っていた。



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