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ダウナーお姉さん(偽)魔術師は現代世界で帰還した勇者を差し置いて無双する  作者: ゆきゆき
Chapter 1:ダウナーお姉さんはすべてを見ている

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1/10

Ep.1 第一法則、ガーディアンは自由を許容しない。

 とある平和な日の昼下がり。


「……はぁ」


 私は頭を抱えた。

 私がカフェの隅の席でコーヒーを飲んでいると、いつの間にやらその両隣を挟まれていたのだ。


 黒いスーツで、いかにも堅そうな見た目をしている2人の男。



「雪宮ユキさん……ですね?」

「そうだけど、何? アポぐらい取って欲しいな」

「そうすると断られる、と佐伯さんが」

「チッ」


 私は再度コーヒーに口をつけた。苦い。砂糖とミルクを入れたのに苦い。なんでこんなもんが好きなんだ人間ってやつは。


 私は砂糖を2つ入れた。まだ苦い。さらに2つ入れた。いいね!



 こちらのスーツ男2名は、どこかの魔術師組織かなんかの人間だろう。というか国の直属か。


 まぁそれくらいは分かる。使い魔を連れているし、魔力を隠す気がまったくない。


 ……というか、周りのお客さんたちが全員席を外しているのはそういうことか。

 人避けの結界でも張られているんだろう。



「単刀直入に言います。我々は、あなたに依頼があってここへ……」

「ヤダ」

「まだ内容を——」

「だから、ヤダ」


 コーヒーカップを置く。

 こういう依頼の流れは大体が面倒事だ。


 大方『1級が居ないし2級も断ってる』ってとこだろう。


「はい、じゃあこのコーヒー代を奢りつつ帰りなさい。イキってこんな店来なきゃよかったかな……」

「少しだけ聞いてもらえますか? 報酬は出します」

「いらんし」

「そ、そんな……」


 片方のスーツ男が、なんだか困ったような顔をし始めた。

 もう片方はずっと黙って私を見ている。気まずそう。



「キミらさぁ……」


 私は溜め息をついた。



「こう、もうちょっと私を本気でやる気にしようとか思わないわけ?」

「……あ、そうでした」


 そう言いつつ、片方は自らのバッグに手を入れ、何かを取り出した。



「佐伯さんが“これ渡せ”って……」

「あのメス男何渡したんだ一体……」


 渡された紙袋の、上側のテープを剥がして中身を取り出す。


 そこに入っていたのは、私が個人的にやっているソシャゲに出てくるダウナーお姉さん系キャラのフィギュアだった。しかも手に入りづらいやつ。



「……なんでも協力しよう! さぁ、用件を言ってくれ!」


 私はそう言いながら、カップの底に残ったコーヒーをズズッと飲み干した。



「実は———最近、この都市で不可解な失踪が起きていまして」

「はー」

「複数の一般市民が行方不明になっており、その数は既に3名を超えています。念のため補足ですが、魔術案件です」

「ほーん」

「現時点で我々が把握している限り、関与しているのは少なくとも2つ以上の組織か、あるいは個人だと」

「それで?」



 スーツ男2号がようやく口を開く。


「調査と、可能なら制圧を。あなたの実力であれば———」

「いいよ。承った」

「いいんですか?」

「そりゃもちろん。あ、ちなみにお金はちゃんと出してね? 結構面倒そうだし……うん、まぁ……本来は1000万円のところ脅威の90%オフ! 100万円くらいでいいよ」


 私は窓の外を見る。

 今日はステキな日だ。花が咲いてる。小鳥たちもさえずってる。


 こんな日には、私みたいな奴はボランティアでもするべきだろう。

 別にダウナーお姉さんのフィギュアを貰ったからでは断じてない。断じて!!!



「そっちじゃ対処出来なかったんでしょ?」

「はい。どうやら敵は高度な隠蔽を施しており……」

「分かった。それじゃあ今日中にやろう、丁度いいし」

「ありがとうございます!」

「あと、このコーヒー代は出して。お釣りは私が貰ってあげるよ」

「え、いやお釣りは渡しませんよ……」

「はぁ、これだから若者は」


 クソ老人ムーブをかましつつも、彼らはしっかりとコーヒー代を払ってくれた。お釣りはくれなかった。



「ありがとうございます、兄さん」


 魔術関連の組織は昔ながらの慣習が無駄に残っているため、こういうふうに人を呼ぶ奴も多々いる。


 別にそれ自体はいいんだが、ひとつ許容できない台詞があった。



「私はお兄さんではない……ダウナーお姉さんだ!」

「「あっはい」」


 そう言い残し、私はカフェを去った。







◇とある地下水路


「なんか微弱な魔力を感じる……お、アタリ」


 国の犬どもは誤魔化せても、私のダウナーお姉さんアイは誤魔化せないぞ〜〜〜^^


 地下水路の横側、幻影で隠されていた秘密の通路を進んでいく。


 カツ、カツとわざとらしく足音を立てて歩みを進める。別に音なんて立てない方がいいが、こっちの方がカッコいいからね!



