4.そして彼は目の当たりにした
しばらく様子を見ていて分かったことがいくつかあった。
あのロアウルフと呼ばれる獣は非常に警戒心が強いということだ。
ただ単に目の前の敵を攻撃しているわけではない。常に周りを気にする仕草……今なら奴にとっての敵である人間は隠れている自分を除けば三人の人間。
爪で攻撃する場合は死角を作らないように動きながら、そして牙で攻撃する場合は常に三人が視界に入っていると思われる時にしかしない。というように見える。
すでにここに来てどれほどの時間が経ったのであろうか。日の当たり方からしてほんの数分しか経っていないだろうが、命のやりとりをしているこの場所だけ時間の流れが違うように思える。
レイスにとって慣れ親しんだ感覚であり、怪物に直面したこの状況において彼が最も冷静に身を置いているのかもしれない。
ふと、真後ろで草が揺れるような音がなったことに気付き、レイスは剣抜き、自身の目の前に構え、臨戦態勢を取る。
(奴の仲間か!?)
彼は息を整え、凝視すると、そこには丸くなって怯える男がこちらの様子を伺っていた。身なりは少々、高価なものを身に着けているようにみえる。恐らく、この荷車の主というところか……
ほんの数秒、2人の間に沈黙が流れたかと思うとその男は這いつくばりながらレイスのもとに駆け寄って来たのだった。
「あ、あんた!あんたはハンターか!?」
男は必死に大声を出すのを抑えながらレイスに問いかける。
「は、はんたー?」
ああ…いつものだ。だんだんと慣れてきた。聞き覚えのない知っている単語。
【ハンター】
魔獣を狩ることを専門にしている職業。
【魔獣】
魔力を扱うことのできる獣。そのほとんどが魔王の配下である。
魔力を持った獣……
かなり有用そうな情報が手に入った。魔力を扱うとはよく分からないが、この男は少々使えるようだ。
「いや、俺はハンターじゃないが、剣に覚えはある。あのロアウルフについて教えてくれ。」
レイスはロアウルフの動向を目の端で確認しながら答えた。
「ハンターじゃないのか…まあ、いい。助けてくれるならな。俺が知っているのはあいつの咆哮には自身の身体能力を向上させる効果があるということだ。どうだ!?役に立つか!?」
「じゃあなぜ、やつは吠えない?」
レイスは矢継ぎ早に質問する。
「いや…確かに言われてみれば…運がいいのかもしれないな。」
運が良いか…この状況でそんなセリフが言えるのだからこの男は大物かもしれないな。そんなことを思いながら知り得た情報を加味しながら状況を見守っている。
「なんとか隙を作れば、エミリアが電撃魔法を使える。あいつの弱点なんだ。あんたも加勢してエミリアを助けてやってくれないか?」
弱点なんてあるのなら早く教えてくれ…
レイスは呆れながらではあるが突破口を得た事で考えをまとめ始めた。
前回、バウンドウルフとしていましたが、ロアウルフに名前を変更させていただきました。




