6話:初対面 (人物紹介イラストあり)
昼休みのダイニングホールは、いつもより少し賑やかだった。
トレイを持ったミラとリリアナは、並んで席を探している。
「ねぇ、あっちの窓際の席が空いてそうよ」
「ほんとだ……あ」
ミラは小さく声を上げた。視線の先には、ピクルと――あの女性がいた。
(また一緒にいる……!)
心臓がドクンと跳ねる。
胸の奥が、ちくりと痛んだ
ピクルはいつもの無愛想な顔をしているけれど、どこか力が抜けているような、それでいて楽しそうで――
ミラの前では見せたことがない顔だった。
(……やっぱりすごく楽しそう……)
ミラの喉の奥で、言葉にならない息がこぼれた。
「リリちゃんあっちのほうが空いてるかも」
ミラはそそくさと別の席を指差すが、リリアナは動かない。
「……ルシアン……!」
リリアナの顔が一瞬で真っ赤になり、肩までびくっと震えた。
トレイを持つ手にぎゅっと力が入り、唇をわずかに震わせる。
まるで、頭の中が真っ白になったみたいだった。
「え!? リリちゃん!? 完全にフリーズしてる!! どうしたの!?」
ミラが驚いて声をかけると、その声に気づいたピクルの隣の“例の女性”――ルシアンがこちらを見た。
「あ……リリアナ様」
穏やかな声で微笑むその姿に、ミラは驚きの声を漏らす。
(……え、リリちゃんの使い魔って……この人!?)
「えええーっ!!」
ミラの叫びがダイニングホールに響く。
「リリちゃんの好きな人って……女の子だったの!!??」
「ちょ、ちょっとミラちゃん!! 声が大きい!!」
リリアナが慌てて口を押さえる。
「ひ、秘密なの! 本人にはまだ言ってないんだから!」
「ひ、秘密って……え!? でもこの人、女の人じゃ――」
その瞬間、ピクルがため息をついた。
「おいおい、ミラ。ルシアンを女だと思ってたのか?
こいつ、俺と同じくらいの身長だぞ。普通、女と間違えるか?」
「え、え、えっ!?!?」
ミラの頭の中は完全にパニック。
(この人って、男の人なの!? じゃあ……)
「ぴーちゃん、男の子が好きだったの!?」
「は!? ちょ、ちょっと待て!! 何でそうなるんだよ!?」
ピクルが思わずテーブルを叩く。
「だってぴーちゃん、この人とイチャイチャしてたもん!」
「してねーよ!!」
ピクルは顔を真っ赤にして必死に否定する。
「してたよ!」
「どこでだよ!?」
「ミラちゃん、落ち着いて……!」
ミラは引かず、ピクルは反論、リリアナは必死に仲裁する。
三者三様に叫ぶ声で、周囲の視線が痛いほど集まる。
だが当のルシアンだけは、まったく動じる様子もなく――
むしろ、どこか楽しそうに微笑んでいた。
「君がミラちゃんだね。ピクル君から話は聞いてるよ。よろしくね」
ルシアンの声は低く穏やかで、その微笑は中性的な美しさを帯びている。
男性だと聞いてもなお、ミラは一瞬ためらってしまうほどだった。
「……よ、よろしく……」
ぎこちなく返すミラ。
「もういいから、とりあえず座れ」
ピクルが大きくため息をつき、ミラとリリアナも隣に腰を下ろす。
ミラは、隣に座るピクルをそっと横目で見た。
(……でも、やっぱり仲良さそう……)
向かい合って楽しそうに話すピクルとルシアンを見つめながら、
ミラの胸の奥で小さなもやもやが静かに広がっていった。




