いい知らせ
マークのお見舞いをした日曜日が終わり、月曜日。
キルリル皇太子と共に登校する。
既に教室にいたレイモンドの隣には、ソフィーが座っていた。そして二人を取り巻くように、クラスメイトが集まっている。
「そうなのですね。ライト様は食欲も戻り、かなり回復されたとのこと。良かったですわ」
「でも右手の手術が必要なんだろう?」
クラスメイトの問いかけに、ソフィーは席を立ち、こう告げる。
「ライト様のために、名医を見つけましょう! そして手術を頑張るよう、再びみんなで手紙を書きませんか!?」
「そうだ!」「そうしましょう!」
「ベネット男爵令嬢はなんてお優しいのかしら!」
クラスメイトから称賛を受けた時。
ソフィーの口元がニヤリと笑っているのを見ると、本当にマークを思い、提案しているのだろうか?──そう思えてしまう。
「王太子殿下、みんなが賛同してくださっています。ここは学級委員として、ライト様とクラスのみんなのために動きませんか!?」
「……分かった。そうしようか」
だがソフィーは着実にレイモンドと一緒の時間を増やしている。自身の学級委員という立場を生かし、次々とクラスをまとめて動かす提案を行うことで。
「皆さん、王太子殿下も同意してくださいました! まずは今日、帰宅したら、ご両親に優秀な医師の知り合いがいないか聞いてみましょう!」
「「「はーい!」」」
皆が唱和したところで鐘の音が聞こえた。
みんなすぐに席へ戻る。
キルリル皇太子と私は、一列開け、レイモンドとソフィーの後ろに着席した。前の席にはソフィーの取り巻き令嬢、メアリー子爵令嬢と伯爵令嬢がいる。
「こんな方法しかないのでしょうか……」
キルリル皇太子が独り言のように呟いたところで、教室に教師がやってきた。
◇
今日一日を振り返ること。
それはしない。
そうすれば嫌な気持ちにはならないからだ。
ソフィーとレイモンドがすべての休み時間、昼休みを一緒に過ごしていたこと。それは忘れると心に決める。勝ち誇った顔のソフィーと、そんな彼女にかしづく取り巻き令嬢の顔など、見なかったことにするのだ。そう決めて私は放課後、アンジェリーナ王女に会いに行くことにした。
明日からは、火災のドタバタで中断されていた王太子妃教育も再開される。キルリル皇太子の屋敷まで、講師が足を運ぶことになっていたのだ。そして先週、身の回りの必要品は揃えていた。火災からの復旧は続いているが、私はこれまでの日常に戻らなければならない。
日常。もはや王太子妃教育を受ける意味があるのかと思うが、それを考えるとキリがない。
ともかくそうやって日常が戻れば、宿題やら王太子妃教育やらで忙しくなる。アンジェリーナ王女にもそう会いに行くことはできないだろう。
王宮に住んでいれば、簡単に会えたのに。
不便さを覚えつつ、ゲームのシナリオが、いよいよ王家から私を切り離そうと、画策しているのでは?と思えてならない。
「お義姉様!」
昨日と同じで、アンジェリーナ王女が宰相の屋敷のエントランスへ迎えに来てくれた。顔の疲れなどは昨日と同じだが、なんだか今日はオーラが違う。なんというか、力強さに溢れていたのだ。
どうしたのかしら?
着ているドレスが明るいレモン色だから……というのもあるかもしれないが……。
「お義姉様、マークの様子、ご覧になりますか?」
「え、昨日の今日で、いいのかしら?」
驚いて尋ねると、アンジェリーナ王女は笑顔で応じる。
「はい。といっても、今は眠っています。さっきまで自習していたのです」
「! 勉強できるぐらい、元気になっているのね!」
「……そうですね。きっといい知らせを聞いたからだと思います」
そこでアンジェリーナ王女は、さらに明るい笑顔になる。いい知らせを聞いて、マークは自習をしていた。それはつまり……。
もしや手術の執刀医が決まった……とかなのかしら?
ともかくまずは昨日と同じで、アルコール消毒をして、白衣を着て、寝室へ案内される。
白布をめくり、中に入ると――。
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