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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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恋しい……!

「……リナはそろそろ王宮が恋しいのでは?」


 国王陛下のこの言葉に、涙が出そうになる。

 王宮が恋しい。

 王宮が、というより、私にとってのもう一つの家族である国王陛下夫妻、レイモンド、アンジェリーナ王女のことが恋しくなっていた。


 ここで私が恋しいと答え、王宮に戻りたいと言ったら……。カウントダウン・チャリティーコンサートのパーティーで起きる、婚約破棄と断罪は起きない――なんてこと、あるのだろうか?


 ある……かもしれない。


 でもこの世界はきっと、私が婚約破棄と断罪されないことを、許してはくれない。


 カウントダウン・チャリティーコンサートのパーティーで、婚約破棄と断罪をされなくても。そもそもこの二つが行われるのは、ゲームの通常の進行なら、卒業式の後に開催される卒業舞踏会だった。


 それが早まった理由。それは、私もそうだが他のキャラクターもシナリオから逸脱した行動をとっている。ヒロインであるソフィーを助けるため、この世界が仕組んだとしか思えなかった。


 世界が望む、ヒロインの幸せ。

 この世界から排除したい、悪役令嬢。


 どう考えても一度回避できても、運命はつきまとうだろう。つまり婚約破棄と断罪の場は、いくらでも用意されてしまうはず。


 それでも……。


「……はい。皆さまのことが恋しいです。王宮へ帰りたい……」


 思いがけず涙がポロッとこぼれてしまい、慌ててナプキンで目元を押さえる。


 こんな風に人前で感情を吐露すること。

 それは好ましいことではない。

 慎むべきことだった。それが分かっているのに、涙をこぼしてしまったのだ。


「おおお、そうか、そうか。分かった、リナ。早急に王宮へ戻れるよう、手配しよう。みんなリナがいないこと、寂しく感じていた。大丈夫だ。すぐに戻れる」


 国王陛下は私が泣いたことを咎めず、注意もせず、純粋に家族として受け止めてくれた。さらに。


「わたくしもリナがいなくて寂しかったのよ。王宮へ戻ったら一緒にお茶をしましょうね」


「お義姉様、私はマークの看病もあり、まだ王宮へは戻りません。でもお義姉様と王宮で再び暮らしたいと思っています!」


 王妃殿下やアンジェリーナ王女もこう言ってくれた。


「僕もリナが王宮へ戻ること。待っていた。年が明ける頃にはすべて落ち着いている。何の問題もなく、帰館できるよ」


 レイモンドがえくぼを見せる爽やかな笑顔でそう言った時。背筋が凍り付いた。婚約破棄と断罪を年末にしようとしているのに。年が明けたら問題なく戻れると口にするなんて。


 もうレイモンドは以前の彼ではない。ヒロインに攻略され、リナへの愛を失ってしまった……。


 もう一度、涙が溢れそうになるが、それは「はい。王宮へ戻ること、楽しみにしています」という言葉と共に呑み込んだ。


 ◇


 マークのように大怪我を負った時。

 きっと人は死を自覚する。


 衝撃を受け、そんなまさかと思い、理不尽さに怒り、なんとか生きられないかともがくと思う。だがその怪我が致命的だったり、不治の病と分かれば、受け入れるしかない。


 今の私はまさにそんな状態。


 キルリル皇太子という生き残りのカードを切る――そんな自己中心的な気持ちにはなれない。死を受け入れつつ、どうしても許せないという気持ちがわく。それはヒロインに対してよりも、この世界に対して、だ。


 レイモンドという、女子の夢を具現化した王子様の婚約者にしておきながら、ヒロイン登場と共に切り捨てる扱い。冷静に考えたら、婚約者のいる王族の心を盗むなど、ヒロインの方が悪女なのに。悪役令嬢だからと、断罪されることの理不尽さ。


 このゲームの世界に反逆したい。


 その気持ちを私は募らせる。


 期末試験が落ち着き、授業も休み前のまったりムード。建国記念日を踏まえた祝賀行事もあったが、それは五歳以降、毎年経験しているもの。それらをそつなくこなし、私は水面下で動く。いつもと変わらぬ様子で合唱の練習に参加し、ホリデーシーズン休暇に入り、時間ができると、ある人物を探す。


 ある人物。


 それはお金で毒薬を手配できる人間のことだ。


 絞首刑で空気を求め、苦しみながら断罪されて死ぬなんて、まっぴらごめん。しかもゲームのシナリオに定められた時間になんて、死んでやるものかと思った。


 この世界への反逆を決めた私は、自分の死を、自らでコントロールすると決めたのだ。


 シナリオ通りの絞首刑ではなく、毒薬をおあり、死ぬこと。毒薬を飲むタイミングは私の自由。これこそが、私のこの世界への最期の反逆だった。


「お嬢様。特殊な薬を調合してくれそうな人物、見つかりました」


 侍女には、「人前で歌うことに、とても緊張してしまうの。でもそんなこと、王太子の婚約者として誰にも言えないわ。だから薬を注文したいの。緊張を緩和させるような特殊な薬を作らせたいの。匿名の依頼を受けてくれる、口の堅い薬師はいないかしら?」と相談していたのだ。


「ありがとう。その薬師、裏社会の人間ではないわよね?」


「裏社会の人間ではないと思います、その経歴からも。通常では『無理だね』と断られてしまう依頼も、大金をはずめば受けてくれるだけと聞きました。生きて行くためにお金は必要なので、少しイレギュラーな依頼でも受けてくれるようです」


 裏社会で生きる人間であれば、いくらでも毒薬は用意してくれるだろうが、足がつくとまずい。王太子の婚約者が裏社会の人間と取り引きしていたとバレれば、王家の不名誉となる。私は……王族のみんなをもう一つの家族と思っていた。彼らに迷惑をかけたくない。


「それでその薬師はどんな方なの?」

「はい。ロダンという名の元修道士です」

お読みいただきありがとうございます!

次話は明日の14時頃公開予定です~

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