廃初の一、顛倒の初まり
始まりの世界はとても黒く、何も無かったらしい。
眼下に広がるどこまでも澄んだ青空も、風に靡く森林草も初めは存在すらしていなかった。
だがどれも口伝だ。真実など誰一人として知覚していないだろう。
観測してもいない事をあたかも存在したと決めつける。なんと傲慢なことか。
知識欲から生まれた暴君。
合理性を求めた愚者。
我欲を満たす賢者。
塰から生まれた何も持たない劔。
どいつもこいつも考え無しの大馬鹿共だ。知識はあれど知恵はどこか欠けている節がある。
世界に存ずる類は少ない。
絶えない故か、種は増えない。
世界の進化は停滞してしまった。
それでも死なない、許されない。
こんな世界から消え去れたらどれほど幸福だろう。
怒は遥か昔に風化して跡形も存在していない。
劔であれば死ねるだろうか?いいや不可能であったな、忘れていた。
黒のみが支配する世界は終わらない。
私が外側に立ってからどのくらいの時が失われただろうか。資格は与えた、だがまだ来ない。待てども待てども失われるだけ。
私は、間違えたのだろうか。
失敗だったのだろうか。
良かれと思っての行動が、歪めてしまったのだろうか。
私が行動する前から歪んでいたのだろうか。
歪みとはなんだろうか。
歪さとはなんだったのだろうか。
安心興奮幸福名誉尊敬憧憬勇気期待優越愛よりも怒り諦め嫌悪後悔恐怖不快が占める方が圧倒的ではないだろうか。
理性は、過ちだったろうか。
私が歪めなければ怒りはなく、嫌悪も恐怖も無かっただろうか。幸福を知らなければ生物は幸福を求めなかっただろうか。私の歪みに順応する生物を観測して吐き気が止まらなかった。幸福を求めただけで後悔と嫌悪を抱えた生物は見るに耐えない程醜いと思ってしまった。
誰か私を裁いてくれ、頼むから殺してくれ。
無情に殺してくれ、厳しく殺してくれ、生物の数だけ殺してくれ。醜く酷く残酷に殺してくれ。原型留めなくなるまで殺してくれ。死したら殺してくれ。頼むから殺してくれ。殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺して殺して殺し尽くしてくれ。
死して私は世界を正す。
死にたい、死なせて。
お願い、お願いだから、私を助けて。
何もない世界の外側。
誰の耳にも届く事ない慟哭は已まない。




