2.そして彼は迷った
何刻ほど歩いただろうか。
開けた草原の街道を歩いていたはずだが、段々とうっそうとした雑草が足にまとわり始めた。
木々も増え始め、目の前には森があり、レイスを待ち構えているようである。
「これは…迷ったな。」
どうやら途中で道を間違えたらしい。
どおりで人ともすれ違わないわけだ…
まだ自分に染み付いた感覚とこの世界の知識が噛み合っていないようで、地図も知識としては見方などは分かるが、以前の自分の知っている地図とは全く違うものであった。
「だから迷ったのだ!」
そう自分に言い聞かせないと情けなくて泣けてくる。もう大人だというのに…見た目はまだ10代そこそこではあるが……
ため息を一つ入れ、もう一度自分の位置を確認するために地図を広げる。今回はこの世界の知識とすり合わせながら…
どうやらこの森を抜けると【学園都市】というこの国でも非常に栄えている街に辿り着くらしい。
「大きい街のほうが情報も集まるか。」
どうも一人の時間が長いと考えが口から漏れてしまうらしい。一種の人恋しさと言うやつか。
レイスは地図を折りたたみ、カバンに詰め込むと森に向かって歩き出した。
「この先魔物注意」という朽ちた看板にも気づかずに…
木々から溢れる陽の光が森の道を照らす。
日の高さからいってまだお昼を回った頃だろう。
時間の感覚は元の世界と同じだといいのだが…
と思いつつレイスは森の中を進む。
彼が森に躊躇なく入っていけたのにはいくつか理由があった。
一つは地図からみるにこの森は横には広いものの縦断するにはそこまで長さがないと判断できたからだ。恐らく一刻ほど歩けば抜けるだろうという目算である。
二つ目はこの身体であった。先ほどまで死にかけてたとは思えないほどの健康体。むしろ死にかけた反動で今は動きたくて仕方がなかった。
そして三つ目は舗装はされていないものの道があり、さらにそこには比較的新しい車輪と幾つかの足跡が自分の行く先に残っていたことであった。つまり現地の人間もこの道を使っているということだ。
彼はまだこの世界で人と出会っていない。
もしかすると人とすれ違えるかもしれないという淡い期待も持ちつつ軽い足取りで歩いていると突然、
「グオオオオ!!」
獣だろうか…しかしこんな鳴き声は聞いたことがない。鳴き声というよりは咆哮か。
逃げるべきだろうか…
そんな考えが過ぎった瞬間、人が叫ぶような声が森に響いた。
レイスは考える間もなくその声の元に駆け出したのだった。




