十月の半ばの日曜日
「おはようございま~す!」
ご機嫌のソフィーの声が、時計塔広場に響き渡る。
十月の半ばの日曜日。
天気も良く、朝から寒すぎず、快適な気候だった。
時計塔広場には続々と王立アルデバラン学園一年A組の生徒が集まり、バザーの準備が進められている。
テーブルが並べられ、そこに商品を並べたり、そのまま木箱を置いたりする一方で、飾りつけもスタート。バザーを告知する看板を設置したり、秋らしいリースを飾ったり。何より各自の庭園から持ち寄った秋の花の花束はとても鮮やか。ダリア、アスター、クレマチスなど、貴族の庭園を飾る花は、既にバザー開始前から、近くを通る人の注目を集めている。
「それではチラシ配りをする方は、それぞれの配布場所へ移動してください。残りは各自の持ち場につく形でお願いします!」
バザーの開始を告げるのは、キルリル皇太子だ。
白のシャツに明るいグレーのズボン。胸元に学園のエンブレムのついた紺色のブレザーを着たキルリル皇太子は、生徒というより、新米教師に見える。
そんなキルリル皇太子と同じ制服姿の男子生徒たち。さらに白のブラウスにハイウエストのスカート、ボレロもしくは厚手のカーディガン姿の女生徒たちが、それぞれの持ち場へと移動する。
売り場での販売担当、会計係、在庫補充、清掃&交代要員、そしてチラシ配布を、クラスの二十名で分担して行う。
午前中は、レイモンドがチラシ配布、マークは会計、キルリル皇太子とソフィーは販売、私は在庫補充担当。午後はまた担当が入れ替わる。レイモンドがチラシ配布をすることを思いついたのは、キルリル皇太子だったが、それは正解に思えた。
王太子であるレイモンドが配るチラシ。配らずとも「欲しい」と王都民の女性達が殺到しそうだった。さらに店頭にキルリル皇太子が立てば、これまた女性陣が足を止めること間違いなし。
まずは集客。お店まで来てもらえば、あとは珍しい花や大型の家具で目をひき、商品を見てもらう。市場価格よりお得で手に入るし、添えられている思い出を見たら、気になるはずだ。きっと購入してもらえるはず!
ということで十時の鐘の合図と共に、バザーがスタートすると……。
「王太子殿下の石鹸をください!」
「皇太子殿下のカフスを見せてください!」
「王妃殿下の品があるって、本当ですか!?」
まずは著名人(!?)の出展品に注目が集まり、続々売れて行く。そして人だかりが一度できると、それを見た人が足を止め、さらに人が店頭に集まる。
手ごろに買える共布やリボンは飛ぶように売れて行き、大型のチェストや椅子なども売却済になっていく。花束は男女問わずに購入するので、こちらもすぐに補充が必要。
「ジョーンズ公爵令嬢、早く花束を用意して!」
ソフィーに何度となく怒鳴られてしまうが仕方ない。それぐらいどんどん売れているのだ。
「切れ目がないですね。もうすぐ十三時になってしまいます。ジョーンズ公爵令嬢、交代要員と代わってもらい、お昼に行ってください」
「えっ、でもキルリル皇太子殿下は!?」
「ボランティア委員二人が現場を抜けたら、ダメでしょう? 時計塔広場の使用許諾書を持っているのも、貴方達でしょう!」
あまりの混雑に殺気立ったソフィーに怒鳴られ、その通りだと思う。ここは「私が残るので先にキルリル皇太子殿下が休憩をとってください」と問答をするより、とっとと私が休憩をとった方が良さそうだ。
そこで交代要員に代わってもらい、ソフィー、マーク、メアリー子爵令嬢、私とでお昼休憩をとることになった。
「普段扱い慣れないコインを数えるのは面倒ですわ」と、会計を担当しているメアリー子爵令嬢が嘆くと「『ください』『ください』って手を出す人達を見ていると、その手を切り落としたくなるわ!」とソフィーがとんでもないことを言っている。
「あっ、殿下じゃないですか!」
マークの言葉に前方へ目をやると、こちらへ戻ろうとしているレイモンドの姿が見えた。
「リナ!」
「レイ!」
駆け寄ったレイモンドは、私の周りにいるメンバーを見て「お昼休憩?」と尋ね、頷くと。
「僕達もまさに交代要員が来てくれて、これから休憩なんだ。良かった、一緒のタイミングで。みんなでお昼にしよう」
そう言うと笑顔で手を差し出してくれる。ここは素直に応じ、レイモンドにエスコートしてもらう。するとレイモンドは時計塔広場に近いカフェへと、みんなを案内してくれる。
「ここは外にも席があるから、みんな入れると思う」
どうやらレイモンドは今日のために、この辺りでランチをできるお店を調べてくれていたようだ。細やかな気遣いに嬉しくなる。
こうしてレイモンド、私、マーク、そしてソフィーと残りのメンバーで、外のテーブル席二つへ案内された。
ランチメニューは魚か肉を選べるワンプレート。レイモンドと私は魚、マークとソフィーは肉を選び、注文は完了。するとソフィーは早速、「殿下~、忙しかったです~」と話し出す。
お読みいただきありがとうございます!
本日もよろしくお願いいたします☆彡
次話は12時頃公開予定です~






















































