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1.そして彼は降り立った

 目を覚ますと目の前には高く透き通った青色が広がった。


男……いや、レイスはゆっくりと上体を起こし辺りを見渡すとそこはひらけた草原であることをまだはっきりしない頭が認識する。


「夢…にしてはまぁ、現実味があるな。」


 風は彼の髪を心地よく撫で、鼻に通る草の匂いもまたそこが現実だということを教えるようであった。


「ここがあの世って言われた方がまだ信じられるな。」


 レイスは頭を掻きながらゆっくりと立ち上がる。

 ゆっくりと辺りを見渡すと、右手の方にはまだ雪の残る高く険しい山が草原の奥にあり、また左の方には森が見える。

 後ろを振り返ると数メートル先に大きな湖が広がっていた。

 レイスはゆっくりと湖の方に向かいゆっくりと膝を折ってかがみ込んみ、水面に映る自分を確認する。


「神の言う通りってわけか」


 先程まで死にかけてた男が全くの別人となっているのだから驚きそうであるのだが、神との邂逅で幾分か耐性ができてるようで驚きよりも感心が上回ったようだ。


 少し青みのかかった髪、そしてさらに深い青色の瞳、顔つきから察するに歳の頃は十代後半といったところか。体つきもまだ線が細く成長途中という印象を持つが、これが神の力というものなのか、少し体を動かしてみると見た目に反して、鍛錬して作り上げた元の体のように動いてくれる。


 元の世界では見たことのないような着物を着ているが恐らくこれがこの世界の一般的なものなのだろう。

 神が言うには「シャツ」と「ズボン」そして「サンダル」というモノらしい。

 少し粗末な素材のように感じるが、灰色がかった半袖のシャツと茶色のくるぶし丈のズボンは軽く、動いてみると伸縮性もあって申し分ない。

 サンダルはおそらく革製の草履のようなものだろう…


 一通り水面で今の自分の姿を確認していると不意に腰まわりに違和感があることに気付く。

 そこに目をやるとズボンを止めてある革製の…するとレイスの頭の中に単語が浮かぶ

なるほど「ベルト」というのか…


 これは神の力でこの世界の常識や一般的に流通しているモノは直接知識としてあたかも昔から知っていたかのように得るというものらしい。


 本当に神というのは…

と物思いにふけりそうになったので再びベルト付近に意識を戻す。


 そこには鞘に入った剣がぶら下がっていた。

ゆっくりと抜いてみると片手持てるほどの重さの細めの片刃の剣が太陽の光を反射して鈍く光る。  


「これが俺の相棒…と言うには恥ずかしいな、まあこれからよろしく頼むよ。」


 そう言いながらレイスは軽く剣を振ってみる。すると彼の言葉に応じるように「ビュッ」という風を切る音が鳴る。

 しっかり観察してみると、柄の部分には簡素な装飾が施されているが扱うには問題ない。重さと長さは以前使っていたモノより軽く短いか…その辺は慣れが必要だな

 などと独り言を一通り言い終わるとゆっくりと鞘に戻した。そして元いた場所に目をやるとそこには小さなカバンが置いてあることに気付く。


 彼はそのカバンから地図を取り出し、広げる。そこにはこの世界の全く知らないが聞き覚えがある国の名前が書かれていた。

【アヴァリス共和国】と……

 地図で近くの街までの道と方角を確認するとその新しい体と相棒を手に歩き出すのであった。


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