ない!
売り上げ計算は……非常に大変だった。なぜなら記録の金額と実際の手元の現金が一致しない!
「あの、今度は私がコインを数えましょうか?」とメアリー子爵令嬢が提案し、それでやり直しとなるが……。
さらに一致しない!
ということで結局、夕食もそこで摂り、何度かやり直してようやく記録と手元の金額が一致した。
もう帰りの馬車ではぐったりで、爆睡してしまう。
王宮に着くとすぐに就寝の準備。
もちろん、入浴が終わると再びの爆睡となる。
翌日の朝食の席では、国王陛下夫妻とアンジェリーナ王女からチャリティーバザーの様子について聞かれ、レイモンドと私で代わる代わるで話すことになった。
さらに一部、終わっていない宿題があることに気が付いた私は……。馬車の中で宿題をやる事態になってしまう。
ドタバタで登校し、さらに気づいたことがある。それは……。
「ない!」
そう、鞄につけていたレイモンドにもらったミニチュアサイズのボトルシップがなくなっていたのだ……!
昨日のチャリティーバザーにも鞄は持って行っていた。でもその時はついていたと思うのだ。
一体、どこで落としたのかしら……?
「ジョーンズ公爵令嬢、どうしました?」
登校した後、私とキルリル皇太子は職員室へ向かっていた。昨日のチャリティーバザーの売上金を担任の教師に提出するためだ。そこで私はミニチュアサイズのボトルシップがないことに青ざめており、それに気づいたキルリル皇太子に声をかけられてしまった。
もしかしたらキルリル皇太子は何か知っているかもしれない。そこで「実は……」と話すと……。
「なるほど。手作りの品。金具が外れてしまったのかもしれませんね。でもチャリティーバザーの最中、鞄は他の皆さんと一緒に、荷物置き場に置いていましたよね? 鞄を持ち歩いたわけではない。よってそこで外れて落ちたなら、片付けの時に気が付いたと思います」
それはその通り!
しかし私は特に見つけていない。
「私も何か落し物がないか、ちゃんと見ましたが……落ちていませんでしたよ。そしてもし馬車で落としたなら……。王太子やその婚約者を乗せる馬車の御者です。優秀な方のはず。車内に落し物があれば、間違いなく気が付くでしょう。でもそちらで知らせがないとなると……」
そこで少し考え込んだキルリル皇太子は、こんな提案をしてくれる。
「ティールームのお店で落としたのかもしれませんね。席で落としたなら、私達の誰かが落としたと分かるかもしれません。でも廊下で落としていたら……。お店が誰の落し物と特定するのは難しいでしょう」
店内の廊下で落としていたら、いつから落ちていたのかを含め、店員は分からないだろう。
「ただミニチュアサイズのボトルシップ、珍しいですし、高級品です。貴族の落し物と思うでしょうから、保管しているはず。落とし主が現れる可能性が高いと考え。今日は放課後、本当は売り上げ計算をする予定でしたよね? でもそれは昨日終えました。特にまだ予定を入れていないなら、一緒に放課後、ティールームに行きますか?」
「……!」
「私の方で馬車を手配しますよ。……レイモンド王太子殿下にも声を掛けますか?」
この提案には「ぜひに!」だった。何よりキルリル皇太子の推理は「まさにその通りだと思います!」なのだ。
チャリティーバザーの会場となった時計広場では、最後、忘れ物や落し物がないか、ボランティア委員であるキルリル皇太子と私でしっかり行っていた。私自身、この目で見て、ミニチュアサイズのボトルシップが落ちていないことを確認している。もし落ちていたら間違いなく、気付いていたはず。
時計広場ではない、馬車でもないとなると、ティールームで落とした可能性が高かった。
ということで放課後、ティールームを訪ねるのは、それでいい。そこにレイモンドが同席するかどうか、だけど……。
まさか自身がプレゼントしたものを失くしていたなんて知ったら……ショックを受けると思う。
ここはしれっとティールームから回収し、何事もなかったようにするのが一番だと思えた。
今朝、特にレイモンドは鞄にニチュアサイズのボトルシップがないことを指摘していない。彼ならもし鞄についていないことに気付いたら「あれ、リナ、ボトルシップは?」と尋ねたはず。その指摘がないなら、気が付いていないと思うのだ。
「放課後、レイは同席せずで、ティールームへ行く形にしたいです。その……レイから貰ったものなんです、あのミニチュアサイズのボトルシップ。私が失くしたと知ったら、ショックを受けるかと。ティールームに絶対あると思うので、今日の放課後、回収し、何事もなかったことにしたいです」
「ああ、そういうことでしたか。そうですね。プレゼントした手作りの品を失くされた……それはちょっと驚くと思います。でも失くしたといっても、すぐに取り戻せるんです。レイモンド王太子殿下だって、常にジョーンズ公爵令嬢の鞄を気にしているわけではないので、きっと気づきませんよ。放課後、ティールームで取り戻し、また鞄につけなおせば大丈夫」
そう言って美貌のキルリル皇太子は秀麗に微笑む。
レイモンドと同じで、皇太子教育を受けている彼は、落ち着きもあり、冷静で頭の回転も速い。ボトルシップを失くした!とパニックになりかけた私にも適切な助言をしてくれた。
紛失に気付いた時、そばにキルリル皇太子がいてくれて良かったと安堵したところで、職員室に到着だった。
お読みいただきありがとうございます!
読者様への応援への感謝、そしてGW最終日。
ということで、もう一話、公開です~♪
次話は21時頃公開予定です☆彡






















































