戦火の出会い
戦火が絶えない帝国の一角、辺境の村にエマという少女がいた。戦災孤児である彼女は、幼い頃から一人で生きてきた。唯一の心の支えは、亡き母から教わったパンを焼くことだった。
今日もまた、村は戦火に包まれていた。真っ赤な夕日が、血の色のように空を染める。エマは、焼け焦げたパンを握りしめ、瓦礫の中に蹲っていた。
「こんな世界、もう嫌だ…」
彼女の呟きは、戦火の轟音にかき消される。その時、瓦礫の山が崩れ、一人の青年が現れた。
「大丈夫か?」
青年は、帝国騎士のレオンだった。彼は、敵国の襲撃から村を守るために戦っていたが、深手を負い、倒れてしまったのだ。
「あなたは…?」
エマは、血まみれのレオンに戸惑いながらも、介抱を始めた。彼女は、持っていたパンをレオンに分け与えた。
「これは…?」
レオンは、焼け焦げたパンを口に運び、驚いた。
「母が教えてくれた、大切なパンなんです」
エマは、悲しみを押し殺し、微笑んだ。
「ありがとう。君のおかげで、生き延びることができた」
レオンは、エマに感謝の言葉を述べ、その場に倒れ込んだ。エマは、レオンを介抱しながら、彼の過去、そして彼が抱える戦火を終わらせるという理想を知る。
「私に、何かできることはありますか?」
エマは、レオンの理想に惹かれ、彼と共に戦うことを決意する。二人は、身分違いの壁、そして戦争という残酷な現実を乗り越え、互いに惹かれあっていく。
しかし、二人の前には、レオンの婚約者である貴族の令嬢クロエ、そして謎めいた過去を持つ青年ダミアンなど、様々な障害が立ちはだかる。
赤い夕日が、二人の愛の始まりを告げる。しかし、その愛は、血塗られたパンのように、残酷な運命に翻弄されていく。