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そして彼は剣聖と呼ばれた  作者: 白黒まざる
クレエアでの経験
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13.そして彼は圧倒された

「こんにちわ。今日はどういったご要件でしょうか?」


 受付の女性は笑顔でレイスに声をかける。そしてレイスも受付へと近づき、昨日ペネロペから貰った手紙を差し出す。


「ペネロペさんからの紹介できました。ドラクロワさんと手合わせをお願いしたいと思いまして…」


 レイスから手渡された手紙の封を切り、中に入っていた文書を一読すると再びレイスに顔を向けた。


「かしこまりました。ではそちらにおかけになっておまちください。」


 手を向けられた先にソファがあり、それに促されるようにレイスは座って待つことにした。腰を下ろすと思った以上に沈み込む。訓練所は一見質素に見えるが、座っているソファなどの調度品や受付が身につけていた服装、など所々にお金が費やされているように感じる。


 数分待っていると奥から受付嬢に案内されるように大きな人影が現れた。


「え?」と思わずレイスの声が漏れた。


 その人影はゆうにレイスの二倍の体躯を誇り、赤黒い肌に鍛錬を積み重ねた筋肉が簡素な練習着の上からでもわかるくらいに盛り上がっている。

 そして…驚くことがもう一つ。その額には立派な1本の角が生えていたのだった。


「待たせてすまない。私がドラクロワだ。君が私と手合わせしたいという客人か。」


 鋭い視線がレイスを刺す。その貫禄に思わずレイスは身がすくんだが、それを察してかドラクロワはレイスの向かいのソファに腰掛けた。


「そんなに緊張されては困るな。君はオーガを見るのが初めてなのかね?」


 低く、威厳に満ちたゆっくりとした口調でレイスを落ち着かせるに話しかける。

 レイスからすると緊張と言うより子供の頃に聞かされたおとぎ話に出てくる【鬼】にあまりにも酷似していたので驚きが勝っていた。


「あっ…いや、無礼をお許しください。俺はレイスって言います。田舎から出てきたのでまだ間がなく…」


 レイスが言い訳になっていない言い訳を続けようとするとドラクロワはそれを制止するように大きな掌をこちらに向ける。


「気にすることはない。それに私も忙しい身でね。早速本題に入りたいのだが、私と手合わせしたいと?」


「は、はい。ペネロペ先生からあなたのことを紹介されまして。手合わせしていただけますか?」


 レイスは恐る恐る聞いてみると、ドラクロワは両手を組み身を仰け反らせて天井を一瞥し、再びレイスに向き合った。


「いいだろう。ただ、まだ稽古中なのでその後になるが、良いか?」


「かまいません!ちなみに稽古を見学してもいいですか?」


「ああ、好きにするといい。ついてきなさい。」


 ドラクロワが立ち上がると奥の方へと歩き出し、レイスもそれに続いた。しばらく廊下を歩くと広い道場に着き、そこには何十人もの人が木刀で打ち合ったり、素振りをしているのであった。

 ドラクロワが一礼したあとに道場に入ると、動きを留め一様にドラクロワに礼をするのであった。


「続けろ。今日は見学者がいるが気にすることはない。」


 ドラクロワの低い声が響くと再び、各々が鍛錬をはじめる。レイスは同じく一礼し、道場に入った。

 ドラクロワは道場内を歩きながら訓練生の様子を観察し、レイスは稽古の邪魔にならないように隅の方で様子を伺った。


 ドラクロワは時折、練習している者に声をかけたり、身ぶり手ぶりで指導をしている。


「嫌な奴だって聞いたけど、そんなふうには見えないな。」


 レイスが目でドラクロワを追いながら呟くと突然、大きな声が道場内に響いた。


「では、これより破門試合を行う!今から呼ばれたものは中心に集まれ、それ以外の者は準備を始めろ。」


「破門試合?なあなあ、破門試合ってなんなんだ?」


 レイスは聞き慣れない言葉の意味を近くにいた訓練生に問う。


「あ、ああ。先生に見込みが無いって判断した訓練生が先生と試合をするんだよ。それで負けたらここを追い出されちまう。」


「なんでわざわざそんなことを?」


「まぁラストチャンスみたいなもんなんだろ?でも先生になんて勝てるわけねぇよな。しかもここを破門になったら他の訓練所だって受け入れてくれなくなるから実質引退みたいなもんだから本当に終わりだぜ?」


「他の訓練所に入れないのか?それにハンターになるだけなら破門されても登録さえすればいいんじゃないのか?」


「みんな先生が怖いんだよ。目付けられたらどうなるかわかったもんじゃない。ハンターになってもここを破門になってたら雇ってくれるハンターズグループだって無いよ。すまない、準備があるからもう行くぜ!」


 訓練生が話を切り上げてドラクロワの方を向くとゆっくりと口を開いた。


「イース…キュリク…マルワ…そして、」


 ドラクロワが一瞬レイスの目を見る。


「ブロックス。」


 その名前を呼ばれた瞬間、レイスの近くにいた訓練生が身を震わせた。そしてレイスも反応する。彼はレイスが質問をした訓練生だったからだ。


「では、準備をしろ。すぐに始めるぞ。」


 訓練生たちが動き始める中、一人だけドラクロワに近づいたのは最後に呼ばれた訓練生、ブロックスだった。


「先生!なんで俺が呼ばれたんですか!?もうすぐ俺、ここ卒業なんですよ!?」


「私は言ったはずだ。見学者を気にするな…と。私の言葉に従えないような者をここの卒業生として認めるわけにはいかない。」


 ドラクロワは冷たく言い放ち、ブロックスは膝から崩れ落ちた。

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