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SS②:クリスマス休暇

 クリスマス休暇。

 ミラとピクルは、学院に通うまで暮らしていた村へ、

 二人で里帰りしていた。


 久しぶりの帰省を喜ぶ村の仲間たちは、

 ささやかなパーティーを開いて二人を迎えてくれた。


 学院でのこれまでの話、過去の思い出話などに花が咲く。


 そんな楽しいひとときを過ごし、

 二人はかつて住んでいた自宅へと戻り、一息ついていた。


「帰ってきた、って感じがするね!」


 ミラはピクルの方を向き、にっこり微笑む。


「そうだな。すげー久しぶりな気がする」


 村を離れてからたった数ヶ月しか経っていないが、

 その間にあったことを思えば、

 ここでの生活が、遠い昔のように感じられた。



 ピクルが食卓で水を飲もうとした、その時、

 ミラが思い出したように声をかける。


「ねーねー」

「なんだ?」


「今日、私たち、”えっちなこと”するの?」


 一拍。


 次の瞬間、ピクルは盛大に水を吹き出した。

 慌てて口元を押さえ、テーブルを濡らしながら叫ぶ。


「はぁぁ!??

 な、何言ってんだよ!!」


「だって、リリちゃんがそう言ってたよ。

 ”絶対何かあるから”、って」


(あのエロ女……人のセンシティブな部分にズケズケと……)


「しないの?」

「しねーよ!!」


「そっかぁ……」

 ピクルが答えると、ミラはしょんぼりと肩を落とす。


「なんだよ……その反応」


「だって、リリちゃんが、

『したらもっと仲良くなれるよ』って言ってたから。

 楽しみにしてたのに……」



 ミラの言葉を聞いて、ピクルは考えを巡らせた。


(絶対、あの小説を読んだせいだな……)


 リリアナお気に入りの、例の恋愛小説。

 『愛の逃避行2 〜Endless Love〜』。


 リリアナは頑なに見せようとしなかったが、

 ルシアンがこっそり取り寄せたものを、

 ピクルも一度だけ読ませてもらっていた。


 確かに、終始ベッドシーンばかりだった。

 だが、愛がどうだの、心がどうだのと、

 回りくどい比喩表現ばかりで、

 肝心なことは何一つ、はっきりとは書かれていない。


 それでも――

 ミラはそれを読んで、

 男女の大人の関係を分かったつもりになっているのだろう。


 事前知識もないまま読めば、

「したら仲良くなれる」

 という結論に行き着いてしまうのも、無理はなかった。


(どうせ、具体的に何するかは分かってねーんだろうな……)


 ピクルはミラのそばへ行き、

 頭をくしゃっと撫でて、優しく言った。


「お前は、そんなことまだ考えなくていいって」


 そう言いながら撫でた手の下で、

 ミラが小さく身をこわばらせたのが分かった。


 思わず、ミラの顔に視線を移した。


 ミラは何か言い返そうとして、

 けれど言葉を見つけられずに俯いた。


 不満そうに唇を噛みしめたまま、

 しばらく黙り込む。


 ――まただ。いっつもそう……


 指先に、ぎゅっと力が入る。

 ずっと胸の奥に溜め込んでいたものが、

 抑えきれずに溢れ出した。

 

「……”まだ”って、じゃあいつならいいの?

 これ以上、何も変わらないの?」


「え?」


 ミラの真剣な眼差しに、ピクルは一瞬言葉を失う。


「だって、いっつも私ばっかり!

