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20.そして彼は不満だった

 レイスは少々、いや…かなり惜しい事をしたと考えていた。結局、彼はエリスノーの腕は切れたものの勝つことはできなかったからだ。というよりも勝つ算段はあったもののそれを試すことなく終わってしまったからであった。


「あら?レイスは反対なの?まぁそりゃあね…」


「ああ…いや、そういうわけじゃないんだ。それに俺は部外者だから口出しするつもりもないよ。」


 レイスは慌てて苦笑いするしかなかった。


「そう…それであなた達はどうするの?雇われるの?それとも見逃したほうがいいのかしら?」


 エミリアのその提案にエリスノーは思わずブレの方を見たが、同じくブレもエリスノーに困った顔を見せていた。


「一ついいかしら…なぜそんな話になるのかしら?」


 ブレはエミリアに困った顔のまま尋ねる。


「そんなの簡単よ。あなた達が使えると思ったからよ。これ、あなたの魔法でしょ?…【アクアバレット】」


 エミリアは空に向かって水の弾丸を一発放つ10mほどの上空でなにかにぶつかったように弾け、その部分は一瞬淀みのように景色が揺らいだ。


「いくら路地裏って言ってもこれだけ騒いでるのに野次馬の一人も来ないのはおかしいとは思ったのよ。」


「えっと…話が見えないんだけど…エミリアさん?」


 レイスは話に置き去りにされまいと質問する。


「えっとね。ブレさんだっけ?これって遮断魔法よね?これだけの強度の遮断魔法を使える魔道士はそうそういないわ。」


 エミリアはレイスの質問に答えつつ、ブレに確認するようにあたりを見渡した。


「ええ、そうよ。この路地裏全体を遮断魔法で外に音や振動、中の景色が漏れないようにしたのよ。暗殺では見られないってことが最重要だから。」


「すごいな…魔法って何でもありなんだな…」


 レイスは独り言のように小さく声を漏らし、それを横目でエミリアが見つつ、さらに補足を加える。


「何でもありってわけじゃないわよ。でも本当に優秀なのは間違いないわ。」


「ああ、ブレの遮断魔法は空間魔道士3級相当だからな。」


 エリスノーが少し自慢げに話す。そしてゆっくりと立ち上がり、レブに肩を支えられながらエミリア達に近づく。


「正直に言うとあんたの提案に乗っていいのかわからねぇ。ただ、俺達はこんな状況だ。今、放り出されたら今度は俺達が依頼人からターゲットにされちまう。だから…俺達をあんたのグループに入れてくれないか。それと…」


「わかってるわよ。あなた達のことは私たちがちゃんと守ってあげるわ。それに依頼した人間もある程度は察しがつくしね。」


 エミリアの言葉に偽りはなかった。今、自分にとってそしてリーダーとしてできる最大の選択だと確信している。そしてその思いはどうやらレイスにも伝わっていたようだった。


「まぁ、恐らくだけど…。その遮断魔法の外側にその依頼人かその依頼人の息のかかったヤツがいるだろうな。」


「ええ、私の遮断魔法は内側にいる人間なら基本的に全員補足できます。そして今ここにいる私たちがその全員。なら、私たちの仕事の結果を確認する者達が外にいることは間違いないでしょうね。」


 ブレは目をつむり、見落としが無いようにもう一度内側の人間の気配を探りながらレイスの問いかけに答える。


「だよな。そんな大金積んでんだから当然か。で…エミリア、どうするつもりなんだ?」


「どうもしないわよ。さっさと片付けて教会に行かなきゃ。それに、レイスもまだ足りてないんじゃないの?」


 その言葉にレイス思わず笑みがこぼれる。なるほど、そういうことか。と納得する。

 ただ、一つ不安な点もあったので、返すようにエリミアに問いただした。


「問題はエリスノー達より強い奴が相手ならどうするつもりかな?」


 レイスは言葉とは裏腹にやる気満々に身体のストレッチを始める。


「どうかな?その可能性は低いように思うけどね。まぁ、あるとしたら人数が多いかこの人達の話が全部嘘かもってところかしら。」


 エミリアがエリスノーたちの方を見るが、二人はどう潔白を証明していいかわからない様子であった。そしてストレッチを終えたレイスが口を開いた。


「それなら俺に案がある。どうだいエミリア?乗るかい?」


「面白そうね。その話乗ったわ。」


 エミリアはイタズラっぽく笑いながら答え、レイスは続けてエリスノー達の意思も確認する。


「この案にはアンタたち二人の協力も必要だ。手伝ってくれるかい?」


「俺達にできることなら何でも言ってくれ。」


「交渉成立」と言うとレイスは右手で握手を求め、エリスノーも少し戸惑ったが、握手を返した。


「それで、私たちは何をすればいいんでしょうか?」


 ブレの問いにレイスは簡潔に笑顔で答えた。


「ああ!死んでくれるでけで良いんだ!」



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