24.そして彼らは説明した
「なぁ、一つ聞いていいか?」
レイスは駆け足で前を走るエミリアに声をかけた。
「あのさぁ、さっきの地面が崩れたやつも魔法なのか?」
エミリアの返答を待たずして、質問を飛ばす。
「え?急にどうしたのよ?」
エミリアは唐突な質問に思わず足を止め、振り返った。
「いや、あの地面から水が噴き出る魔法…あれって俺の時にも使ったはずなのにどうしてかなって。俺の時はそんなこともなかったし。」
「ああ、あれね。そんなに知りたいの?」
「まぁな。魔法について全然知らないから興味があってね。教えていただけませんか?先生。」
レイスはわざとらしくかしこまり、エミリアもそれに乗ることにしたのだった。
「では、教えて差し上げましょう!さっき使った魔法とあなたに使った魔法は別物よ。あなたに使った【アクアブラスト】は水のないところに魔力で水を作り出して爆発させる魔法よ。そして【アクアバースト】はそこに存在する水を魔力で膨張させて爆発させる魔法よ。まぁ詳しく言うとまた違うんだけどね。」
エミリア先生はレイスの方を向き、後ろ歩きしながら説明を始めた。
「そこにある水?あんな路地裏に水なんてなかっただろう?」
レイスはまた不思議そうな顔で問いかけ、それに答えるようにエミリアは下を指差した。
「水なんてどこにでもあるわよ。この下とかにね。」
「ここって…ああ、地下水か!」
「そういうこと。私はあの時、あの道の下にある水を暴発させたのよ。では、問題。私はなぜあの時、地下水を暴発させたのかしら?」
エミリア先生は目を閉じて人差し指を小さく動かしながらレイスに問題を出した。
「えっと、ああ。あの地面を崩す魔法の準備をする為に離れて欲しかったから!」
「残念!もう、あの時に私のほうの準備は終わったのよ。」
「もう、終わってたのか!?」
エミリアは嬉しそうにレイスに答えを話し始めた。
「ええ。あの時、アクアバーストを使ったのは攻撃のためでもなく、ましてや距離を取るためでもない。地面から水を抜くためよ。」
「地面から水を抜く?」
レイスは先ほどよりもより、不思議そうな表情を浮かべ、エミリアの言葉を待った。
「この辺の土地は緩くてね、だから道を舗装したり建物の土台をしっかりさせて造られてるのよ。だからあの一帯の水を一気に抜いて、蓋になってた道に亀裂を入れれば、あとは少しの衝撃で地盤沈下が起こるのよ。まぁ?私が居たところは魔力で水分を保持しながら崩れないように魔力で調節してたからあんなふうに周りだけ落ちたのよ?わかった?」
「ああ、ええと…まぁ?うん」
レイスは再び思考の迷宮に入り込みそうになったので慌ててエミリアは言葉を続けた。
「次は私の番よ。良くあいつの片腕を落としたわね?アイツも硬化の魔法を使えたと思うんだけど?」
「ああ、あれはたまたまだよ。あの魔法は自分が意識している時しか発動しないみたいなんだ。だから奇襲されて魔法の発動が遅れたんだと思う。俺は運が良かったよ。」
レイスも自分の領域の話になり、混乱せずに済んだようだ。
「もし、あれで硬化状態で斬れなかったらまた別の方法を試すつもりだったんだけどね。一撃で決めれて良かったよ。」
「決められてって…」
「一応、試すだけの根拠はあったさ。」
レイスは少し笑みを浮かべて話し始めた。まるで上手く行ったイタズラを自慢するする子どものように。
「エリスノーは仲間がいるとは言え、魔導士として有名人な君を倒せる自信があったはずだ。その上、対峙したのはあいつから見たらまだまだ子どもの剣士。少しは油断したはずだ。それに片手を切り落とした後、退いてくれないかって提案してもそれを拒否した。その後、エミリアが三人を戦闘不能にした後に降伏する選択を取れる男がそれをしなかった。つまり片手でも俺とお前を倒せるだけの自信があのときはあった、つまり俺を格下だと判断していたんだよ。」
エミリアはその言葉一つ一つに息を呑む。
「ここからは後付けの考察にはなるけど……常時、硬化の魔法を使っていなかったのもそうだ。俺を同等以上だと見ていたなら警戒して魔法を使っていたはずだ。それにブレさんを自分の背後に置きっぱなしだったのもその証拠。普通なら戦いの邪魔にならないように離れるように言うはずだからな。だから…だから俺の初太刀はうまくいったのさ。この見た目のおかげでね。」
「それをあの短時間で考えて試したってわけ!?」
エミリアは信じられないと言わんばかりの勢いで聞き返した。
「そうしないと生きられない…というより、そういう世界を選んで生きてきたからな。」
レイスはまた微笑んだのだった。




