19.そして男は打ち明けた
“カチャン”
倒す相手の居なくなったレイスの剣はゆっくりと鞘に納められ、エミリアはそれを見届けると、静かに口を開く。
「じゃあ、まずはなんで、私達を襲ったのかしら?」
至極当然の質問だと。エリスノーは頷く。
「俺達は雇われただけだから詳しくは知らない。ただ、仕事として受ける以上、ある程度の事情は聞いている。有名人であるエミリア・ギャレット暗殺なんて大仕事だからな。」
「やっぱりエミリアって凄いやつだったんだな…」
レイスが横で独り言をつぶやく。
「レイスが言うと皮肉にしか聞こえないわよ?それで、聞いた話を聞かせてもらおうかしら?」
エミリアがため息をついたあと、話しの続きを促した。
「要は、逆恨みだよ。」
エリスノーもやれやれと小さなため息をついて答える。
「まぁ、そんなことだろうとは思ったわ。」
エミリアは納得したようで呆れた表情を浮かべた。
「魔物に恨みを買うって言ったらそんなところよね。」
しかしレイスは全く理解してないようで頭に「?」を浮かべている。
「俺から説明したほうがいいかい?」
エリスノーはレイスの様子を見て苦笑いをするエミリアに問う。
「ええ、お願いするわ。それとさっきの事情も話せるだけ詳しく。」
「わかった。まず、エミリア嬢が最年少でハンターズグループのリーダーを張ってるっていうのはこの剣士の子は知ってるんだよな?」
「ええ。」とエミリアは頷く。
「史上最年少のリーダーにして、二級魔道士…話題性は十分だ。だとしたら名指しで仕事も入る。だとしたらどうなる?」
レイスはハッとした表情でエリスノーに指を指す。
「なるほど、つまり仕事を取られた他のハンターズグループからの報復みたいなもんか。」
「おそらくね。」
エミリアは苦笑いするしかなかった。
「話を続けてもいいかね?」
「ああ、すまない!」
レイスは慌てて口を閉じる
「連中、ずいぶんと断られてみたいでな。破格の報酬を提示してきたよ。あんたを殺るだけで50万ルーンだとよ。」
「50万ルーン…随分と安く見られたものね。」
レイスが「ルーン」についての情報を得る時間を置いて遅れて驚いた。
「50万ルーン!?パンが一つ1ルーンくらいだから…とんでもない額じゃん!」
レイスは50万ルーンで買えるものを指を折りながら、思い浮かべる。レイスからすると実際は見たことない物ばかりではあるが、一般常識レベルの知識が入ってくるこの能力はありがたい。
「俺達だって驚いたさ。こんな依頼来るなんて初めてだからな。ただ、さっきも言ったが他で断られたみたいでな。もう、俺達くらいしかいないからこれで受けてくれって。…それで俺達にとってもこんな大きな仕事受けない理由は無かった。ただ、この様だ。」
エリスノーは自分を嘲るように小さく笑った。
「依頼主は分からないの?そんな大金何だからあなた達もちゃんと受け取れるか確認は取るでしょ?」
「前払いで半分貰ったからな。成功したら残りを受け取る予定だったんだ。半分でも俺達にとっちゃ充分の額だったから疑ったりはその時点でしなくなったよ。ただ、依頼人はコートを着ていて白い仮面をつけてたし、それに名前もクロウとしか言わなかったな。まぁ、声からすると男だとは思うが、魔法で声を変えられてたら分かんねぇな。」
エミリアは俯き、少し考え込むように話を聞いている。そして数秒ほど間を置き、エミリアが切り出した。
「あなたたちが何者か聞いてもいい?何人かは魔法も使えるようだけど?」
すると今まで黙っていたブレが答え始めた。恐らく、怪我をしているエリスノーを思ってのことだろう。労るような目でエリスノーを見たあとに視線をこちらに寄越した。
「私たちはいわゆる何でも屋よ。お金さえ貰えれば本当に何でもする。魔法が使えるのは私とエリスノー…それとあそこで寝てる赤髪の子、マヴロの三人よ。」
そう言ってブレはスヤスヤと眠っているマブロに目をやった。
「なぁ、俺の知っている限りだと、魔法を使える奴ってそんなに多くないんだろ?それが三人もいるってことはあんた達も大手だったりするのか?その…裏稼業的何でも屋として?」
レイスは自分の知識との答え合わせをするように聞く。
「ああ、珍しいのは珍しいが、なぁこの剣士は本当に何も知らないのか?」
「ええ、私もあなたと同じことを今日一日中、思っていたわ。レイス、魔法についてはまた今度教えて上げるからそれでいいかしら?」
「ああ、そうだな。それで構わない。助かるよ。」
レイスが納得するとエミリアはエリスノーに一つの提案をした。
「ねえ、あなた達、私のハンターズグループに入らない?」
エリスノー達は言葉の意味を理解するのに数秒かかったのだった。




