第1章:そろそろ、実用化が“現実”として見えてきた
2025年4月。
試験艦「あすか」に搭載された日本のレールガンが、その姿をついに公に晒しました。
それは、かつて夢に語られた未来兵器──超電磁砲が、
「試作品」ではなく、「運用可能な装備品」として形になりつつあることを、
静かに、しかし確実に世界に示す一瞬でした。
写真に映るレールガンは、もはや仮設の実験機器ではありません。
厚みのあるシェルに守られた砲身、冷却・絶縁を意識した構造、運用を前提とした耐久性設計。
それは、海上という厳しい環境下での実戦投入を見据えた、
“整った”兵器としての風格を宿していました。
もはや「未来兵器」という響きは、ここにはありません。
あるのは、「現場に降りてきた技術」、
そして「限られた現実条件の中で、勝ち筋を見出した成果」です。
これまで、レールガンといえば「SFの夢」、
もしくは「いつかどこかで、という永遠の未完計画」と思われがちでした。
実際、かつてアメリカは、ズムウォルト級駆逐艦にレールガンを搭載し、
主砲として運用するという壮大な構想を掲げました。
しかし、火薬を捨て、電磁加速に頼り切るために求められたエネルギー、耐久性、コスト、すべてが
当時の技術では埋めきれない断絶に直面し、計画は事実上の頓挫を迎えました。
「アメリカですら諦めた。ならば日本も、追いかけるのは夢想ではないか?」
そんな声が、時折聞こえてきたことも確かです。
しかし──
それは、レールガンという技術に対する誤解から生まれたものでした。
レールガンそのものが無理なのではありません。
"何を求めるか" を間違えたときに、無理になるのです。
今、ここにある日本のレールガンは、
壮大な夢をそのまま追いかけたものではありません。
「現実にできることは何か」──その問いに忠実に応えた結果、
一つの“撃てる兵器”として形になろうとしているのです。
それは、空に向かって撃ち上げる大砲ではありません。
敵艦を一撃で沈める主砲でもありません。
それは──
最後の防衛線を撃ち抜くための、狙撃兵器。
精度、連射性、耐久性、安全性。
「継戦能力」という地味ながら最も現実的な価値を持って、
この超電磁砲は、いま、静かに実用域へと歩み始めました。