 ぴーちゃん、なんか壁あるんだもん!」


 ミラは震える声でポツリと続ける。


「やっと近づけたって思ったのに……」


 その言葉に何も言えずただ呆然と立ち尽くすピクルを

 ミラは、まっすぐに見つめ返す。

 

 そしてゆっくり息を吸って、

 意を決したように口を開く。


「だって……

 最近までずっと距離があったんだよ」


 一度口にしてしまうと、止まらなかった。

 ミラは、ずっと言えずにいた気持ちを、

 震える息と一緒に吐き出すように言葉にする。


「成体になってからずっと。

 インペリアルに入ってからはもっと遠くなって。

 恋人同士になってからだって……

 すぐには、何も変わんなかったし……」


 ミラは小さく息を吸い、続ける。

 

「最近になって、やっと……

 ぎゅっとしてくれたり、チューもしてくれるようになった」


「……」


「すごく嬉しかったんだよ」


 俯いたまま、ミラはぽつりと言った。


「……恋人同士になって、

 やっと、ぴーちゃんが近くなってくれて……

 だから、恋人同士になれて、本当に良かったって思ってるんだ」


 少し間を置いて、続ける。

 

「……それで、

 もっと恋人同士っぽくなりたいって、思ったのに……」


 それ以上、何も言えなくなって、

 胸の奥がきゅっと締めつけられる。


 ――いつからだろう。

 この気持ちが、ただの寂しさじゃなくなったのは。


 気持ちを返してくれないことを、

 不満に思うようになったのは。


 自分と、ピクルの気持ちの重さに差がある気がして、

 それが、不安に感じるようになっていた。


 それまでは、ただそばにいてくれるだけでよかったのに。

 今までと一緒じゃ、ダメになってしまった。


「いっつも子供扱いして……

 私だって、ちゃんと色々わかってるもん」


 必死に言い募る声が、こらえきれずに揺れた。



 ミラの話を聞いて、ピクルは驚いた後、しばらく黙り込んだ。

 大きく息を吐く音が、近くで聞こえる。


 何と言われるのか――

 緊張と不安の中、ピクルの次の言葉を待った。


 ピクルは迷うように視線を落とし、

 それから、ゆっくりと口を開いた。


「……じゃあ、試してみるか?」


「……え?」


 一瞬、意味が分からず瞬きをする。

 それから、ゆっくり言葉を噛みしめるように理解して――


「ほんとに!?」

 ピクルの言葉に、ミラの顔がぱっと明るくなる。


「何するの?」


「……やっぱ分かってねーじゃねーか」


 身を乗り出して聞くと、ピクルは呆れたように小さく息を吐いた。



「あ、しまった!

 でも、仲良くなれるなら、なんでもいーの!」


 ぎゅっとピクルの腕にしがみついて、顔を覗き込む。


「なになに??」


 一瞬ためらうような沈黙のあと、

 ピクルは観念したように口を開いた。


「……大人のキス、してみるか?」


 ピクルの返答に、ミラは一瞬きょとんとしてから、

 やや不満そうに口を尖らせた。


「えー!チューならいつもしてるよー。

 あの本にはもっとえっちなこと書いてたんだよ!」


「いつものとは、ちょっと違うんだって」


「えーそうなのー?

 そういえば、そんなこと書いてたような……」


 例の小説の描写を思い出す。


「とりあえず、まずはこっちで”お試しだ

 それで大丈夫なら、また考える」


「えー。別に大丈夫なのに!

 ……分かったよ」


 不満に思いながらも、渋々納得する。

 とりあえず、今はそれでいいかと気持ちを切り替えた。



 部屋に、ふっと間が落ちる。


 違和感を覚えて顔を上げると、

 ピクルは、真剣な眼差しでミラを見つめていた。


 その視線を受け止めた瞬間、胸の奥がざわついた。


(あれ……? なんか、いつもと違う……)


 見つめられているだけなのに、

 平気なつもりだった心臓が、急に騒ぎ出した。



 ピクルが、静かに息を吐く。


「後で文句言うなよ?」


「い、言わないよ!」


「でも……嫌だったら言えよ」


「どっちなの!?

