風の章 20
スェーヴィル村が見えてきた。
「この村の人間はどうしたんだ?」
と、聞くと、
「村にいますよ」
と、さらりと小僧が言う。
――いねぇから聞いてるんだつぅの!
すとんと村の真ん中に降りると小僧が片手をかざした。
すると、今まで誰も見えなかったのに村人がちらほらと見えてきた。
「結界をはっておきました。嫌な気が他の人に影響しないように」
――小僧、お前すげぇな。
それから真っ直ぐ村の一番大きな家に入っていた。小僧を見ると女が駈け寄ってきた。
「スィーン様、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。それより村長さんはどうですか?」
「それがちっとも目を覚まさなくて」
と、女はおろおろして、今にも泣き出しそうだった。
「村長さんに会わせて下さい」
「見て頂けるんですか。主人達がスィーン様にあんな事をしたというのに」
と、女は涙を流しながら奥の部屋に案内した。
部屋の中には、男が一人ベッドに寝ていた。ベッドの取り囲むように数人の人間がいた。
俺を見える奴は一人もいないようだ。
「スィーン様、スィーン様」
と、皆が小僧に群がって、
「何故、あんな事をしてしまったのだろうか」
「申し訳ない事してしまった」
「つい感情が高ぶって気がついたら手が出てしまっていた」
と、床にひれ伏すように謝っている。
こいつらが、小僧に怪我を負わせた奴らなのか。そして、お前が張本人かとベッドを覗き込んだ。
俺は思わず一歩下がった。
――気味悪い。
こいつは息をして眠っているのに、何の気も発していない。
すると、小僧がベッドの傍らに立ち手の中のモノを差し出した。
ひとつの気の塊が男の中に吸い込まれていった。
そして男は目を開けた。自然界の生き物らしくちゃんと気を放っている。
男を取り囲んでいた人間達が歓喜の声を上げ涙を流して喜んでいる。
しかし、当の本人はさっぱり状況が分かっていないらしい。
「何も覚えていないのは、魔物に憑かれていたからでしょう」
と、小僧が言う。そして、
「行きましょう。もうひとつの気の塊を届けなくては」
と、窓を開けた。
窓の外では、暗雲が立ち込めてゴロゴロと雷鳴が響いている。グロームが追いついてきたのだ。
俺は小僧を連れて再び舞い上がった。