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ダウナーお姉さん(偽)魔術師は現代世界で帰還した勇者を差し置いて無双する  作者: ゆきゆき
Chapter 2:ダウナーお姉さんは機械にも強いとされている

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10/10

Ep.10 今ワタシのことポンコツって言いましたか!?

◇深月市・路地裏


 新しいオモチャを手に入れたら何をするか。そうだね、試し斬りだね。

 手に入れたのは美少女ロボットなので“斬り”というわけではないが、まぁニュアンスは合っているので問題ない。



「というわけでキミにはあの不審者の鎮圧をしてもらう」

『へっ、ワタシに任せてくださいよぉ……あんな奴一瞬でボッコボコのけちょんけちょんにしてやりますからねぇ!』

「かませ犬の台詞?」


 なんか不安になってきたが、しかしこの美少女ロボットことドミノちゃん……彼女の身体は非常に硬い。そして素早く動ける、理論上はね。



「あぁそうだ、これ別に魔術協会関係ない案件だから。魔術も銃器も使っちゃダメね」

『分かりましたァ!』


 カシャカシャカシャ!

 ガシャンガシャン!

 ガチャッ!


 流れるようにその身を変形させ、全身の内側に隠された無数の銃器を露出させていくドミノ。

 話聞いてる?



『確殺できますよぉ!』

「うんうん、一旦黙ろうか」

『えぇっ』










「分かった?」

『はい! 分かりました! 殺さなければいいんですね!』

「うんうん、あと魔術と銃器は禁止ね」

『ハイ!』


 私の話をしっかりと聞いたドミノは、ツカツカと足音を立てながら路地裏の奥へと進んでいく。

 私が今回見繕った敵は、なんとこの日本で子供の人身売買をしようとしている人間だ。


 こいつどうにかしたらそれはそれで問題になりそうだが、まぁ私は何やってもいいので……



 残念でもないが、この人間にはしっかりとドミノのサンドバッグになってもらおう。



『ヒャッハーッ! テメー出てこいやぁっ! このワタシがぶっ殺してやりますよぉ!!』

「な、なんだコイツぅ!?」


 物騒なこと呟きながら飛び出していくドミノ。

 そしてそれに相対するのは、別に戦闘慣れとかはしてなそうな悪人。


 ファイッ!



『シャオラァッ!!』

「ぐぺぇーっ!?!?」


 おー、すごい。顔が拳の形に凹んでる。

 漫画でしか見たことないぞこんなの。



「ポンコツにしてはやるねぇ」

『今ワタシのことポンコツって言いましたか!? おいっ、なんとか言ったらどうなんだ! あぁ!?』

「ぐぺっ、ほげっ、ぴぎゅっ……」








◇火華サキの研究室



「まぁ実践試験は合格でいいんじゃない? でも……」

「でも?」

「……やっぱり人格矯正しない?」

「ちょっとくらい生意気な部下の方が良いってアニメで言ってた」

「……」


 人間とは愚かなものだ。そしてその愚かさを煮詰めたような人格を導入したドミノちゃんは逆説的に誰よりも人間である、ということになる。

 なんてこった、人間作っちゃったぜ。なんらかの法律に違反してないかな?



『ワタシの完璧で究極なBattle……に見惚れてしまったようですねぇ!』


 BattleってよりExecution(処刑)だったけど、まぁそこはどうでもいいか?


 それより驚くべきはこの身体能力だ。ギリ科学の範疇でこんなにヤバい動きが出来るとは……いや、まぁ元から使われてた未知の金属の影響も大きいんだろうが。


 やはり私も体を作り変えるべきだろうか。最近は強さのために人間を辞める主人公も増えてきているし、急にサイボーグになっても受け入れられるのでは……?



