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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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心臓が早鐘を打ち始める

 ホワイトホールへの移動を始めると。

 心臓が早鐘を打ち始めている。


 本来の婚約破棄と断罪は、卒業式の後に行われる舞踏会で行われるのだ。その場合、冒頭の卒業生の挨拶で、レイモンドはいきなり婚約破棄を始める。


 今回はパーティーであるため、校長先生が乾杯の音頭をとるぐらいで、挨拶などは最後に行われることになっていた。


 いつ婚約破棄と断罪を始めるのか。

 パーティーの最後なのか。


 分からないことで、さらに不安は高まっていた。


 不安により、鼓動が速くなっている。

 さらに自分の手足が冷たくなっているように感じた。


「ジョーンズ公爵令嬢、大丈夫です。私がついています」


 キルリル皇太子は私の計画を知らない。

 いざとなれば自分が守る。そう決意しているからこそ、自身がついていると言ってくれていた。


 あくまで誠実に私を守ろうとしてくれるキルリル皇太子を欺くことには、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「キルリル皇太子殿下。本当に……ありがとうございます。殿下がいることで、ここまでくることができました。心から感謝しています」


「どうしたのですか、ジョーンズ公爵令嬢? そんな風に改まって。昨日今日の仲ではないのです。もう半年も共に過ごしているんです。困った時に助け合うのは、お互い様のことですよ」


「半年……。そうですね……」


 そう応じながら、半年前を、夏の日々を思い出してしまう。


 ジェラートの食べさせ合いで火花を散らしたり。

 馬術の腕を競い、夏の離宮でみんなで過ごしたり。

 剣術では熱戦が繰り広げられ、勝利したレイモンドは――。


――「リナ。これは僕の誓いのキスだ。永遠にリナだけを愛すると誓うよ」


 レイモンドの言葉を思い出し、断ち切った気持ちが溢れそうになる。

 

 レイ、お願い!

 戻って来て!

 ソフィーのところへは行かないで。

 私を一人にしないで。

 死にたくない。あなたと生きたい――


「ジョーンズ公爵令嬢、着きましたよ? レストルームに行かれますか?」

「いえ、大丈夫です。つい余所見をしていました」


 天井を見上げ、眩しい程のシャンデリアに目を細め、深呼吸を繰り返す。




 昂っていた感情はようやく落ち着かせることができた。


 大丈夫。

 感情のコントロールは王太子妃教育でも習っている。


「ジョーンズ公爵令嬢、素敵なドレスですね」

「キルリル皇太子殿下も、大変素晴らしい衣装ですわ」


 ホワイトホールへ到着すると、クラスメイトから声を掛けられた。

 しばらく談笑をしていると、パーティーの開始を告げる鐘が鳴る。そしてホールの上座に設けられた壇上で、校長が挨拶を始めた。それを私はホールの中央のやや端で、キルリル皇太子や他のクラスメイトと共に聞くことになったが……。


「今宵は王太子殿下より、皆様にお伝えしたいことがあるそうです」


 まさかの冒頭での婚約破棄なの!?


 これには衝撃を受けることになる。しかしレイモンドは校長の合図に従い、ホールの中央へ向かっていた。


 ブロンドがシャンデリアの明かりを受けて煌めく。

 その碧い瞳は凛として強い意志を感じさせる。

 この表情は……。


 婚約破棄をするんだ。

 そして断罪も……!


 レイモンドはまずはこのパーティーの開催を祝う言葉をサラリと述べ、そして私を射貫くように見る。


「リナ・アンジェラ・ジョーンズ公爵令嬢。君との婚約の件で話したいことがあるんだ」


 心の準備などあまりできていないが、もう待ったなしだと分かっていた。


 心臓がバクバクしている状態で、手も震えているが、なんとかドレスのポケットの小瓶を探り当てる。


「ジョーンズ公爵令嬢。話、聞いているかな?」


 ポケットの小瓶を手でぎゅっと握りしめた瞬間。

 震えはもう止まっている。


 予定調和で悪役令嬢になるなんてばかばかしい。シナリオの強制力だか、見えざるゲーム世界の抑止力とか、そんなものには屈したくない!


 ぎゃふんと言わせたい。

 私を悪役令嬢に仕立てようとするこの世界に!


 ドレスのスカートのポケットに忍ばせていた小瓶を取り出す。


 悪役令嬢になる定めからは抗えない。

 これから私は婚約破棄と断罪を告げられる。


 それならばこれが()()の反逆だ。

 どの道、断罪されたら絞首刑。死ぬしかないのだ。

 しかも宮殿前広場で絞首刑だなんて。


 断罪される前に私は死ぬ。


 取り出した小瓶の栓をとると、一気に劇毒を飲み干す。


 鼓動が激しくなり、全身が熱くなる。

 脳がカッとし、めまいも感じていた。


「リナっ!」


 レイモンドの叫び声が聞こえ、瞼が閉じる。

 世界は闇に包まれ、無音の世界へ突入する。


 悪役令嬢、リナ・アンジェラ・ジョーンズ公爵令嬢、十六歳。王太子に婚約破棄され、断罪される寸前に劇毒をあおり、死亡。


 悪役令嬢が即死することで、王太子とヒロインのエンディングがどうなったのかなんて、知るわけがない。ただ、私を悪役令嬢に仕立てようとするこの世界をぎゃふんと言わせ、ざまぁすることはできたと思う。

お読みいただきありがとうございます!

本日もよろしくお願いいたします☆彡

次話は19時頃公開予定です~

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