13.そして彼はたどり着いた
「長旅ご苦労様でしたロバスさん。どうぞお通りください。」
門番に見せていた身分証を返してもらいながらロバスは軽く会釈する。
ギギギ…と木の軋む大きな音を立てながら目の前の門が開くとそこは建物が並び立ち、多くの人が賑わう正に街が広がっていた。
「おお!上から見た時も凄かったけど…いやぁこれはこれは…」
レイスが街並みに圧倒されていると脳裏に知識が流れ込む。
【学園都市クレエア】
アヴァリス共和国内でも有数の都市で、国境付近のイオアリス地方の中心地でもある。人の往来も多く、物流や情報の集まる街であり、国最大の魔術学校クレエア学術院を筆頭に魔導士やハンターの育成機関が充実している。特産品のイチゴの実を使ったタルトが有名。
もう何度目かになるが、今回の知識が一番役に立ったかもしれないな。とレイスは【イチゴタルト】と書かれた看板を見ながら頷いた。
「さあ、こんなところに突っ立てたらじゃまになるわよ。って言ってもレイスはどうするつもりなの?図書館も育成所もこんな時間じゃ閉まっちゃってるかも。」
エミリアがレイスの背中を押しながらそう言うと、レイスは我に返った。空を眺めるともう太陽は落ち始め、薄っすらと夜が広がり始めていたのだった。
「ああ、そうだな…とりあえず宿を探すか。エミリア達はどうするんだ?」
「私たちはロバスさんを店まで送り届けるのが仕事だからね。その後はハンターギルドによって報告して、その後は教会かな…」
エミリアは寂しそうな目で荷馬車の方を振り返った。そこには弔うべき仲間が眠っている。
「邪魔じゃないなら…俺もついて行っていいか?いや、報酬が欲しいとかそんなんじゃない。ただ、最後まで見届けたいというか。」
レイスが言い淀むとエミリアはクスッと笑い言葉を返した。
「そんなこと思わないわよ。ただ珍しいなとは思ったけどね。ハンターが任務中に命を落とすことなんてよく聞く話だし。それにロアウルフ討伐の報酬はあなたにも渡すつもりだったからちょうどいいわ。」
ロバスも微笑んでいる。恐らく「構わないよ」と取っていいのだろう。後ろの兵士たちも頷いている。
「それは助かるよ。なら行こうか、ロバスさんの店に!」
レイスは歩き出したが、すぐに歩みを止め、振り返った。
「それで…どっちだ!?」
エミリア達はレイスが進んだ方向とは真逆の方へと歩き出し、レイスは慌てて後を追いかけた。
しばらく大通りを進み、そこから横道に入った「ハーベスト通り」に「ロバス魔導具専門店」はあった。街中ということもあり、小さい店もいくつかある中でロバスの店はそれなりに規模の大きい店構えである。
「それではみなさん。本当にありがとうございました。レイス君も本当に助かったよ。」
店に付く前に一度、教会に寄って遺体を預けたのであたりはすっかり夜の様相を呈していた。どこからか賑やかな音楽も聞こえ、飲食店から美味しそうな匂いも流れてくる。
「いえ、俺も一人で旅するより楽しかったですよ。また顔を見せに来ますね。」
「ロバスさん、また護衛がいる時は私に声かけてくださいね。」
ロバスは旅の仲間たちに手を振り、荷馬車を小屋に入れ、それを見送るとこちらも次の行動に移ることにした。
「エミリアとレイスはギルドハンターに行って来てくれ、俺達は先に教会に行って埋葬を手伝ってくるよ。」
それだけ言い残すと兵士二人はそそくさと歩き出した。一人がこちらを向いて親指を一瞬、立てたのをレイスは見逃さなかったが、意味はわからなかった。
「まったく…じゃあ行きましょうか。早くしないとギルドも閉っちゃうしね。」
「ああ。にしても…この街は夜になっても騒がしいというか明るいというか…」
レイスは前の世界でもこんなに明るい夜を体験したことはなかった。もっぱら、鍛錬したり、僅かな光を頼りに読書するくらいだったのでとても新鮮な気持ちになっていた。
「まぁ確かにこの街はそうね。活気があるっていう点で言えば王都よりあるかも。色んな国の人やモノが集まるから忙しいのよ。この街はね。」
エミリアはここへ来る途中の出店で買った手のひらに乗るサイズのイチゴのタルトを頬張りながら答え、歩き出した。
【クレエアハンターズギルド】はロバスの店からまた大通りに戻り、少し歩いた先の見通しのいい一等地に相応しい堂々とした石造りの大きな建物であった。
「ここが、ハンターズギルド…」
またもや圧倒されるレイスを尻目にエミリアはタルトの最後の一口を口に放り込み軽い足取りで入っていった。




