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19話:エピローグ【最終話】

 ミラとピクルは、中庭へと足を運んでいた。


「ほんと……すげー変わったよなぁ」


 ピクルが感心したように声を上げる。


 魔力汚染が進み、ひび割れて荒れ果てていた中庭は、

 今ではすっかり輝きを取り戻していた。


 ミラはコントリビュート・アクティビティが終わったあとも、

 庭の修復作業を続けていたのだった。

 

 土は柔らかく息を吹き返し、草花が色を取り戻す。

 木々には緑が戻り、風が葉を揺らしている。

 最初はまばらだった鳥や虫も、

 今では自然とここに集まるようになっていた。

 

「うん、綺麗になったよね」

 ミラは中庭を見渡しながら、満足げに笑って答える。


「修復のスピードも、最初と比べ物にならないくらい早くなったよな」


 ピクルの言葉に、ミラは視線を落とし、嬉しそうに繋いだ手を見つめる。


「ぴーちゃんも手伝ってくれてるからね」


「まぁな」

 ピクルは照れくさそうに目をそらしながらも、そっとミラの手を握り返した。


 ミラの再生魔法が上達したことに加え、

 ピクルとの魔力共有で一度に修復できる範囲も格段に広がっていた。


 ピクルはミラの手に魔力を送り、

 ミラは残っていた最後の枯れ木にそっと触れた。


 ──ぱ、と光が走る。

 色を失っていた木肌にみずみずしい緑が広がり、

 枝先まで命が吹き込まれていく。


 すべての修復が完了した。


 二人は並んで木の根元に腰を下ろした。

 そよそよと風が吹き抜ける。


 ミラは、木漏れ日の光を見上げながらぽつりと言う。


「なんか……すごく嬉しくなるね」


 くい、と寄り添うようにピクルの肩にもたれかかる。


「ママとパパも……同じ気持ちになってたのかな……?」


 俯き、唇を噛み締めるミラを見て、ピクルは一瞬だけ驚いたが、

 すぐに優しく笑って答える。


「似た景色を見てきてるかもな」


 ピクルの言葉に、ミラは小さく笑う。

「そうだね……」


 もう会えなくても、同じ魔法を使うことで繋がっていられる。

 そんな気持ちになっていた。


 ミラはピクルの方へくるりと向き直し、明るく話す。


「私、今回のでコツ掴んだかも。 

 まだまだうまくなれる気がする!」


「すげえ自信だな」

 ピクルは吹き出しつつも、どこか誇らしげだ。


 そして穏やかに微笑み、ミラの肩をそっと叩く。

「──ま、頑張れよ」


 鳥の囀りが響き、風がそよいだ。


 小さな風に髪を揺らしながら、ミラはピクルの肩をじっと見つめる。

 指先をぎゅっと握りしめ、胸の奥の不安を少しだけ押し込む。


「ねぇ、ぴーちゃんはずっと一緒にいてくれるよね?」


 ミラは、潤んだ瞳で、不安そうにそう問いかける。

 その声の震えに、ピクルの瞳は揺れ、胸に何かが込み上げる。

 元気そうに見えるけれど、まだ両親のことで傷ついている──そのことが痛いほどわかった。


 一瞬の沈黙の後、ピクルはぎゅっと息を飲み、やさしく言葉を紡ぐ。


「当たり前だろ。ずっと一緒だって約束しただろ?」


 その言葉に、ミラの胸の奥がじんわりと温かくなる。

 小さな沈黙が流れ、視線が自然に重なる。

 二人は、言葉以上のものを確かめ合うように、互いを見つめたまま笑みをこぼした。


 ピクルはそっと腕を伸ばし、ミラを優しく抱き締めた。

 その大きな体に包み込まれると、身体の力がふっと抜けるような感覚が広がった。


 背中に触れる温もりが、長く閉ざされていた心の奥までゆっくりと広がっていく。

 置き去りにされていた寂しさが、少しずつ溶けていくようだった。


 ミラの声がぽつりと漏れる。


「やっぱり、ぴーちゃんがそばにいると、すごく安心する……」


 その小さな声は、涙の代わりみたいに軽く震えていた。

 ミラは気持ちを切り替えるように、小さく息を吐く。


 そして――顔を上げ、いつもの明るさを取り戻した声で続けた。


「ねー、じゃあチューもしてよ!」

「は? だから学校ではダメだって!?」

「自分からぎゅーってしたくせに!」

「いや、これはそういうやつじゃねーだろ!?」


 ピクルの慌てる様子に、ミラは思わず笑みをこぼす。


 二人の笑い合う声が、そよ風の中で柔らかく響く。


 確かな未来はまだ見えない。

 けれど、このままの道を進んでいけばいい──

 ミラは静かに、そう思えた。


 二人一緒なら大丈夫。


 風がそよぎ、世界も二人を優しく包んでいるように感じられた。



 ー完ー




 ここまでお読みいただきありがとうございました!


 もしご興味ありましたら、前作も読んでいただければ嬉しいです。


 ありがとうございました。

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