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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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突然の訪問

「こんな時間に申し訳ないです」


「いえ、まだ寝間着にも着替えていなかったので、大丈夫ですよ」


 この世界、完全に寛ぐ寝間着への着替えは、ベッドに入る直前に行う。今はキルリル皇太子も私も、厚手のナイトガウンを着ている。家族間や屋敷で寛いでいる時はこの姿なのだから、人前に出られない姿、というわけではなかった。


「何も言わずにおこうと思っていました。ですが眠ることになり、そばに侍女やメイドもいない状態になった時。いろいろな気持ちが渦巻き、眠れなくなるのでは……そう思いました」


 キルリル皇太子はよく分かっている。

 まさにその通りだと思う。

 夜、ベッドに入って眠れない。

 その状態に今晩なりそうだったのだ。


「私相手に全てを吐き出し、楽になってください……とは言えません。ですが少しでもジョーンズ公爵令嬢の気持ちをほぐせたらと思い、来てしまいました」


「ありがとうございます。ではラベンダーティーでも飲みながら、少しおしゃべりに付き合っていただけますか?」


 「勿論です」とキルリル皇太子は応じてくれる。


 せっかく来てくれたのだ。ここは全てを明かさずとも、部分的に話してもいいだろう。


 誰かに話すことで気持ちが楽になる……それは事実だと思う。


「今日学校で、衝撃的な会話を偶然聞いてしまったのです」


「そうなのですね」


 対面のソファに腰を下ろしたキルリル皇太子は、落ち着いた様子で話を聞いてくれている。


「もしかしたらそうなるかもしれない。そんな予想はしていました。心の準備ができていても、いざ直面するとショックだったというか……」


「それが原因で、いつもと様子が違っていたのですね」


「はい。そうなんです」


 キルリル皇太子はラベンダーティーを一口飲み、ゆったりした様子で私に尋ねる。


「ショックだった出来事は、起きてしまったことですよね。それはどうにもならない。なかったことにはできないでしょう。ならばその出来事を踏まえ、ジョーンズ公爵令嬢は何を望みますか?」


「私が望むこと……ですか?」


「はい。望むことは自由ですから。何を願ってみてもいいと思いますよ。起きた出来事は、なかったことには出来ないですが、望むことは未来につながること。自由です」


 ソフィーがレイモンドに告白した事実は変えられない。そして過去には戻れないのだから、その事実は変えられないのだ。


 ならばソフィーがレイモンドに告白したことを踏まえ、私は何を望むのか。


 正しいシナリオの流れで動くレイモンドに、それに抗い、私を選んで欲しいのか。とっとと婚約破棄して、私を自由にして欲しいのか。ヒロインであるソフィーがいなくなればいいのか。


 攻略対象であるレイモンドは、悪役令嬢である私以上に制約があると思う。抗うのはまず無理だろう。そして婚約破棄は間違いなくなされる。


 ソフィーがいない世界。それはない。ヒロイン不在では、この世界がそもそも成立しないと思う。


 そうなると望むことは……断罪をされないこと。でもそれをキルリル皇太子に話しても……。


 ――「どうせ転生者や転移者でなければ、話したところで理解してもらえない」


 ヒロインの言葉を思い出していた。


 確かに荒唐無稽で理解は……出来ない気がする。


「私はただ生きたい。それだけです。望むことは」


「!? そんな、生死が関わるようなことが、学園で起きたのですか!?」


「そうですね。ただ、私は何もしていないんです。大切なものを奪われようと、我慢しています。だから命まではとらないで欲しい。生かして欲しい。生きたい──それだけです」


 キルリル皇太子は、そのアイスブルーの美しい瞳を大きく見開き、絶句している。


 火災があり、もし王宮にいたら、大変なことになっていた。でも実際はキルリル皇太子の屋敷に避難して、事なきを得ている。命の危機に瀕するような事態に、私は遭遇していない。


 それなのに死を意識した発言。


 キルリル皇太子が衝撃を受けても当然だった。


「公爵令嬢であり、王太子の婚約者である君を死に追いやるなんて、そんなこと……簡単にできることではありません」


「そうですね。ですからこれは戯言です。忘れてください」


 そこでキルリル皇太子が突然立ち上がるので、びっくりして身を固くすると、彼は私のそばに跪く。


「レイモンド王太子殿下は、君を守ると誓っていました。ですがもしその誓いが破られることがあるならば。その時は私がジョーンズ公爵令嬢を守る剣となります。たとえ相手がこの国の獅子(ライオン)の子であろうと。私は君を守ると誓います」


 そう言うとキルリル皇太子は、騎士が行う令嬢(レディ)への誓いをする。つまりはナイトガウンの裾を持ち上げ、そこに自身の額を押し当てたのだ。


 これには驚き、言葉が出ない。


 まさかヒロインの攻略対象であるキルリル皇太子から、こんな誓いを悪役令嬢の私が受けるなんて! ここが王太子攻略ルートだからとは言え、イレギュラー過ぎる……!


 ただもしもが起きた時。

 キルリル皇太子は私を助けてくれる……!

 それはとても心強い申し出であった。


「ありがとうございます。キルリル皇太子殿下。そのお気持ちは有り難く受け取らせていただきます」

お読みいただきありがとうございます!

本日もよろしくお願いいたします☆彡

次話は18時頃公開予定です~

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