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そして彼は剣聖と呼ばれた  作者: 白黒まざる
クレエアでの経験
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14.そして訓練生は臨んだ

 踵を返し、ドラクロワは道場の正面、奥にある少し高くなった場所にゆっくりと腰をかけた。

 一方、ブロックスはその場から動けず、周りはまるでそこに何もないかのように準備を始める。彼の他に呼ばれた3人も呆然とする者や涙ぐんでいる者など一様に受け入れ難い事実に打ちひしがれるのであった。


「すいません!俺が彼に質問しただけなんです。だから悪いのは俺で…」


 レイスは駆け足でドラクロワの元に近づき、事情を説明したが、返ってきた言葉は非情なものだった。


「それならば私の話が終わったあとに答えればよかっただけこと。それに部外者の君が口を挟むようなことではない。」


 そう言うとドラクロワは再び口を閉ざし、訓練生のほうに目を向けた。


「それにしても、あんなことで…」


 レイスは思わず言葉を漏らしてしまった。すぐさま口をつぐんだが、その言葉にドラクロワは静かに反応する。


「この訓練所での私の決定は絶対だ。彼もあの話がどれだけ重要なものなのか分かっているはず…それを聞かずに君の質問に答えるなどあってはいけないことなのだよ。」


 ドラクロワはそれだけ告げると手元にあった木刀を掴み、立ち上がった。そして中心へとゆっくりと戻るのであった。レイスも少し間を置いて、なんとか立ち上がっているブロックスに歩み寄った。

 中心には綱によって半径数メートルほどの円が作られていた。その中にドラクロワだけが入り、訓練生達は少し離れた所でその様子を見守っている。


「では、これより破門試合を始める。呼ばれた者はこの中に入り、私と試合をしてもらう。どちらかがこの円から出るか、降参した時点で終わりだ。」


 ドラクロワが一通り説明を終えると深呼吸をし、一人目の名前を呼んだ。

 最初に呼ばれたのはレイスと同じ歳くらいの少女であった。


「では…はじめ!」


 審判役の訓練生の一声で少女は木刀を振り上げ、突っ込む。しかしドラクロワは木刀を下げたまま構える事もなく待ち受けていた。


「ヤー!!」という少女の悲鳴にも似た叫びと共に振り下ろされた木刀はドラクロワの胸に命中したが、彼は微動だにしなかった。


「度胸は認めよう。」


 ドラクロワはその少女の腕を掴み、その身を浮かせるとそのまま円の外まで連れていきその手を離したのだった。


「次、キュリク。」


 ドラクロワが中心に戻りながら静かに言うと足を震わせた青年が恐る恐る円の中へと入る。


「は、はじめ!」


 合図の声がかかっても青年の足の震えは止まらず、その場で木刀を腰の前で構えるのが精一杯であった。ドラクロワはしばらくその場で待っていたが、痺れを切らせたのかゆっくりと近づく。


「だから駄目なのだ。」


 ドラクロワは青年の木刀めがけて自分の木刀を片手で力いっぱいに水平に振ると当たった瞬間に大きな音を立てて、円外に飛んでいったのだった。そしてドラクロワが大きく振りかぶった瞬間。青年はその場に崩れ落ち「降参します。」と震える声で告げるのであった。

 ドラクロワは構えを解き、元の位置に戻る頃には青年は床を這うようにして円の外に出ていた。


「次、マルワ!」


 どこか苛立ちを帯びた声に訓練生達に緊張が走った。そしてその中からゆっくりと大柄な男が円へと入る。


「はじめ!」


 これまでの訓練生と違い、大柄な男は木刀を正面に構え、摺り足で前後に動き、ドラクロワに打ち込むタイミングを見計らっているようであった。それを見て、ドラクロワも下げていた木刀を肩に担ぐような構えを取る。


「ハー!!」


 大柄な訓練生がドラクロワの木刀を持っていない手の方へと素早く移動し、木刀から最も遠い位置から気合の掛け声とともにドラクロワに打ち込む。それもドラクロワの攻撃に対応できるよう、手首だけを動かし木刀を立てるような形にして。

 スピード、タイミング、攻撃の選択全て文句のつけようがなかったようにレイスの目には映った。


 しかしその一撃はドラクロワを捉えることはなかった。彼はその体躯からは想像もできないほどの身のこなしでギリギリのところで足を引き、半身になって避けたのだった。

 それでも訓練生の攻撃は続けて腰を回し、強引に木刀を自分の身体に巻き付けるように回転させ胴を狙い水平に斬りつける。

 だが、半身になった勢いで肩に担いでいた木刀を振り下ろし、その横薙ぎを打ち払った。そして無防備になったお腹を拳を振り抜いたのだった。

 訓練生は木刀を置き去りにし、円の外まで吹き飛ばされるのであった。


「誰か、あいつの手当をしてやれ。次…ブロックス!」


 何事もなかったようなドラクロワは元の位置に戻り、再び待ち構えるのであった。


「悪かった。俺のせいで。」


 レイスは詫びたが、ブロックスは苦笑いしながらレイスの顔を見た。


「あんたのせいじゃないよ。気にするな。」


 ブロックスはドラクロワを見つめ、ゆっくりと歩き出した。するとレイスは肩を掴み、耳元で何かを呟いた。ブロックスは一瞬、レイスの方を見たが、軽く頷き、円の中へと入り師匠と対峙するのであった。

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