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兄妹  作者:
2/3

兄妹後編です。

どうぞ。

先月、妹が死んだ……

一緒に笑った妹。

一緒に泣いた妹。

一緒にケンカした妹。

お前は…幸せだったか?



※※※※※※※※



俺と妹は途中から離ればなれになった。

親父とお袋が事故で死んじまったから。

俺と妹は別々の親戚に預けられた。

俺は父方、妹は母方の親戚に。

俺が高校1年に、妹が小学校4年になった頃だった。

2人とも引き取ってもらえたのはよかった。

だが、他人を引き取るのだから受け入れがたい部分も多々あったと思う。

俺は高校生だったし、その辺は重々承知だった。

だが、小学校4年と幼い妹にとってはとても辛いだろう。

そんなことを考えていたある日。

俺を引き取ってくれた親戚夫婦が、俺の妹は親戚をたらい回しにされているのではないかと話しているのを聞いた。

俺はいても立ってもいられず、妹を引き取った親戚に電話をかけた。

すでに妹を他の人に預けたと言われた。

なんでちゃんと面倒を見てくれなかったんだと聞いたら、大人には大人の事情があると怒鳴られて電話を切られた。

それから毎日、辛い目にあってないか?泣いてはいないか?

そんなことばかり考えていた。

高校を卒業し、就職をした頃、俺はボロいアパートを借りて1人暮らしを始めた。

高校生の時からアルバイトをして、ある程度金もあったから大丈夫だった。

それから俺は必死に妹を探した。

やっと連絡がつき、俺は妹に「一緒に暮らさないか」と聞いた。

妹はワンワン泣いて喜んでくれた。

それからあのボロアパートで妹と一緒に暮らし始めた。

風呂も無く、部屋も1つしかないような部屋だから、妹はここを気に入ってくれないんじゃないか?と心配だったが、そんな仕草は無かったからよかった。

妹は高校に上がると、アルバイトを始めた。

「アルバイトで稼いだ金は自分で好きに使っていい」と言ったのに、妹は頑として受け入れず、ほとんど生活費に当ててくれた。

そんな年の父の日。

妹は俺にネクタイをプレゼントしてくれた。

「なんで父の日に…」と俺は苦笑して言ったが、妹は意味あり気に「えへへ…」と笑うだけで何も教えてくれなかった。

妹はネクタイを着けてほしいと言ってきたが、照れくさくて着けれなかった。

ふてくされる様に頬を膨らませる妹の頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細めた。

こんな日がずっと続けばいいと思っていた。

だが、次の日に妹は交通事故に巻き込まれて死んだ……

幼い頃に両親を亡くし、親戚に辛い目にあわされ続けた妹。

これから幸せな日々がずっと続くと思った矢先。

あまりにも辛すぎる。

葬式の席で、妹をたらい回しにした親戚の奴らが俺のもとに来て、「惜しい子を亡くしたね」と言ってきた。

俺は怒鳴った。

「何故そんなことが言えるんだ!!」

「アンタらにそんなこと言える資格あるのか!?」

「そんなこと言うならなんで妹をたらい回しにしたんだ!?」

俺が怒鳴ると気まずそうに去っていった。



※※※※※※※※



俺の大切なたった1人の妹。

俺はお前が死んだと聞いてから、何故か涙を流せなかった。

だが、この前、お前の遺品を整理していたら、お前からの俺宛の手紙が見つかった。

それを読んだ後、俺は年甲斐もなく声を上げて泣いた。

多分、この瞬間にやっとお前が死んだのを受け入れられたのだろう。

1ヶ月もかかっちまったけどな…



拝啓、親父様・お袋様。

先に逝った妹をお願いします。

俺はまだまだこっちにいます。

妹の分まで。



拝啓、妹。

俺はお前と一緒に暮らせてとても幸せだった。

だから、そっちでは俺のことを気にせず暮らしてくれ。

俺も、何十年後にはそっちに逝くから。

……その時は、また仲良くしてください。


いかがでしたでしょうか?

こんな私の駄文にお付き合い頂き、ありがとうございます。

次で兄妹は完結となります。

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