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9話:ルシアンとの情報交換

 ミラはルシアンの部屋に足を運んでいた。

 二人で「情報交換」をするためだ。


 軽い雑談が一段落したところで、ルシアンが思い出したように口を開いた。


「そうそう。多分今日あたり、ピクルくん、ミラちゃんのところに行くと思うよ」

「え、なんで?」


「クラスの子が美味しいお菓子配っててさ。

 『これ、ミラにも食わせてやりてーから』って言って、多めにもらってたんだ」

 ルシアンはピクルの口調を真似て話す。


「そうなの?」

「でも多分、素直じゃないから――

 『食いきれねーから、仕方なく持ってきただけだ』とか言うと思うけどね」


 ルシアンのモノマネが妙に似ていて、ミラは吹き出した。

「言いそう〜! ルシアンくん、上手い!」

「知らないふりしてあげてよ」


 二人で笑い合った後、ルシアンが少し真面目な声で尋ねた。

「それで、リリアナ様の情報は何かある?

 もうすぐ合同授業が始まるから、何か仲良くなれるきっかけがあるといいな」


 ルシアンの言葉に、ミラはおずおずと1冊の小説を取り出す。


「これ、どうかな……? リリちゃん、この本が好きなんだって」


 ――『愛の逃避行 〜Love Memories〜』。

 リリアナ一押しの恋愛小説だ。


「リリちゃん、これに出てくるアランって人がすごく好きなんだ。

 だから、この人みたいに行動すれば、仲良くなれるんじゃないかな?」


「……そう、なのかな……?」

 ルシアンは怪訝な顔をしていて、全く乗り気ではない。

 ミラは不安に思いつつもとりなす。


「と、とりあえず読んでみよ!  ね?」


 二人は小説を読み進める。

 やがてミラが指差す。


「ほら、この場面とか! 男の人が女の人の顎を持ち上げて――」

 ――いわゆる“顎クイ”のシーンだ。


 ルシアンは険しい顔をする。

「うーん……この人たち、ほぼ初対面だよね?

 親しくもない女性に触れるのって、失礼じゃない? しかも相手の同意もなく」

 

 ルシアンは全く納得いっていない。


「……わかる。ちょっと怖いよね……あ!違った!」

 思わず共感してしまい、慌ててごまかすミラ。


(ダメだ。私もこの小説の良さが分かんないんだよな……)


「いやでも……なんかちょっと強引な方がいいらしいよ!

 それに、ルシアンくんなら大丈夫だと思う!」


「なんで? 僕、従者だよ?」


「いや、その……」

(やば、リリちゃんが好きなのバラすとこだった!)


「だって、ほら……かっこいいから!」

「容姿って関係あるのかな? 信頼関係の方が大事だよね?」

「わかる……! いや、……また間違えた」


(ダメだ、ルシアンくんに共感しちゃう……!)

 ミラは頭を抱えた。


「で、でもルシアンくんは特別かっこいいから!

 クラスの子達も”白馬に乗った王子様みたい〜”って言ってるよ!」


「”白馬”……僕はユニコーンだから、それはそうだね。

 ただ、乗る方じゃなくて、乗られる方だけど」


「えっ……あ、そういうことじゃなくて!」


(全く響いてない……自分がかっこいいって気づいてないんだ……)


 ルシアンは真顔で続ける。

「そもそも容姿なんて偶然の産物だよ。

 努力も才能も関係ない。魔法の精度とか、実戦の判断力の方がずっと重要だ」


 あまりに真面目な返しに、ミラは言葉を失った。

(なんか、すごく優秀な理由がわかった気がする……)


 気を取り直して、別のシーンを提案する。

「じゃあ、こっちは? 触ってないよ。男の人が壁に手をついて――」

 ――いわゆる“壁ドン”の場面。


「うーん。僕、従者だしな……

 主人に対して上からってどうなんだろう? 下からならともかく」

「もうそれ別物だよね」


(ダメだ。ルシアンくん、恋愛のこと全くわかってない。私が思うくらいだから相当……)


 しばらく読み進めたあと、ルシアンが淡々と言った。

「そもそもこれは創作物なんだから、現実と混同したらダメだよね」

「そう、だね……」


 ミラはふと思う。

(リリちゃんとルシアンくん、全然噛み合わなさそう……)

(リリちゃんもダメだけど、ルシアンくんも真面目すぎて、距離が縮まらないのかも……)


 結局、何の収穫もないまま、ミラはルシアンの部屋を後にした。

(……二人、合同授業、大丈夫かな)

 

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