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ダウナーお姉さん(偽)魔術師は現代世界で帰還した勇者を差し置いて無双する  作者: ゆきゆき
Chapter 1:ダウナーお姉さんはすべてを見ている

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4/10

Ep.4 ダウナーお姉さん「勇者くんの実力を見せてもらいます、か……」

◇記憶



 ある日、彼は自らを呼び出した者へと問いかけた。



「そういえば、なんで勇者として召喚されたら強くなるんですか? 俺、いまいち理屈が分からないんですけど……」

「ふむ、その辺りはまだ私たちも理解できていない。だが……」

「だが?」


 そう言って、魔法使いの男はどこからともなく古びた本を取り出した。



「この古代の魔王が記した魔導書……そこにはこう書いてある」


“世界を越えられる者は珍しい。ひとつの世界に1人いるかどうか、というほどに。そして、その存在を判別し、召喚するのが【勇者召喚陣】の魔法。”


“神が用意したこの魔法を用いれば、対象者の意思に関係なくこちらの世界へと呼び出せる。その世界を渡る途中で、対象者の肉体は世界間移動に耐えるために強制的に進化し……『勇者』と呼ぶに相応しい強さとなる。”


“この地の聖剣はかつて存在した世界樹より柄が造られ、その刀身はオリハルコンにより鍛造された。だがその本体は、今は亡き神の———「おっと、ここはもう関係ないか」



「魔導書というよりは個人の実験記録とか、そういう風に見えますけど……」

「あまりにも古くてな、自然と魔力が集まって魔導書と化しているのだ。本来ならば読むことすら難しい。事実かどうかも調べることができていないから、あんまり信用してくれるなよ」

「なるほど。ところで、その古代の魔王というのは?」

「およそ21億年前に存在したと言われている魔人だ。名はルーメンエルド。種族は吸血鬼だとか言われていて、彼女はその時代……完全に世界を征服した。その後すぐに歴史からは姿を消しているがね」

「今この世界を脅かしている魔王と何か関係が?」


 まるで変な物を見るかのような視線がユウへと向けられる。


 なぜそんな視線を向けられているのか分からないユウは首を傾げた。



「あ、あぁすまない。君は好奇心が強い子のようだ……結論から言えば関係はない。というか、古代の魔王は1人だった。部下も誰も持っていなかったんだ。そして彼女が消えた後は歴史的に色々あったんだが……ここはまた今度話してあげよう。さぁ、もう寝なさい。明日も訓練は早いんだろう?」

「そうですね、ありがとうございます!」


 そして、ユウは目を瞑った。



 ……


 …………






◇神崎ユウの自室



「……懐かしい夢だな」


 異世界に召喚されて1週間程度が経った時期の記憶が、なぜか今になって浮かび上がってきた。


 早起きしてしまったユウは、目を擦りながらも時計を確認する。


 現在時刻は午前4時。


 よし、二度寝しよう……と考えるが、ふと違和感。



「……?」


 ほんの些細な違和感に誘われて、彼はカーテンの元へと向かう。

 そしてそれを掴み、朝日でも見ようと端を引く。



「 や ぁ 」

「ギャーッ!?!?」








◇ダウナーお姉さん視点だぞ!



 やっぱ反応が良い子は好きだよ。楽しいからね!



「大丈夫だ、ちゃんと今の叫び声は魔術で相殺しておいた。ママに聞かれることもないだろう」

「何なんだよマジで!? あの蜘蛛みたいな張りつき方は何!? 趣味か何かか!?」


 ケラケラと笑う私の襟元を掴んでブチギレる勇者くん。

 まぁ〜〜〜趣味だね^^



「つ、つーか何の用だよ。わざわざアンタが近くに来てるってことは用事とか、伝える事とかあるんだろ? 無いならどっか行ってそうだし」

「正解ッ! 今日は陰陽連合が超レアイベントの『百鬼夜行』を鎮めに行く日でねぇ……これはキミを連れて行くしかない! と思い立って来ちゃったワケだよ」

「いや、『来ちゃった』じゃないんですけど……そもそも知りませんし。俺関係あります? それ?」

「来ちゃった☆」


 うーん、まぁ関係は無いんだけど……



「結構人手不足らしくてさ、助けてあげてよ勇者くん」

「……前から思ってたんですけど、お兄さんも結構強いですよね?」

「お姉さんな」

「……お姉さんが助ければいいんじゃないですか? 少なくともほぼ腕力だけであの強さです、かなりの上位なんでしょ?」

「おいおい、照れるなぁ……だが残念だったね! 私は基本的に言われなきゃ動けないんだ。だからキミが行ってくれ。私も手伝うまでは出来るからさ?」


 ちなみに大嘘である。

 全然勝手に介入して問題ない。


 でもさ、帰還モノのテンプレみたいな展開が目の前で繰り広げられてるんだよ?


 なのに主人公だけが不在……あり得ないよねぇ!?



「……なんか嘘つかれてる気しますけど、分かりました。やればいいんでしょやれば?」

「お給料、出るぜ」

「……どのくらい?」


 私は指を4本立てた。


 いややっぱもうちょい安いわ。3本に変えた。



「……十?」

「百だよ、勇者くん。まぁこれはキミの階級がまだ低いことと、多分活躍するだろうからそこを込み込みで盛り込んだ額だけど……そのくらいは貰えるはずだよ」

「やりましょうか」

「ふふふ……やはり勇者と言えど市民ですなぁ! ぐぇっへっへ」

「悪代官の笑い方やめてください」


 おぉ、これはこれは山吹色のお菓子……








◇上空



「……これどうやって飛んでるんですか?」

「え? キミもこれくらい出来るよね?」

「いや、出来ますけど……形式が違って理解しにくいんです」


 飛行する私の手に掴まる勇者は、そう私に問いかけた。

 どうって言っても普通に風+重力操作だけど……それしかなくない? いや、まぁそれ以外でも飛べるけどさ。



「……やっぱりかなり強いですよね?」

「ダウナーお姉さんなんだから最強に決まってるだろう」

「???」

「ま、そんなこんなで……着いたよ。ここが戦場だ」


 やってきました深夜の森林!


 都会は陰陽連合が貼った結界で妖魔なんて湧かないが、しかし彼らでは対策しきれないものもある。

 それが田舎やこういった未開拓……って訳でもないけど、まぁ人の少ない、自然の残る場所。


 そういった理由で、こういう場所には妖魔が現れる。

 そして、その出現のバランスが極端に偏った日に『百鬼夜行』は起こる……らしい。この21年間見たことないから、私も初体験だけどね。



「よーし、それじゃあ行ってこーい!」

「えっ、ちょ待っ———」


 ぽい、と地上へと彼を放り投げる。まぁ死なんでしょ!



「さて、それじゃあ高みの見物といこうか」


 私は異空間からポテチとぶどうジュースを取り出した。



「ふふふ……楽しませてくれよ……? パリッ、ゴクゴク……」

ダウナーお姉さん「コンソメ以外ありえない」


☆☆☆☆☆をいただけると嬉しいです。コンソメ派は特に。

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