 なんか緊張してくるから、早くしてよ!」


「……分かった」


 ピクルはミラに一歩近づき、ぎゅっと抱き締めた。

 いつもなら、こんなふうに力を込めたりしない。

 抑えていたものが溢れ出たようで――

 その腕に包み込まれ、ミラは何も考えられなくなっていた。

 

(どうしよう……なんかすごいドキドキしてきた……)



 ピクルは一瞬、ミラから視線を外したあと、

 小さく息を吸った。


「じゃあミラ、口開けろ」


「え?」


 意味が分からず、ミラが言葉を失っていると、

 ピクルの顔が、すぐそばまで近づいていた。


 逃げる間も、考える間もなく――

 そっと唇が触れた。


 いつもならそれで終わり。

 

 だけど――


(……あれ?)


 離れると思ったのに、

 ピクルは、そのまま動かない。


 そして――


(――!?)


 何が起きているか、一瞬、理解できなかった。


 触れたまま、ゆっくりと重なる感触。


 息がかかって、体温が伝わってきて、

 いつもよりずっと、近くて、深い――

  

 その間に、抱きしめるピクルの腕に

 少しずつ力がこもっていくのが分かって、

 ミラは鼓動が早くなり、頭の中が真っ白になる。


(なんか、なんか、全部違うっ……!)


 いつ終わるのか分からないまま、

 長い時間、唇を重ね合う。


 ただ、体の奥に残る熱だけが、はっきりと感じられた。


 そして――

 ゆっくりと、唇が離れる。


 それでもミラは、すぐには現実には戻ってこれず、

 何も考えられないまま、ぼうっと、ピクルを見上げていた。


 思わずピクルは吹き出した。


「なんて顔してんだよ……」


「だ、だって……」


 自分でも変だとわかるくらいに動揺している。

 ミラは顔がどんどん熱くなるのを感じて、視線を落とした。



「ミラのそんな顔、初めて見た」


「そんなに見ないでっ……」


 からかわれているのは分かるのに、

 どう返せばいいか分からず、顔を覆ってしまう。



「おもしれー」


「だ、だって……今までと全然違うんだもん!」


「だから言っただろ? いつもと違うやつだって」


「そ、それもあるけど! 

 ぴーちゃんの”感じ”がいつもと全然違うんだよ!」


「そうか?」


「そうだよ!

 だから、どうしていいな分からなくなるの!」


 ミラが必死に言い返すと、

 ピクルは一瞬、言葉を失ったように見えた。


 その視線が、ふっと和らぐ。

 なぜか、じっと見つめられている気がして、

 ミラは落ち着かなくなる。


 そして、静かな声で言われた。


「……かわいいな」


「……え?」


「いや、かわいいなと思って」


「ちょっ……!」


 不意にそう言われて、心臓が跳ねた。


「だから急に変わりすぎなんだよ!

 ずっと一緒にいたのに、

 そんなセリフ、今まで一度だって聞いたことないよ!」


「別に口に出してなかっただけで、何回も思ってたって」


「なっ……」


 ミラの反応を見て、ピクルは声を立てて笑った。


「新鮮だな。おもしれー」 


「全部ぴーちゃんのせいだからね!

 慣れてないんだもん!

 普段からちゃんと口に出して言ってくれてたら、こうはならないんだよ!」


「分かった、分かったって。

 これからはちゃんと、思ったことは言うよにうにするから」


「じゃあ、もう1回ちゃんと言ってよ!」


「えー、今は思ってねーし。思ってないことも言えってことか?」


「だからそういうとこだよ!」


 ミラは膨れ顔でピクルの胸に顔を埋めて俯く。



「そんな拗ねんなよ。機嫌直せって」


 見かねたピクルは、ミラをぎゅっと抱きしめた。


 じっと見つめられて、また胸がどきりと跳ねる。

 顔を見てられなくなって、思わず目を逸らしてしまう。


「何でこんな急に変わるのー!

