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8.そして彼女は語った

(よかった…この人も人間なのね)


 エミリアは少し安堵した。

なぜなら魔獣を狩ることを生業とするハンター3人が相手でもやっとだったロアウルフを自分の手を使わずに倒してしまった男が普通の反応を示したのだから。

 それにしても不思議な男だ。あの場で咄嗟の機転を利かせるあたり戦いの経験値はあるのだろう。

 なのにこの男は有名な魔王の話を知らないとは。どんな辺境で戦ってたのか分からないが、魔王が封印された話なんてその辺の子供でも知っている。

 エミリアが話を続けようとしたが、レイスは驚きとともに何かを考え、そして独り言をつぶやいていた。


「いや、まさか…。あっ、そんなことに…」


 今話しかけるのは迷惑か?いや、聞いたのは向こうのほうだ構わず話してやる。これは、そう私が倒せなかったヤツを倒されてムカついてるとかそういうのではない。そう断じて!

 エミリアはレイスを一瞥したあとすぐに言葉を続ける。


「何も知らないって前提で話すと…」


「500年前、勇者レグルスと人類同盟軍との戦いの末、魔王は倒され、封印されたって話か。」


 エミリアが話そうとした瞬間、レイスはこちらも見ずにまるで自分に説明するように遮った。


「そ、そうよ?なんだあなた知ってたのね。なら何で魔王のことを知ろうとしたの?」


 少し意表を突かれたエミリアはなんとか質問を返した。


「いや、まぁこっちの話でな…。まさか魔王が倒され…ん?なぁエミリアさん。なんで倒されたで終わらず、封印なんだ?」


 レイスはハッとした顔でこちらを見ながら再び問いかけた。


「ああ、魔王はそうね。少しややこしいから端的に言うと、()()()()()()。だから封印するしかないの。だって魔力そのものなんだから。」


 エミリアが答えると同時にレイスは再び考える素振りを見せたが、すぐにこちらを見返す。


「それは、どういうことなんだ?それは俺も知らない情報だ。わかる限り詳しく教えてくれないか?」


 エミリアはその問いに少し自慢げな表情を浮かべながら話し始めた。


「そうね。普通は知らない話だから。魔王は意思を持った魔力の塊であり魔力を司る存在。魔力の王で魔王なのよ。だから倒しても消滅はしない。だって魔力は循環するものだから。そしていずれ復活する。それを防ぐ為に当時の人達は魔王の元となる魔力自体を何かに封印して保管しているのよ。」


 エミリアが説明するもののどうやらレイスはさっぱりだという顔をしている。どうやらこの男の知識は一般人レベルかそれ以下…本当にどんなところで生活していたのか。


「ああ、えっとね?どう説明したらいいかな。そうね、そもそも魔力っていうのは例えば火を使うための火の魔力だったり水の魔力っていうのがあるのよ。その中の一つに魔王になる魔力っていうのがあって、それが成長すると魔王になるの。」


 エミリアが身振り手振りを交えながら説明するとレイスもその動きに応じて頷く。どうやらニュアンスは伝わっているようだ。


「なるほど。まだ分からないことは多いが理屈はわかった。ありがとうエミリア。」


 レイスは笑顔で感謝を述べるとエミリアも「どういたしまして」と笑顔で返した。

すると荷台の方から雇い主の声が聞こえた。


「レイス君、魔王や魔力について調べたいなら学園都市ほどうってつけの場所はないぞ。着いたら図書館に行くといい。」


 ロバスは荷台から顔だけ出す形で提案をしてきた。確かに全ての知識が集まるという学園都市なら私の話よりも、もっと詳しく知ることができるかもしれない。

 それに応じるようにレイスも頷いた。


「それじゃあ、あなたの質問に答えたんだから次は私の番よ。あなたは一体何者なの?」


 レイスはその質問に困り顔をこちらに見せたのだった。

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