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そして彼は剣聖と呼ばれた  作者: 白黒まざる
クレエアでの経験
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23.そして彼らは語り合った

 医務室のベッドに二人が並んで寝かされていた。

 一人は左腕と右脚に怪我を負った少年剣士。もう一人はさほど目立った怪我はしていないが、大事を取って休まされている鬼の剣士。二人は黙って天井を見つめたまま静かな時を共有しているのだった。


「あんた、聞いてたよりも悪い奴じゃなさそうだな。」


 静寂を破ったのはレイスだった。ただ、依然として顔は天井を見つめている。


「悪い奴…。噂でも聞いたのか?」


 同じくドラクロワも天井を見つめたまま返答する。


「自分が良い奴だとは思ってはいない。」


「だな、でなきゃ弟子にあんな酷い攻撃はしないさ。」


「お前の目は節穴か?ちゃんと手加減している。周りに悟られないように音だけは大きくしたがな。」


「ほら、やっぱり良い奴だな。」


 ドラクロワは大きくため息をついた。どうも調子が狂う。今日の敗戦で明日からの弟子たちへの対応も変えなければならないだろう。そう思うと頭が痛む。


「あんたに人望がなかったら弟子たちが集まって心配なんてしないさ。」


「そうか。それは意外だな。俺は嫌われていると思っていたぞ。」


「節穴なのはそっちだな。あの破門試合っていうのも諦めされるためにやってんだろ?」


 ドラクロワは核心を突かれ思わず顔をレイスに向ける。するとレイスはイタズラっぽい笑顔でこちらを見つめていた。そしてレイスはまた天井を見て続ける。


「一人目と二人目は俺から見ても剣士としての見込みはなかった。三人目もあれ以上伸び代はなさそうだ。そのことは三人も分かってあれで諦めがつくだろう。」


「育てきれなかった自分の責任…アレは自分なりのケジメだ。そうすればハンターになれなかった辛さよりも俺を恨んで今後の人生の糧にしてくれると信じている。」


「あんたは凄いな。俺にもあんたくらいの先生としての才能があればな。」


「まるでどこかで剣を教えていたような口ぶりだな。」


 ドラクロワは茶化すような言い方をしたが、少年の言葉には不思議な説得力があった。もしかしたら本当に剣を教えていたのではないかと。


「部下からの反感を買って軍を辞めさせられたんだって?」


 この少年は遠慮というものを知らないのか。

 ドラクロワは呆れながらその問いに答えた。


「ああ…部下に皇族の出という者がいてな。そいつが武功を立てようとして無茶な突撃をして我らの部隊は損害が出た。それを咎めたら審問会に呼ばれ、上に良く思われてなかったのか俺に後ろ盾が無かったからなのかあっさりと除隊を言い渡されたよ。」


「なるほどな。」


「その皇族のボンボンは俺が居なくなったあと、無茶な作戦を繰り返してことごとく失敗、皇族からも見放されて今じゃベテランのヒラ兵士らしいぜ。いい気味だ。」


 ドラクロワは豪快に笑い。その声は医務室中に響いた。


「さっきの良い奴っていうのは撤回するよ。」


 レイスも同じく大きな声で笑った。


 ひとしきり笑うと今度はドラクロワからレイスに問いかけた。


「もし俺が右足を痛めてなかったらどうするつもりだったんだ?」 


「そうだな。オーガの弱点を探ってそこを突くか、あんたのクセが分かるまで持久戦に持ち込むか。今考えられるのはそんなところだな。」


「オーガのことを知らなかったのか?」


「ああ、俺の完全な落ち度だ。後悔したよ。あんたが有名人だと知りながら何も考えずに来ちまったんだから。戦えるっていう気持ちで浮ついてたな。」


 オーガと初めて戦って勝った。その事実にドラクロワは再び笑った。


「ハハハッ。良いだろう。後学の為に教えといてやる。オーガは関節付近がほかの皮膚に比べて柔らかい。頑丈ではあるが衝撃には弱い。外が硬い分、中身に響くんだよ。」


「そうか。それは良いことを聞いた。次にあんたと戦う時に参考にさせてもらうよ。」


「ああ。お前との試合は楽しかった。年甲斐もなく久々に燃えたよ。」


「俺もだよ。ありがとう。」


 感謝の言葉にドラクロワは顔が緩んだ。戦って楽しかったという感情を得たのは初めての経験であったからだ。


「お前は一体何者なのだ。ペネロペのことと言い。不思議な奴だ。」


「ああ、ペネロペさんに関してはエミリア…あの、カノープスっていうグループのリーダーをやってる知り合いがいてそのツテで。」


「お前の口からは有名人しか出ないのか?」


 ドラクロワは再び呆れながら声を出す。


「ペネロペは俺が軍にいた頃に世話になったんだ。魔法も教えてくれたよ。まぁそっちに関してはすぐに根を上げちまったけどな。ハンターになった時もここを立ち上げる時にも面倒をみてくれた。だからお前の挑戦を断ることができなかったんだけどな。」


「ペネロペ先生って一体いくつなんだ?」


「聞くのはやめておけ、俺も昔、聞いて酷い目にあった。」


 今度はドラクロワのほうがニヤッとレイスの方を向いて笑った。


「それでお前は一体何者なのだ?まだ答えを聞いてないぞ?」


「ああ、そうだな。魔王について調べてる流れの剣士だよ。ただこの街に色々あってたどり着いて最近、ハンターになったんだ。それで自分の力がどんなもんかと思って。」


「それで俺を物差しに使ったのか。大したやつだよ。それにしても魔王か…」


 そしてレイスはドラクロワに思いもよらない問いを投げかけた。


「あんたなら魔王に勝てるか?」


 ドラクロワは一瞬その問いの意味を理解できなかった。

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