 急すぎて困る!」


 ミラは混乱した気持ちを、ポカポカとピクルの胸を叩いて訴える。

 ……けれど、途中で手が止まった。

 からかわれると思っていたのに、返ってくるはずの言葉がない。


 顔を上げた瞬間、見たことのない真剣な表情に、ミラは息を呑んだ。


 一瞬、ピクルの眉がきゅっと寄る。

 何かを耐えるみたいな、その表情に、

 ミラは訳も分からず胸がざわついた。


 そして、迷いを振り切るように、

 ピクルは口を開いた。


「別に、俺の気持ちは変わってねーよ」


 思ったより強い声に、ミラはびくりとする。


「お前が変わったんだって思えたから、

 俺も、態度に出しただけで」


 言い切った直後、ピクルが一瞬、言葉を飲み込んだように見えた。


 驚いたまま、ミラは見つめ返す。


「どういう、こと……?」


 ピクルは、まっすぐにミラを見つめて続ける。


「正直、ずっとお前の気持ちが、よく分かんなかった」


「大事に思ってくれてんのは分かるけど。

 男として見られてるとは、思えなかったから」


「それは……」


 ミラは、俯いて言葉を詰まらせる。


「でも今日は……

 お前の方から“進みたい”って言った」


「……」


「それでやっと、

 俺も踏み込んでいいんだって思って……」


 戸惑うミラの表情に、ピクルはわずかに言葉を止めた。


「今までは、

 気持ちをぶつけたら困らせると思って、

 ずっと抑えてた」


「……そう、なの……?」


「俺が変わったんじゃない……

 お前が俺を見る目が変わったから……」


 ピクルの抱きしめる腕に力が籠る。

 そして小さく息を吸い、覚悟を決めたように口を開く。


「俺は、本当は……ずっとこうしたいと思ってた」


 その言葉に、

 ミラはすぐに返事ができなかった。


 まっすぐ向けられた想いが、

 逃げ場もなく胸に届いて――


 胸の奥から、何かが一気に体じゅうへ広がっていくのが分かった。


 そんな風に考えてたなんて、思いもしなかった。


 これまで、ピクルの距離の取り方に、

 ずっと寂しさや疑問を抱いていたけれど――

 それが、自分を大事に思ってのことだったと初めて知った。


 今までの言葉や態度を思い返すと、

 裏に隠れていた熱い想いが、ひとつずつ胸の中で繋がっていって――

 嬉しさも驚きも一気に押し寄せて、

 頭が処理しきれなくなる。


 さっきから急に近くなった距離も、

 向けられる視線も、抱きしめる腕の力も――

 それだけで、もういっぱいいっぱいだった。


 そこに追い打ちみたいな告白を聞かされて、

 思考は完全に限界を超えてしまった。

 何も考えられないまま、口だけが先に動いた。


「もーやだー……」


「え? 嫌か?」


 ミラの言葉に、ピクルはサッと腕を離した。

 一瞬で距離ができて、ミラははっと息を呑む。


 その隙間に、

 ピクルがずっと我慢してきた気持ちが、

 いきなり突きつけられた気がした。


 嫌がると思って、

 自分の気持ちを抑えて、

 触れないようにしてきたんだって――

 今になって、胸に落ちてきた。


「……違う!嘘!

 なんでそんなすぐに引いちゃうのー……!」


 慌てて否定して、俯いたまま言葉を探す。

 何て言えば、今の自分の気持ちがちゃんと伝わるのか分からない。


 胸の奥で、驚きと嬉しさと少しの切なさが入り混じって、

 感情に思考が押し流されていく。


 だからこそ、シンプルに伝えることしかできなかった。


「……本当は、

 めちゃくちゃ嬉しい……」


 消え入りそうな声だった。


 言った途端、

 うまく伝わったか分からなくて、

 思わず指先に力が入った。


 その言葉に、ピクルは

 一瞬だけ、ミラを見つめてから、

 ふっと息を漏らすように笑った。


「……今は思った」


「え?」


「かわいい」


 ミラの頬にそっと触れて微笑む。

 その瞬間、また心臓がギュッとなって慌てて目を逸らす。


「っ……今は言わなくていい!」


「どっちなんだよ!?」


「だ、だって!

