表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/24

風の章 9

遠くに目をやると、川の水がキラキラ光っている。この時期の水は、山からの雪解け水だから一際冷たくて気持ちがいい。水浴びしようと、ひゅんと川までひとっ飛びした。

川に近づいて、そこで気がついた。


――見慣れたモノが流れている?!


近づいてよく見ているやっぱりそうだ。

昨日、スェーヴィル村に送ってやったシェイマの小僧だ。


「よう」

俺が声をかけやっても、小僧はちらっとこちらを見るような素振りしただけで何も言わない。


「おいおい、いくらなんでも水遊びするには人間には寒いんじゃないか?」


俺はふわっと飛んで小僧の首根っこをつかんで川から引き上げた。


「ほらみろ。川の水と同じ温度になっている・・・」


――あれ?なんかこいつ、昨日と顔が違うぞ?


よく似た他の奴か?いやでもこの気は小僧には間違いないし・・・人間って子どもから大人になると姿が変化するけど一日でそんな変化するもんなのか?・・・顔が真っ赤になって膨張して瞼だって膨らんで片目なんか全然開けねぇんじゃね?それになんかあちこち体の成分が流れ出しているぞ?

俺は思わず確認してみた。


「お前は昨日の小僧だよな?」


「……」

小僧は何にも言わない。


「おい、どうしたんだよ?」


「……」


「寝ているのか?おい、なんか答えろよ」


「…う」

小僧の唇がかすかに動いた。

「…そ…えば」


「どうした?」


「…名前…聞かなかった」


「名前?」

そういや人間って個別に認識するためにそれぞれ名前あるんだっけ?


「…ぼ、僕はスィーン…貴方は…」


俺の名前か・・・グロームが俺を呼ぶ時のアレでいいのか?

「俺のはヴィェーティルだ。短くしてヴィーって呼ばれる時もあるぜ」


「…そっか…」


小僧の放つ気がすっと弱まった。


――あれ?!もしかしてこいつって死にそうなのか?


人間って本当に弱いな。もう死んじまうのか。


そこで俺は小僧をまじまじ眺めた。


小僧の放つ気が体の成分と一緒に流れ出していく。



・・・


・・・


・・・それにしても良い気を放つ奴だった。こんな気を放つ奴は後何千年も出てこないだろうな。




・・・


・・・


・・・俺、人間じゃないけどたまには人間の理に従っても悪くは無いよな。




・・・


・・・


・・・俺って何すりゃいいの?俺、シェイマみたいに気を使って人間を治す事なんかした事がないぜ。




・・・


・・・


・・・そうか!シェイマにやらせりゃいいんだ!




――名案だ。シェイマのいる所に連れて行って、シェイマに小僧を治させればいい。




で?シェイマってどこにいるんだ?東の都ツェーントルの神殿か。行けば後はなんとかなるだろ?



「おい小僧。ちょっとの辛抱だからな。がまんしろよ」


そして俺は東の都ツェーントルの神殿を目指した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