表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/122

想像してはいけない

 動いて、私の足!

 そう願うが足は動かない。

 それどころか知覚が研ぎ澄まされている気がする。


「だからこの言葉を伝えたら、私のこと、抱きしめてくださいね!」


 想像してはいけない。

 レイモンドがソフィーを抱きしめる姿を。


 でもそれは無理なこと。


 だって前世でプレイしたゲームの中で、レイモンドがソフィーを抱きしめる描写、それは何度となく登場しているのだ。抱きしめる……以上のシーンだってあった。


 それが今……。


「……なるほど。いいよ。その言葉、待っていたからね」


「ふふ。喜んでくださいね、殿下」


 レイモンドがフッと笑った気配。


 サラサラのブロンドが揺れ、碧い瞳は煌めき、えくぼがうっすらと浮かぶ様子が目に浮かぶ。


「レイモンド王太子殿下」


 ピンクブロンドに、明るいピンク色の瞳のソフィー。愛らしい、この世界のヒロイン。両手を後ろに揃え、レイモンドの顔を覗き込むようにする姿が、脳裏をよぎる。


 何度も、ゲームで見た場面(シーン)だ。


「私、王太子殿下のこと、大好きです!」


 その一言が「よーいドン」の合図だったかのように。私は階段を全速力で駆け上がった。


 息が切れる。


 新たに仕立て直したハイウエストの制服のスカートが、大きく乱れていた。しかしそれを気にして立ち止まることなく、一気に四階まで階段を駆け上がる。


 さらに勢いのままで、3年C組に飛び込む。


 三学年合同の、ボランティア委員による打ち合わせ。二十名近い生徒が、驚きで私を一斉に見る。


「ジョーンズ公爵令嬢、何かありましたか!?」


 キルリル皇太子が驚愕の表情で席を立ち、私に駆け寄った。


 ◇


 ゲームのシナリオ通りの展開。


 ソフィーは攻略対象であるレイモンドに、遂に告白をした。告白をされたレイモンドに「ノー」の選択肢はないはずだ。


 告白直前にレイモンド自身が「……なるほど。いいよ。その言葉、待っていたからね」と言っていたのだから。


 告白を受け、レイモンドは約束通り、ソフィーを抱きしめたはず。


 爽やかなあのグレープフルーツの香りを感じながら、レイモンドに抱きしめられたソフィーはきっと。自らの腕を伸ばし、レイモンドの背中に腕を回し、力を込めただろう。そんなソフィーをさらにレイモンドは強く抱きしめ……。


「お嬢様、大丈夫ですか? どこか体の具合でも」


「平気よ。少し疲れただけ。ごめんなさい。ナイトティーは残すわ。もう休むわね」


 カチャリと音を立て、ソーサーにカップを戻し、テーブルに置くと、私はソファから立ち上がった。するとそこにノックの音が聞こえる。


「キルリル皇太子殿下です。もし会いたくなければ、無理に会わないでいいそうですが……」


 キルリル皇太子は礼儀を大切にするので、こんな時間に私の部屋を訪ねたことはない。それを破ってまで訪ねてくれたのは……私の様子を心配したからだろう。


 勢いのままで扉を開け、3年C組に飛び込んだ私は、キルリル皇太子に肩を支えられ、激しく呼吸を繰り返しながら、席に着いた。


 みんなは打ち合わせに遅刻しないよう、猛ダッシュでやって来たのだと思い、「まだ開始時刻ではないから大丈夫ですよ」と励ましてくれたが……。


 私は「お、驚かせ……て、しま……い、すみ……ません」と息も絶え絶えで答えることになった。


 キルリル皇太子は「無理に話さず、今は呼吸を落ち着かせてください」と言い、背中をさすってくれた。その後、呼吸は元に戻ったが、私は虚ろだった。


 カウントダウンのチャリティーコンサートは人気のイベントなので、委員をする生徒は積極的に意見を出す。


 キルリル皇太子もいくつか提案をしているが、私はただ聞いているばかり。


 心の中にぽっかり穴が開き、そこから気力がどんどん流れ出てしまっているように感じる。


 気付けば二時間近い打ち合わせは終わり、多くのことが決定し、出席した委員の生徒達は、高揚した様子で部屋を出て行く。


「楽しみだわ、今年のカウントダウンのチャリティーコンサート!」


「きっと素敵なものにになるわね」


 生徒達が続々退出する様子を眺めていると、キルリル皇太子に声を掛けられる。


「私達も帰りましょう、ジョーンズ公爵令嬢」


 そう私に声を掛けると、キルリル皇太子はそっと私に手を貸し、席から立つのをサポートしてくれる。その後は私をエスコートするが、何か聞き出そうとはしない。


 ぽつり、ぽつりとチャリティーコンサートのことや、次の試験のことを口にするが、決して私に「何があったのですか?」と問い詰めることはなかった。そして帰宅した後も。


 私を一人にしてくれた。夕食の席で私が無口でも気にすることなく、「この料理、お口に合いますか?」といつもと変わらない声がけをしてくれる。


 結局、私は何も話さないで、部屋に戻り、ただ機械的に体を動かし、寝る準備を整えたのだ。


 そこへ突然やって来たキルリル皇太子。


 何も言わず、見守ろうと決めたが、きっと限界だったのだろう。


「皇太子殿下をお通ししてください」


 私の言葉に「かしこまりました」とメイドが応じた。

お読みいただきありがとうございます!

次話は明日の12時頃公開予定です~

ブックマーク登録してぜひお待ちくださいませ☆彡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