11話:リリアナとルシアンー①-1
実技演習が始まって数日。
ミラたち以外にも、わずかだが融合魔法の成功者が出始めていた。
今日からは、ミラたちのいるD組だけでなく、C組も合同で授業を行う。
D組は防御系、C組は攻撃系の魔法使いが集められている。
攻撃と防御、真逆の系統を持つ生徒たちが、同じ演習場に並ぶ。
バーンが前に立ち、声を張り上げた。
「今日からは、より実践的な演習に移る。
各ペアで試合形式の訓練を行う!」
「試合形式?」
生徒たちの間に、ざわめきが走る。
バーンは手に持った銀の箱を開け、中から赤と青のワッペンを取り出した。
「試合では、相手ペアの魔法使いが胸につけているワッペンを奪うこと。
直接奪ってもいい、交渉して譲らせてもいい。方法は問わない」
そう言って、バーンは意味ありげに笑う。
「ただし――これは単なる魔法バトルではない。
相手に怪我を負わせた場合、マナ・スコアは減点だ。
魔法の使い方は色々ある。
自分の特性を理解して、それをうまく使いこなす、それが目的だ」
その言葉に、ミラは眉をひそめる。
「思いっきりやっちゃダメってことか……」
「スコア減点されなくても、やるなよ。災害だから」
ピクルがぼそりと返す。
試合が始まると、演習場のあちこちで魔法が飛び交った。
炎と氷がぶつかり、土壁が隆起し、風が渦を巻く。
観戦していたミラたちの目にも、攻撃系のC組が圧倒的に優勢なのがわかる。
同じ火・水魔法などの攻撃魔法を使っても、C組の方が威力も速度も上で敵わない。
D組が防御魔法で防ごうとするが、押し切られる場面が多かった。
ワッペンを奪われ、苦戦する生徒が次々と出ていた。
「うまく使いこなすって……どうやればいいんだろう?」
ミラは試合をじっと見つめながら呟く。
「まぁお前は普通にやってりゃ勝てるだろ?」
ピクルは肩をすくめる。
「見た感じ、そこまでのやつはいねーし」
「でも……」
ミラは複雑そうに口を閉ざした。
いよいよミラとピクルの番になる。
開始の合図が鳴った瞬間、対戦相手のC組ペアは顔を見合わせ――
「やっぱ無理!」と叫び、慌ててワッペンを差し出した。
「まだ死にたくないからな……」
去り際に、対戦相手のボソリと呟く声が聞こえた。
周囲の生徒がざわめく。
「D組の二人、また勝ったぞ」「始まる前にギブアップ……?」
「……勝ったっていうか、戦ってすらねーけどな」
ピクルは苦笑いする。
「なんか勝った気しないね……」
ミラはワッペンを見つめてしょんぼり。
(自分の特性を理解して、うまく使いこなすって、結局どういうことなんだろう……)
その疑問だけが、ミラの胸に静かに残った。




