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16.そして彼らは襲われた

 大通りを歩いていくと段々と人通りも少なくなり、あれだけ騒がしかった街並みも夜らしく静寂と闇が包み込み始める。


【エリル通り5番】


 そう書かれた看板を曲がってからは店も無くなり、馬車などの物流を考えられて作られたのか、道幅は広いものの通り沿いは倉庫のような人の気配も感じられない建物が並ぶ場所へと二人は歩き続けた。

 そしてこの静寂を破ったのはエミリアの一言だった。


「さ…、そろそろいいんじゃない?あまり人をコソコソと尾行するのは良い趣味とは思えないわね。」


 二人は賑やかな通りを歩いていると数人の視線を感じ取ったのだった。しかし確信を得ることができなかったのでわざわざ人の目につかないところへと誘導したというわけである。


「少なくとも…四人ってところかな?俺達に用があるならさっさと済ましてくれないか?」


 レイスもエミリアと同様に挑発するように闇に向かって問いかけた。


「おいおい、ここまで来て返事も無いのかい?それならこっちから行こうか…そうだな、その()()()の建物の陰に隠れてる君とかね?」


 レイスは向って左の建物の赤い壁の方を剣で指した。抜かれた剣の刀身に月光が反射する。そして次にその刀身が写したの暗い色をしたコートを着た人物がレイスに一直線に襲いかかってきたのだった。


 コートの人物はフードを深く被っていたせいで顔や性別まではわからなかったが、迫ってくるその姿はレイスよりも一回り大きく、近づいたかと思うと勢いよく左腕を振り下ろした。


「危ないな!」


 レイスは素早くバックステップでかわすと振り下ろされた石畳の地面には大きなヒビが入っていた。


「【アクアバレット!】」


 エミリアの魔法がレイスを襲った人物に向かって放たれたがその人物はすぐに左手でそれらの魔法を薙ぎ払うが、腕にダメージは無いようである。


「エミリア!走れ!」


 エミリアはレイスの大声によりとっさに前へ走ると後ろから同じようなフードを目深に被った者がエミリアの背後から襲いかかってきた。

 しかし前へ走り出していたエミリアにその攻撃は届くことはなかったが、その者は長く鋭利な爪を光らせていたのである。


「なんなのこいつら…」


 エミリアはコートの二人に注意を払う。そしてまた夜の闇からさらに三人がゆっくりと現れ、コートの襲撃者は合計で五人となった。


「一応聞くけど…エミリア、心当たりは?」


「そうね、魔物になら嫌って程あるんだけど、人間相手なら無いはずよ。……多分ね。」


 心許ない答えが返ってきたが、レイスはエミリアが最年少でリーダーとなったことやそれなりの知名度を持っていることから何かしらの因縁があるのはある程度の察しはついた。


「まぁ、それならとりあえずコイツらをどうにかしないとな。そろそろ俺も疲れたし」


「あら、そんな軽口が叩けるなら余裕あるわね。何人か任せてもいいかしら?」


 エミリアはゆっくりとレイスの方に近づいて襲撃者達に聞こえるように話す。

 それに耐えかねたのか、レイスを襲った者が口を開いた。


「俺達五人を相手に二人でどうにかなるとでも?面白いじゃねぇか…やってみろよ!!」


 ドスの効いた低い男の声で二人に怒声を浴びせるとレイスに向かって一直線に突進し、脇腹めがけてボディブローを放った。しかしその拳は空を切った。レイスは完全にその男の動きを見切り、すんでのところで避けていた。


「流石にそれを受けるのはマズイな。で…エミリアこの状況でこいつらと戦うのは大丈夫なのか?街から追い出されるとかは嫌だからさ。」


 レイスは相手の目を見ながら確認を取る。


「それなら問題ないわ。私たちはあくまで自己防衛したってだけなんだから。」


「なるほどね、じゃあ遠慮なく…」


 レイスは剣を左手で持つと右肩を相手に見せる構えを取った。


「悪いが、お前と遊んでる暇はねぇんだ。」


 そのフードの男の言葉でレイスと対峙する男以外の四人がエミリアに襲いかかる。


「【アクアバースト】」


 エミリアが両手を地面に構えると彼女を中心に大きな水柱が上がり、襲撃者にぶつかった。

 しかし襲撃者も爪の人物ともう一人、大柄な人物がすぐさま体勢を整え、エミリアと一定の距離を取りながら襲うタイミングを見計らっている。


「レイス!手助けがいるなら言いなさいよ?」


 エミリアは襲撃者に注意を向けながらレイスを挑発するような提案をする。


「いやいや、そっちこそ俺の助けが必要ならすぐに呼べよ?」


 レイスもイタズラっぽく答え、対峙する男に剣を向けた。


「お前が俺に勝てるとでも?」


 フードの男は舐められたとでも思ったのか不服そうな顔でレイスを見つめ、仕方がないというように気だるげに構えを取った。


「そんなセリフ久しく聞いてなかったな…若い頃はよく言われたんだけどね。」


 その一言の後、レイスの一振りは男の腕を完全に捉えた。男は何が起きたのか分からず、自分の右腕が飛ぶのを理解するのに数秒かかったのだった。

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