第3章:日本は、できる範囲で“筋を通した”──それが現実解
アメリカが「夢に殉じた」なら、
日本は「現実に従った」。
それが、レールガンという技術に対する、
日本独自の静かな向き合い方でした。
日本が選んだのは、ズムウォルト級のような主砲化でも、超長距離打撃でもなかった。
目指したのは──
「対空迎撃用CIWS(近接防御火器)への応用」
それだけでした。
この選択の意味を、少し掘り下げましょう。
・レールガンの弾体は、火薬を使わず、電磁力で金属塊を撃ち出す。
・しかし、加速対象が重いほど、レールにも電源にも耐久にも大きな負荷がかかる。
・だから日本は、→ 小さく、軽く、速く。
それだけを目指しました。
具体的には──
・砲弾サイズ:40mm級
・弾頭重量:約320g〜1kg程度
・射程距離:数km〜十数km
重い弾を遠くへ飛ばすのではない。
軽い弾で、目の前に迫る脅威を、確実に撃ち落とす。
それが、日本のレールガンの設計思想でした。
この「割り切り」は、単なる妥協ではありません。
レールガンの構造そのものへの理解に基づいた、理に適った選択だったのです。
思い出してください。
レールガンでは──
・加速される弾体の重量は三次元(体積)で増える。
・しかし、レールが受け止める接触面積は二次元(長さ×幅)でしか増えない。
つまり、
重くなるほど、加速負荷は爆発的に増えるのに、
支える面積はほとんど増えない。
この構造的不均衡を無視して、重量弾を撃とうとすれば、
レールは削れ、焼け、歪み、兵器は“使えない夢”に堕ちる。
日本は、それを知っていた。
だから、あえて「軽さ」に賭けたのです。
小さい弾体、小さな加速負荷。
必要最小限の電力、必要最小限の耐久設計。
それでいて、必要十分な迎撃性能。
すべてが、「できる範囲」で最大の効果を狙う」設計になっていました。
さらに、現時点で報告されている技術的達成もあります。
・レールは、120発発射しても性能劣化なし。
・海上発射試験もすでに実施済み。
つまり、レール寿命という最大の壁も、
「重さを抑える」という合理的な設計判断によって、
一歩ずつ、確実に超えつつあるのです。
ズムウォルト級が「重力に抗う夢」を追いかけたなら、
日本のレールガンは、重力を受け入れた現実解です。
夢を否定しない。
でも、現実からも目を逸らさない。
──それこそが、日本がレールガンに賭けた、
小さく、けれど確かな一歩だったのです。