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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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求めるもの

 ロダンの元へと馬車を走らせ、窓から見える景色をぼんやり眺める。


 最初は王都らしく、貴族の邸宅や商店が見えていた。だが次第に沿道に見える景色は、冬枯れした木々や枯草の生い茂る平原。さらには沿道からかなり離れた場所に、石造りの家がポツン、ポツンと見える風景へと変化する。


 冬の王都の郊外へ向かう景色に、特筆すべきものは特にない。ただ沢山の荷馬車とはすれ違う。


 王都ではホリデーマーケットが開催され、とても賑わっている。そのマーケットで販売する品が運ばれているのだろう。


「お嬢様、これは……墓地でしょうか」


「そうね。昔、疫病が流行し、大量の死者が出た時、この辺りに墓地を作ったと習ったわ。でも王都の中心部から離れている。今となっては足を運ぶ人が少ないのかもしれないわね。それでも墓守りがいるから、荒れてはいない。ただ……とても寂れた雰囲気だわ……」


 沢山の墓石が見え、葉が落ちたトネリコの木々は、なんだか寂し気に見える。私の心象風景を具現化したかのようにも思えてしまう。


 そんな墓地を過ぎ、さらに小川が流れる辺りに着くと、一軒の古びた小屋のような建物が見えた。煙突から煙が出ており、人が住んでいると分かる。そばには厩舎らしき掘っ立て小屋もあり、鶏や豚の姿も見えた。さらにその周囲には菜園も広がっている。


「お嬢様、おそらくあそこですね」


「そうね。自給自足であの場所で暮らしているのね、きっと」


 こうしてロダンの家の近くで一旦、馬車を止める。

 御者の一人が侍女と共に、ロダンの家へと向かう。


 家の扉を従者がノックし、しばらくすると……。


 修道士と聞いていたが、私のイメージとはかけ離れた人物が、家の中から現れた。


 白に近いプラチナブロンドの長い髪は、左で束ねてゆるく三つ編みにしている。瞳は深みのあるモスグリーンで、体格はがっちりしていた。着ているのは、緑が掛ったグレーの修道服で、ベージュの腰帯をつけている。


 “はずれ修道士”と言われるだけあり、修道院を出ているが、装いは修道士そのままだった。


 そのロダンは侍女と御者と話した後、こちらを見た。要は馬車の中で窓からそちらを見る私の方を見ている。


 じっと私を見て、頷く。


 「話を聞こう」の合図に思えたので、護衛の騎士に手伝ってもらい、馬車を降りる。この日の私はアイリス色のドレスに濃いグレーのロングケープを羽織っていた。


 冬の弱い陽射しの下、ロダンの家へ向かうと、「狭いところですが、どうぞ」と中へ入るよう促される。


 本来、侍女と護衛の騎士も中に入るが、ここは扉の外で待機してもらう。


 「貴族のお嬢さんなのに。自分と二人きりでよいのですか?」とロダンは肩をすくめながら尋ねる。


「いまだ修道士の服を着られているということは。修道士としてしゅの教えを守る気持ちがあるのでしょう。女子供に悪さをしない方だと信じています」


 私の言葉にロダンはフッと口元に笑みを浮かべ「なるほど。なかなかに肝が据わった令嬢のようだ。こちらへお座りください」と、狭い部屋の中央にあるテーブルへと案内される。


 ソファはなく、テーブルのみで、厨房と居間の区別はない。暖炉があり、そのすぐ横は水場になっていた。さらに窓際に置かれているチェストには、沢山の薬草らしき植物が並んでいる。天井からは沢山の草花が吊るされていた。


「遠路はるばるよくいらっしゃった。こんなところまで来るということは、よほどの用件があるのでしょうね」


 そう言いながらロダンは、マグカップにブラックティーを注ぐ。


「はい。引き受けていただけたら、報酬としてこちらをお渡しします」


 テーブルに持参していた巾着袋を置くと、ゴトリという音がする。それだけでこの巾着袋に大金が入っていることは伝わるだろう。


「ほう。相当な報酬ですね。これは何か危ない橋を渡ることになるのでしょうか」


 ロダンは少し茶化すような言い方をして、マグカップを私の前に置く。


「危ない橋にはなりません。今日、私がここに来たこと。その理由は人前で緊張しない薬を調合してもらうためです。もし問われても、同行した侍女や御者、護衛の騎士も、そう答えるはずです」


「本当は別の薬を依頼するつもりで?」


 私の対面に置かれた椅子に座ると、ロダンは上目遣いでこちらを見る。


「はい。これから話すこと。それはにわかに信じられないことだと思います。ですが新聞で後日、事実であったと確認できるでしょう」


 そこで私は身分を伏せつつ、とある高位な立場の令息と婚約していること。だがその令息は別の令嬢に心を奪われてしまった。そしてその令息は私と婚約破棄し、さらには令嬢が集めたでっち上げの証拠を突きつけ、私に罪を問おうとしていることを話した。


「なるほど。それは実に理不尽な話だ。浮気相手と結ばれるため、お嬢さんに無実の罪を着せるなんて。その令息と令嬢を懲らしめるための、薬が欲しいのか?」


「いえ。違います。自分のための薬が欲しいんです」


「自分のための薬……?」

お読みいただきありがとうございます!

次話は明日の12時頃公開予定です~

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