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4話:お姫様みたいな友達

 朝の教室に入った瞬間、ミラは思わず立ち止まった。

 あちこちの席では、すでに生徒たちがグループを作り、談笑している。

 同じ制服でも、どこか上品な立ち居振る舞い。

 貴族の家系らしい生徒たちは、自然と似た者同士で集まっているようだった。


(ぴーちゃんの言ってた通りだ。もうみんな仲良しグループできちゃってる……!)


 ミラはそわそわと教室を見回す。

 そのとき、教師が前に出て声を張った。


「今日の授業は、二人一組で課題に取り組んでもらいます。

 まだペアを組んでいない者は、早めに相手を見つけるように」


 教室が一気にざわつく。

 すでに仲のいい生徒たちは、名前を呼び合いながら席を移動していった。


 ――ミラだけが、その場に取り残される。


(うぅー。どうしよう……)


 ピクルの言葉を思い出す。

(「”ぼっち”なやつを探せ」って言ってたっけ……)


「頭が良くて、優しくて、可愛くて……”ぼっち”な子……」

 小さく呟いた、そのとき――


「いたー!!」


 思わず声が出た。

 窓際の一番後ろの席。

 そこに、一人で静かに座っている少女がいた。


 白磁のような肌に、ふわふわの金色の長い髪がゆらめく。

 晴れた空のように青く澄んだ瞳は、夢を見るように遠くを見つめている。


(しかもめっちゃ可愛い! お姫様みたい! 絶対この子がいい!)


 勢いのままに、ミラはその子の席へ駆け寄った。


「ねぇ! ペアになろうよ!」


「えっ? あ、あの……」

 少女は困ったように視線を泳がせ、指先を所在なさげに動かす。

「いや……でも、ちょっと……その……」


「なんで? 誰かと組むの?」


「い、いえ……そういうわけじゃないけれど……」


 ミラは少し考えたあと、ぱっと顔を上げた。

 そして、そっと少女の袖をつまむ。


「お願い……他に組む子いないんだ……」

 上目遣いで、うるうるした瞳を向ける。


 唇をきゅっと噛み、今にも泣き出しそうな顔。

 まつげに、きらりと涙の粒が光る――ように見える。


(ぴーちゃんなら、だいたいこれで折れてくれるんだけど……他の人だとだめかな……)


 そのまま、じっと少女を見つめる。

 少女は一瞬たじろぎ、頬をほんのり染めながら小さく息をのんだ。


「うっ……わ、わかったわ。組みましょう……」


「やったー!」

 ミラは一瞬で笑顔に戻り、涙を拭うこともなく手をぱんっと合わせた。

「先生ー! 私たち組みまーす!」


 クラスの何人かが振り返るが、ミラは全く気にしていない。


「え? 嘘泣きだったの!?」

 少女はぽかんとしつつも、思わず吹き出した。


 こうしてペアになった二人は、並んで課題に取り組むことになった。



「ねぇ、なんで今まで休んでたの?」

 入学してすでに一週間。ミラがこの子を見るのは今日が初めてだった。


「あぁ……」

 少女は少し困ったように笑った。

「実は、体があまり丈夫じゃなくて。入学してすぐ熱を出して寝込んでたの」


「そうなんだ……」

 ミラは少し驚きながらも、彼女のノートに目をやる。


 流れるようにペンを走らせる姿。

 休んでいたとは思えないほど、授業内容を完璧に理解していた。


「頭いいんだね!」


「え? あ……まぁ、勉強は好きな方かな」

 少女は少し照れたように笑う。


(完璧すぎる〜〜! 頭が良くて、優しそうで、しかもお姫様みたいに可愛い!!)


「ねぇ! 友達になろう!」


「えっ?」

 少女は一瞬目を丸くし、戸惑いながらも微笑む。


「あなた、すごく積極的なのね……」

「そうかなぁ? だって友達になりたいって思ったから」


 ミラのそんな素直な反応に、少女は思わず吹き出し、そっと頷いた。


「……わかったわ。よろしくね」


「やったー!」

 ミラは満面の笑みで両手を合わせる。


 その笑顔に、少女――リリアナは小さく笑った。


 それが、ミラにとって――

 “はじめての女の子の友達”だった。

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