 そんなことを考えたり口にしたりしながら歩くこと2分。


 長いな……と思い始めてきたタイミングで、道の先から音が聞こえてきた。

 これは刃物……剣か何かのぶつかる音だ。よく知っている。



「誰か来てる? まぁいいや、ひとまず少し急ごう」


 私は加速し、1秒も経たずに秘密の通路の果てまで辿り着いた。ちゃんと風圧ケアも忘れない。



「おっ、なんか面白そうなことやってんねぇ?」


 目の前には高校生っぽい男の子と女の子、それといかにも『悪の教団、やってます!』と主張している装いの男たちが5人程度。

 そしてその辺に放り投げられている、魔力抜かれた死体が3人分。



 これは———1話だ!

 いいね、私も現ファンは好きだぜ。特に帰還モノっていいよね。



「ユウくん! 無茶しないで!」

『へっへへ……ただのガキが俺たちの拠点を見つけれたのは褒めてやろう。だがなァ……甘ぇんだよ! お前らには知らない“裏”ってモンがあるのさ!』

「……」

『お? 向かってくるってのか? いいぜ、魔人の恐ろしさを教えてやるからよぉ!』


 うんうん、やっぱここは無言で近づいていくシーンだよなやっぱり。

 そういうテンプレ展開好きだよ!


 でも念のため加勢するね!!



「とーうっ!」

「はっ?」

『誰———ぐべらぁっ!?』


 身体が『く』の字に折れ曲がって吹き飛んでいく教団員(仮称)。

 私はそのままくるくると回転し、スーパーヒーロー着地を完遂する。



「膝と拳の痛みは無効化済みだ……!」

「え、あ、だ、誰……?」


 ボロボロになっている女の子が私の方を向いて困惑する。男の子の方は険しい視線を私に向けていた。


 来たな、自己紹介シーン!



「私は雪宮ユキ———通りすがりのダウナーお姉さんだッ!!」

「声でっか」

「おい今テメー『ダウナーお姉さんじゃなくてアッパーお兄さんだろ』って言ったな!?」

「言ってねぇよ!?!?」


 心の声が聞こえてんだよ!!



「こわ……里奈、あの人とは関わっちゃダメだぞ」

「いや、そんな事言われないでも……というか! 前!」

「見えてる見えてる、問題ナシ!」

『なっ……』


 私の方へ向かってきた男の拳を握りつぶし、捻る。


 そしてその身体を両手で掴み、天へと掲げ———



「あそーれっ♪」

『え、あ……ぎゃぁっ!?』


 ちょっとあんまり詳しく説明するとアレなんでぼかすと、教団員くんは教団/員になった。ポテチの袋を開けるみたいな感覚に近いか?


 そして、荒い断面から私の全身に血が降りかかる。まっず。



「ひ、ひぃっ……!」

「り、里奈!? しっかり……って、クソが。お構いナシかよ!」


 男の子の方にも教団員が飛びかかる。魔術で強化した拳の一撃———普通の人間なら即死だろうが、まぁあの子は大丈夫だろう。


 なんか聖剣持ってるし。



 というか……私にヤバい奴を見るような目を向けといて、彼も普通に男を真っ二つに両断していた。やっぱ異世界帰りってやつですか!?

 お姉さん、気になります!



「おい、というかアンタ何も———殺人鬼?」

「失礼だぞ、推定勇者くん。私のどこが殺人鬼なんだ!? どう見ても超クールなダウナーお姉さんだろうが!」

「いや頭から血被っといてよくそんな……というか、なんで俺が勇者って……」


 ビンゴだぜ!

 後で記憶いじいじ……は流石に可哀想だからやめておこう。



「おい殺人鬼、アンタも気づいてるだろうが……増えてるぞ、あいつら。これじゃキリが……」

「ん? あぁ、まぁ分身だしそりゃそうだ」

「は? これが分身? 見た目も全部違うし血も出てるのに?」


 そうでなきゃあんなスプラッタやらんよ。冗談で済むからあんなことしたっていうのに。



「冗談でもするなよ」

「友達にはウケたんだけどなぁ……」

「縁切れそんな友達!」

「ま、それはともかく……本体見つけたよ」

「どこだ!?」


 ん、と呟きながら上を指す。



「中指立ててんじゃねぇ!」


 天井に蜘蛛みたいな体勢で張り付いている、気持ち悪い外見の人型。


 どうやら気づかれるとは思っていなかったらしい……まぁ結構高度な隠蔽だった。



 ———だがダウナーお姉さんアイは誤魔化せない!


「かぁっ」


 ビッ!と私の口から放たれる青いレーザー。

 天井に張り付いていた不審者は腹にぽっかりと穴を開け、下へと落ちてくる。

 まぁギリ死んでないのでヨシ!


 拘束して魔術協会に届けましょうね〜



「……え、今の何? とても人とは思えないことしてなかった?」

「気のせいでは……?」


 別に人間だって口からなんか出すでしょ。ほら……吐瀉物とか。うん。

毎日投稿予定です

面白かったらフォローとか☆☆☆☆☆をしてくれると嬉しいと、ダウナーお姉さんも言っています。

簡単にできますので……

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