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14.そして彼は登録した

 広いエントランスホールには営業時間が終わる手前ということもあり、多くの人がごった返していた。

 床に大きな獅子が描かれたホールを抜け、エミリアとレイスは人混みを掻き分けながら受付へとたどり着いた。


「すいません!護衛任務と追加でロアウルフ討伐の報告に来ました!」


 エミリアがカバンからロアウルフから切り取った牙と何かの証明書のようなものを受付に渡した。

 受付の20代ほどと思われる、眼鏡をかけた知的な印象を受ける女性は証明書に目を通し、牙を受付の下から取り出した木製の容器に入れ、なにかメモをした紙を付けて横においた。


「お疲れ様でした。ではこちらが任務の成功報酬と討伐の報奨金です。」


 受付嬢はまた受付の下に手をやり、そこから袋を取り出し、差し出した。それを受け取りながらエミリアは話を続けた。


「ありがとうございます!あと、この人のハンター登録もしたいんですけど……」


 エミリアが話している途中にも関わらず、察した受付嬢は素早く書類とペンを取り出し差し出した。


「ではこちらに必要事項をお書きください。わからないところは抜かして結構です。」


 レイスはことの成り行きに任せる形で指示通りに書類に記入しようとしたが、ここで問題が起こった。……文字が読めない!

 言われてみればこの世界で文字を見るのは初めてだし、そもそもなぜ、違う世界のエミリアたちと自然に会話できているのか今になって不思議に感じた。


「どうしたの?まさかレイス!名前まで偽名だったの!?」


 エミリアが(いぶか)しげにレイスの顔を覗く。さすがに文字が読めないのはマズい。しかしいつものごとくというべきか都合良くというべきか、いつものアレが来た。

 頭の中が一瞬真っ白になったと思うと目の前にある文字がしっかりと読めるようになり、また書くこともできるようになってきている。


 この神からもらった能力…この世界の一般の知識を得るというのは、単語が引き金となり情報が頭に流れる仕組みのようだ。しかも違和感なく、まるで初めから知っていたように……

 レイスはじっと読めるようになった書類を見つめ、考え込んだ。


 知恵が入る度に、俺はこの世界に初めからいたような気になる。代わりに…元の俺の人生が夢だったように感じる…俺は……誰なんだ?


 レイスは一抹の不安を得る。そんな真剣な顔をする彼をエミリアは心配そうな声で話しかける。


「ねぇ、レイス…そんなに知られたくないなら無理に登録しなくていいわよ。」


「ああ…、いや、そうじゃないんだ。悪いな。大丈夫だ。」


 ハッと我に返ったレイスは書類の[氏名]と書かれた欄に名前を記入し、年齢や誕生日など書けるところも続けて書く。もちろん自分の年齢などは神からもらったものだ。


「こんなところかな?」


 レイスは横にペンを置くとその申請書をエミリアが横からかすめ取った。


「いい?ちゃんと不備がないか確かめるだけだからね?貴方のこと知りたいとかじゃないからね?」


「はいはい。」とレイスはエミリアが目を通すのを黙って待っている。


「17歳か…私と同い年なのね。ふむふむ…オッケーよ。」


 そう言って突き返された申請書をレイスは受付嬢に渡す。


「受理しました。レイス様、番号札を渡しますのでこれを持って射影機で写真を撮って待っていてください。」


 レイスは[4]と書かれた木札を渡される。


「射影機?写真?……ああ、なるほどね。」


 レイスは独り言を呟いたあと、エミリアに連れられ、射影室に移動した。

 部屋の前に立っていた少しぶっきらぼうな男に木札を渡すと部屋の中に案内される。するとそこは小部屋になっていて、椅子が一つ置かれていた。


「こちらに」と男に促されて座ると、そのままでと指示を受け男は部屋を出ていく。しばらく待つと、眩い光がレイスを襲った。

 思わずたじろいだレイスに部屋に入ってきた男は掌より周りほど小さな紙のようなものを渡す。それを見ると、そこにはレイスの姿があった。


「これが、写真か…池で見た俺そのままの姿だ…すごいな」


 レイスはその写真を眺めていると男に木札を渡され窓口に戻るように言われ、部屋を出るとエミリアが壁にもたれてかかるように待っていた。


「やっと終わったわね」


 エミリアが勢いよく壁から身を起こすとレイスと共に窓口に戻る。すると受付嬢はレイスから写真を受け取り手元で作業をしてから一枚の厚紙をレイスに渡した。


【ハンター証明書】


 これがこの世界で俺の身分を証明してくれるもの。この一枚の紙で真っ当な人間として扱ってくれるのだから不思議な気分だ。

 それだけハンターとハンターギルドの社会的信用度は高いということか……


「おめでとう。これであなたも晴れて一人前のハンターね!」


 エミリアが小さく拍手するが、レイスには腑に落ちないことがあった。


「ああ、ありがとう。でもこんな簡単に証明書なんて作ってもらえると思わなくてな…」


 するとエミリアは納得したような顔で答えた。


「なるほどね!まぁ普通は色々審査があったりするけど私を通して申請したからじゃない?私、魔道士としてこの街じゃ名前も通ってるし、何よりハンターグループのリーダーだからね。」


 また知らないはずの一般常識が頭に入ってくることにレイスは一瞬、立ち眩みを覚えた。


少し、説明が多くなってしまっていつもより文字数が多くなりました。

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