 嬉しくても、一気に言われたら混乱するの!」


 うまく答えられなくて、ミラはそのまま黙り込む。


 胸の奥がくすぐったくて、じっとしていられない。

 この気持ちを、どう扱えばいいのか分からなかった。



(でも……やっぱり……)


 そのままピクルの背に腕を回す。

 腕にぎゅっと力が入る。


 ミラはピクルの胸に顔を埋めたまま、

 小さく息を吸う。

 勇気を出すように、言葉を続けた。


「な、慣れてないだけだからっ……」


「?」


 一瞬の沈黙。


「絶対、すぐに慣れるから……

 そしたら、ちゃんと約束守ってね」


「え……?」


 言葉を続けようとすると、恥ずかしくて消えてしまいたくなる。

 それでも、ちゃんと伝えたかった。


「”大丈夫だったらまた考える”って言ってたよね?」


「えー、大丈夫か?

 そんなすぐに慣れるのかよ……?」


「た、多分……」


 ミラの自信なさげな返事に、ピクルは一瞬目を細めたが、

 すぐに落ち着いた笑みを浮かべて答える。


「あぁ、そうだな。

 ”慣れたら”、な」


 そう言ってピクルは、ミラの頭をそっと撫でる。

 ミラは思わず顔を上げ、二人の視線がぶつかった。


 ピクルの熱い視線に、また体が一気に熱くなる。


(うわぁ……これ、本当に慣れるのかな……)


 それでも、自分の気持ちを受け取ってくれたことが分かって、

 胸の奥で強張っていたものが、ゆっくり解けていくのを感じていた。



 ミラは、ぎゅっとピクルの背に回した腕に力を入れる。

 ピクルも微笑んで、同じように抱き返した。


 お互い顔を見合わせ、照れたように笑う。

 言葉にしなくても、気持ちがしっかり伝わっているのが分かる。

 照れくさくて、でも温かくて、胸がじんわりする。


 互いに強く抱きしめ合い、

 いつもよりずっと近い距離になる。


 その体温と、はっきり伝わる鼓動に気づいた瞬間、

 ミラはぱっと笑顔で顔を上げた。


「なーんだ!

 ぴーちゃんも、めちゃくちゃドキドキしてる!」


「うっせーな……」


 ぶっきらぼうに言ったけれど、

 よく見ると少し表情がぎこちなくて、顔も少し赤い。


 余裕そうな顔の裏で、

 ピクルが必死に平静を保とうとしているのが手に取るように分かる。


 その様子に思わず声を立てて笑ってしまい、

 胸にあった緊張がふっとほどけていった。


 混乱した気持ちが、落ち着き、いつもの自分を取り戻せてくる。


 ドキドキしてたのが自分だけじゃなかったんだと、嬉しくなって、

 さっきまでの反動みたいに、口が勝手に動いてしまう。


 なんだか余裕が出てきた気がして、はっきりと答える。


「じゃあ、絶対、すぐ慣れるもんね!

 あっという間だよ!」


「何だよ、それ……?」


「ほんとだよ!

 すぐに普通に”出来る”ようになるから! 

 期待しててよ!」


「は!?」


 ミラの言葉にピクルは一瞬固まり、

 真っ赤になって、慌てて目を逸らした。


「じゃあ……期待して待ってるわ」


 その様子を見て、

 ミラは一拍遅れて、はっとする。


(……あれ? もしかして、これって結構恥ずかしいことなの……!?)


 ミラは思わずまた真っ赤になって顔を俯ける。



 それでも、やっぱりもっと近づけることが嬉しくて――


 ミラはまた顔を上げ、ピクルを見つめ返す。


 二人の視線が合った瞬間、

 まだ少し赤いままのお互いの顔を見て、

 どちらからともなく笑みがこぼれた。


 照れくさしさをごまかすように、二人は自然と笑い合った。


(もうちょっとだけ待っててね)


 ミラはピクルの胸に顔を埋め、

 その鼓動を確かめるように、幸せそうに微笑んだ。



 ー終わりー

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