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そして彼は剣聖と呼ばれた  作者: 白黒まざる
学園都市クレエア
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8.そして二人は驚いた

 三人がスターシャの店に入り、夕飯を食べている間、レイスは魔王討伐について改めて考えをまとめていた。


 セラから提案された時は自分一人の力でどうにかなる相手だと勝手に決め込んでいた。

 元の世界でも魔王と呼ばれる人物がいたから一個人を差すと思っていたが、現実は違った。

 どのような姿をしているか分からない。魔王は災害のような存在というのはペネロペから教えてもらったが、正直その時点では信じられなかった。しかし彼女の見せた二級魔法が決定打となった。魔王は魔力の王なら二級魔法と同程度…いや、おそらくそれ以上なのだろう。そんな相手に魔法も使えない自分が魔王を倒せるのだろうか…


(今のままじゃ無理だな。)


 そんな答えになっていない答えを導き出したのはスープが完全に冷めきった時であった。


「ねぇ、さっきから黙ってどうしたの?」


 エミリアがほとんど飲み物の入っていないグラスを片手にレイスに詰め寄る。


「そうですよ?せっかくのご飯がもったいないですよ?」


 ペネロペもその小さな体のどこに入るのか…目の前の大皿に入っていたはずの大盛りのパスタをたいらげていた。


「あ、いや、今日勉強したこととかを頭のなかで復習しててさ。」


 レイスは慌てて誤魔化し、エミリアとペネロペは顔を見合わせ、ペネロペはレイスの方を向いて提案をする。


「魔道士でもないのにこんなに熱心な生徒は初めてですよ。わかりました。そこまで学ぶ姿勢があるのならいつでも私のところへ来てもいいですよ。院の方には私の方から話しは通しておきますから。」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


 レイスは思わず感嘆の声をあげる。


「なら、私にももっと感謝してもらわないとね……。でも少しは借りを返せたのかな?」


「借り?」


 レイスは覚えがないといったような表情を浮かべるが、それを想定していたようにエミリアは話を続ける。


「昨日のロアウルフや襲われた時に助けてくれたことよ。あなたはもう気にしてないのかもしれないけど。…私も少し調子に乗っていたのかもね。いい勉強になった、というには代償が大きすぎるけど。」


 エミリアの声には感謝と反省の色を含んでいた。そして自分の空いたグラスに水を入れた。


「そうか。それならもう十分返してくれたよ。むしろ感謝するのは俺の方だ。ありがとう。」


 そう言うとレイスも冷めたスープに口をつける。その二人のやり取りを眺めたあと、ペネロペが話し始めた。


「そういえば、どうしてそんなに魔法について知りたいのですか?ハンターならむしろ魔獣のことを調べると思うんだけど?」


「昨日、魔道士と戦うことがあって。それで今後の為にも魔法について知りたいなって。」


 レイスはなんとかそれらしい理由を捻り出した。魔王を倒す為なんて言っても信じられないだろう。それも一介の剣士が…


「なるほど。知識は武器ですからね。それにしても物騒な世の中ですね。夜に襲撃されるなんて。」


 ペネロペはレイスが考えをまとめている最中にエミリアから昨日のことを聞いていたのだった。


「最近は護衛のためにハンターを雇う商人も増えましたからね。もちろん魔獣からもですが、物資を狙う人間も多いって聞きますし。」


 エミリアはパンをひと噛じりしながら答える。


「そんなに治安が悪いのか?割と平和そうに思えるけど。」


 レイスもスープを飲み終え、パンに手を伸ばしながら問いかける。


「街の中はいいのよ。問題は外。商人が盗賊に襲撃されるなんて珍しい話じゃないのよ。でも最近、そう言った話が多くなってね。それでハンターの需要も増えて、ハンター登録希望者も多いのよ。」


「だから、昨日ギルドであんなに人が多かったのか。」


「ギルドに人が多いのはいつものことだけど、最近はそうね。登録手続きが多いみたいよ。それにハンターの養成所……。レイス、あなた腕試ししたいって言ってなかった?」


 レイスは思い出したようにハッとした顔になった。魔法のことで頭がいっぱいになり、忘れていたのだ。


「しまった!図書館行った後に行くつもりだったのに!こんな時間ならもうやってないよな?」


「そうね。行っても追い返されるのは目に見えてるわ。」


 エミリアはゆっくりとグラスの水を飲みながら答えた。


「仕方ない。明日行くか。」


 レイスは力なく座るしかなかった。そして期待はしていないが、ペネロペに一つ質問をしてみた。


「先生、この街で剣術を教えているようなハンターの養成所って知ってますか?」


「ええ、知ってますよ?なんなら紹介状も書きますよ。どうやら予定を潰したのは私のせいですし。それくらいはしますよ。」


 魔法にしか興味がないと思っていたのでペネロペの予想外の答えにレイスはおろか、エミリアも驚いたように水を吹き出しそうになった。


「知ってるんですか!?それに紹介状まで!?」


「まったく…失礼ですね。これでも学術院でどれだけ先生をやってると思うんですか?街のことやそれなりに人脈はありますよ。それで…どうするんですか?」


 レイスは「お願いします」と深々と頭を下げ、ペネロペは「素直でよろしい」と見下ろすのであった。

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