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プロローグ
馬の鼻息は荒く馬の魂が放つ気が乱れている。
朝早くから走ってきたので、馬も走る事に疲れたのか。それとも、僕のただならぬ様子に怯えているのだろうか。しかし、戻る事は出来ない。少しでも早く辿り着かなくては。小さなあの子と約束したのだから。
僕は精一杯優しい声で馬に語りかけた。少しでも馬が落ち着くように。
「大丈夫。ほら、もう少しで森を抜ける。もう少しだよ。森を抜けたら村があるから、そこで休息をとろう。さぁもう少しだ、がんばろう」
その時だった。暗雲が立ち込めて急に辺りがうす暗くなったかと思ったら、雷鳴と共に稲光が走った。そして、頭上に真っ黒な影が二つ浮かびあがった。二本足で立っているが、人間とは明らかに違う異質な者。
――超自然界の者?!
「ヒヒーン!」
馬は怯え前足を上げ、僕はそのまま馬から転げ落ちる。馬はそのまま走り去り僕はただ空を見上げた。
良い精霊は人を助ける。悪い魔物は人を危める。
頭上で暴れている超自然界の者達はどちらだろう。