「そこんとこどう思う?」

「誰に受け入れられるって?」

「いや、やっぱなんでもないや」

「たまに意味不明なこと言い出すよね、ユキちゃん」


 ダウナーお姉さんの言葉は清らかな心を持っていなければ聞き取ることができないのだ……


 サキちゃんはちょっと悪どい考え方をする時があるからね。しょうがない。



「ユキちゃんほど邪悪な子は見たことがないけどなぁ」

「ダウナーお姉さんが邪悪なわけないでしょ」

「うーむ、やはり最近のユキちゃんは本当に話が通じない……叩いたら治るか……?」


 ポンコツテレビじゃないんだから。



『今誰かワタシのことポンコツって言いましたか!?』

「言ってないよ」








◇合衆国・某所研究施設 地下三階


 アメリカという国はとにかく何でもデカい。

 土地もデカい、人もデカい、夢もデカい、そして予算もデカい。


 その潤沢な予算の使い道の一つが、この地下施設だ。



 コンクリートで固めた壁。等間隔に並ぶ無機質な照明。そして———部屋の中央に鎮座する、それ。


 日本とは違い、潤沢な資金が投入されたことで実現したそれは、人のような姿であった。



「……動作確認、完了。問題はナシ」


 白衣の男がタブレット端末から目を離し、眼鏡を押し上げた。


 その男は天才だった。

 趣味は研究、特技も研究の研究バカ。


 それに加えて魔術の才能もあった。天は二物を与えず、というのはやはり上層には適用されない。


 いつだって、上に立つ者は無数の才を持っている。



「コイツの名前は?」

「そうですね……試作品(プロトタイプ)、“ダート”とでも言いましょうか。」


 質問をしたのは部屋の入り口に立つスーツの男だ。

 連邦政府から派遣された、いわゆるお目付け役である。



「いいでしょう? 魔術と技術の融合だ。時速300kmで動き、そのパンチ力は10トンを超える……これを量産できれば世界は我らのものです」

「……見た目は微妙だな」


 ———試作品、ダート。



 直立不動で佇むそれは、遠目から見れば人間の男に見えた。


 上背は二メートルを超え、肩幅は常人の倍近い。軍服に似たダークグレーのスーツを纏い、顔には無表情の仮面。

 滑らかな白い素材に、最小限の造形だけが施されている。


 しかし、そのスーツの下には無骨な機械の身体が隠れている。



「まぁ見た目はどうでもいいんですよ、機能の話をしましょう」

「そのために来た」

「ですよねぇ!」


 研究者は嬉しそうに言う。



「まずボディから。ベースは軍用の強化外骨格フレームですが、表層には独自開発の術式刻印合金を使用しています。物理的な耐久性はもちろん、魔術干渉に対しても高い耐性を持つ。通常の攻撃魔術ならほぼ無効です」

「……術式刻印”、か」

「ええ。我が国にはご存知の通り、ウォーロック・クラスの魔術師が致命的に不足している」


 研究者はタブレットをスワイプし、世界地図を呼び出した。

 日本列島の位置や太平洋の中心、イギリス、中国、アフリカ……そういった箇所には無数の赤点が密集している。


 しかし、アメリカにはその赤点が少ない。



「特に日本は違う。あの国には訳の分からない連中がゴロゴロいる。魔術師、霊能者、なんだか知らないが超常現象を起こせる人間が一般社会に溶け込んでいる。そしてその中には国家が持て余すレベルの化け物も、ね」

「……」

「翻って我々は? 軍属の魔術師は頭数こそいる。下層から引っ張り出してきた洗脳兵もいる。でも質が、ね。有事の際に『ウォーロック』を止められる者なんていないんですよ、残念ながら———だからダートを作りました」


 研究者はダートに向き直り、それを愛おしそうに見つめた。



「こいつは戦う。魔術師と、ね。身体能力は言わずもがな、それだけなら強化人間と大差ない……いや、それよりは確実に数倍上。でもこいつの本質は術式兵装です」


 ダートの右腕が静かに持ち上がった。

 手のひらに光の紋様が浮かぶ。


 幾何学的なそれは、確かに魔術回路だった。



「機械が人間のように魔術を扱う。正直、理論上は不可能と言われてましたよ。術式は生体反応と連動するものだから、って。でも……」


 ゴゥ、と。

 低い唸りを上げて、ダートの右腕に炎が纏わりついた。



「ついに出来たんです。炎だけじゃありませんよ? 基礎は全部できます。あのセレナ・ゴールドには流石に劣りますが、ソーサラー以上の力はある。それにこのフィジカルが付いてくる……どうです? 素晴らしいでしょう?」

「……それを、制御できると?」

「今のところは。命令系統はシンプルにしてあります。複雑な自律判断はさせない。言われたことだけやる、兵器らしい兵器ですよ」

「人間と比べてどの程度だ?」


 その質問に対し、研究者はバカにしたような笑みを浮かべた。



「理論値の話なら……現行の軍属魔術師なら、百人いても勝てないと思いますよ? ハハッ」

「……素晴らしい!!」

「でしょう? それではデモンストレーションといきましょう。丁度日本では“百鬼夜行”とかいうのが起きたらしく、守りは手薄です。ウォーロック・クラスと戦わせてみたくないですか? 日本なら1人くらいヤッても問題ないでしょう。例の恨みもあります、ここで1回実践試験を……ね?」


 そうして、彼はその機械人形のスイッチを入れた。



「起きろ、ダート」

『殺スヤンケ。シバクヤンケ』

「この喋り方は一体……?」

「……なんらかの不具合のようです。後で直しておきます」

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