15.そして彼らは歩いた
「えっと…つまりエミリアは【カノープス】というハンターグループのリーダーってことで間違いないんだよね?」
レイスは頭の中を整理しながらエミリアに確認を取った。
「ええ、二級魔道士にして【カノープス】のリーダーのエミリアです。改めてよろしくと言ったほうがいいかしら?」
「ああ、ええとよろしくお願いします。エミリアさん…」
ハンターグループ…俺の頭に流れ込んだ情報によるとハンターが所属する団体でギルドは依頼人からギルドを通じてハンターグループに仕事を振るらしい。少なからずどこにも所属しないハンターもいるらしいけど、グループに入ってる方が色々と都合が良いらしい。
「だから私を負かしたことは誇って良いことなのよ?まぁ、自分で言うのも恥ずかしいけど、カノープスのリーダーに勝ったなんて言ったら一目置かれるのよ?」
エミリアは少し恥ずかしそうにレイスを諭すように答える。
「俺、もしかして悪いことしちゃったかな…?いや、言いふらすつもりとかはもちろんないんだけどさ!」
「そうしてくれると助かるわ。でもあなたはそんなことするような人じゃないって信じてるし。だからここを私の顔で紹介したのよ。」
エミリアは少し呆れた顔で出口の方へ歩き出した。今になって周りを見渡すと周りのハンターと思わしき人達もエミリアの方を見る者が少なくない。
「あの子が、あのエミリアか?」
「あれが史上最年少のグループリーダーか…」
「あいつもカノープスのメンバーなのか?」
これは俺が幸運なだけなのか?それとも神の仕業か?レイスはそんな思考を巡らせながら周りの話し声を耳に入れつつ出口に向かった。
「じゃあ教会に行きましょうか?少し歩くけど…街馬車でも呼びましょうか?」
「いや、歩いて行こう。少しこの街を見たいんだ。いい?」
「ええ、構わないわよ。」
二人は大通りを北に向かって歩き出し、教会へと向かった。
すっかり空は黒く染まっていたが、大通りは店先の明かりや音楽、そして人々の喧騒がが夜の街を彩っている。
「あのさ、最年少って?」
レイスは出店の食べ物を物色しているエミリアに問いかけた。
「その言葉の通りよ。私は去年、16歳の時に史上最年少でグループの結成をギルドから認められたのよ。」
エミリアは一口サイズのなにかのフライが5つほど入った袋を店員さんにから受け取りながら答える。
「リーダーってことはロバスさんと一緒の警護についてたメンバーもエミリアの仲間ってことか?」
エミリアは食べ物を口に入れようとした手を止め、少し間を開け、それを手元の袋に戻した。
「あんたって察しが良いのか悪いのか、わからないわね。今回は悪い方に行ったみたいだけど…そう、私の部下であり、仲間よ。あの死んだ二人もね。」
「すまない…そういうつもりじゃなかったんだ。」
二人の間に微妙な空気が流れたが、エミリアは静かに声を発した。
「世間知らずってことで許してあげるわ。あの4人は私のグループの結成当時からの仲間よ。亡くなった一人はとてもお酒好きでね、もう一人は人を驚かすのが好きな人だったわ…」
エミリアは少し早歩きをし、レイスの前に出た。
「エミリアのせいじゃないだろ?あの…そう!ロアウルフがやったんだから…」
「そういう不測の事態に備えるのもリーダーの仕事よ。終わりが見えて油断した私の責任。ただね、言ったと思うけどハンターは死がつきものなの。だからあの二人も覚悟はできていたと思う………私のこと冷たい人間だとおもった?」
エミリアは振り向かずに問い返した。
「いや、それを言うならさ……正直、あの場に着いて、二人の身体の傷からロアウルフの脅威を推察することができた、だからあの時最善の戦略を立てるのに役に立てた。それに俺も小さい頃から死と隣り合わせの中で生きてきたからな…そういう感情は俺のほうが薄いかもしれない。」
レイスはエミリアの隣に並んだ。
「それに、君はまだ大丈夫だ。二人の死をちゃんと受け止めて、涙を流せるんだから。」
エミリアは何も言わずに小さく頷く。そして二人はまた賑やかな大通りを歩むのだった。




