風の章 13
辺りはすっかり暗くなっていた。夜の帳を知らせるフクロウが鳴いている。
俺達は人間が足を踏み入れたりしない森の奥にいた。グロームは適当な所にどかっと腰をおろしたが、俺は風の性分でじっとしているのが苦手だから、グロームの側をぷらぷらと歩いている。
暫く沈黙した後、
「人間にとり憑く魔物がいるんだ」
と、グロームが切りだした。
そこでまたグロームは口を閉じた。上手く話を聞き出さないとグロームの言いたい事が俺に伝わらない。どう聞き出した良いものかと考えながら相打ちを入れる。
「ふうん」
「不安・疑心・憎悪という暗い気を好む奴だ」
「ふうん。不安・疑心・憎悪、どれをとっても人間は少なからず放つ気だな」
何気なく俺が答えると、グロームはため息をついて黙ってしまった。このままグロームが物思いにふけってしまうと話が進まない。
「それでグロームはなんで東の都ツェーントルにいたんだ?」
と、俺が聞くと、
「魔物を探していた。その魔物が持って行っちまったモノを取り返すために」
と、答える。
「その魔物に何を取られたんだ?」
俺が聞くと、グロームは何が言いたげに口を開きかけたんだが何も言わずに口を閉じてしまった。グロームの表情になにやら強い意志が感じられる。これ以上しつこく聞いても何も言わないだろう。
質問を変えてみた。
「それは先日グロームがいたザーパト村に関係がある事なのか?」
グロームは一言答えた。
「そうだ」
そこで暫く沈黙が続いた。
グロームは何も語らない。また何か考え込んでいるようだ。
いろいろ考える事があるんだろう。
・・・
・・・
・・・飽きた。
見上げると夜の空は真っ黒で星がちらちら輝いている。
雲ひとつないどこまでに澄んだ昼間の空と同じ空なのにどうしてこんなに違うんだろう・・・
・・・
・・・
・・・小僧の所でも行ってみるか。
「じゃまたな」
俺は東の都ツェーントルに向かった。