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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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心が痛む。だが生存のためには――

 将来、ヒロインを選び、私に婚約破棄をつきつける。さらには絞首刑による死罪を突き付けるのが――王太子であるレイモンドだった。


 今はまだ幼い子供であり、見た目も行動も王子様のレイモンドだが、そこに気持ちを持って行かれてはいけない。婚約破棄してしもらうため、彼が傷つくことを行う。


 作るには慣れていたとしても、数週間から数カ月はかかるかもしれない。そんな作りかけのボトルシップ。それを壊すため、私はわざと木製トレイを落とした。


 心が痛む。でも自分の生存のために、必要なことと言い聞かせて――。


「あぶない!」


 レイモンドの叫び声が聞こえたと思ったら。


 鈍い音と「殿下!」という声と足音など、いろいろな音が続けざまに聞こえてくる。


 目を開けると私は絨毯の上に仰向けで、そして……。


 レイモンドに抱きしめられている。


 顔のすぐ近くにレイモンドの顔があり、もう心臓が止まりそうだった。しかも後頭部に彼の手が添えられている。


「大丈夫ですか、殿下、リナ!?」


 近衛騎士やら父親が駆け寄り、私とレイモンドは起き上がることになる。


「リナ、ケガはしていない? 頭は床にぶつからないよう、かばったつもりだけど……どこか痛むところは?」


 レイモンドの言葉にハッとする。


「殿下! 怪我をされているではないですか! 割れた瓶のガラス片が当たったのでは!? まさかご自身の身を挺してリナを守ってくださるなんて……ありがとうございます。ただ殿下が怪我をされることになり、申し訳ないです」


 父親が深々と頭を下げ、私はこの言葉を聞き、唇を噛み締めることになった。


 確かに父親の言う通りで、レイモンドの顔の左下と首の境目辺りに血がにじみ、着ている白シャツも汚れてしまっていた。さらに父親と話すレイモンドの後ろには、割れたガラス瓶とその中に入っていた船の模型が、無残な姿で散乱している。


「……僕は大丈夫です。それよりもリナ、君は平気? ……どうしたの、そんなに悲しそうな顔をして?」


 父親から離れ、こちらへと近づくと、レイモンドは私の両手をぎゅっと握りしめる。


「ごめんなさい」

「リナ」


「ごめんなさい! でんかがケガをすることになったのも。ボトルシップがわれたのも……ぜんぶ、ぜんぶリナのせいでしゅ」


「リナ、気にしないで。これは事故なんだよ。仕方ないこと。何よりリナにケガがなくてよかった。それにボトルシップは、また作ればいいだけのこと。大丈夫だよ」


 そこでレイモンドは使用人に、床で散乱するボトルシップを片付けるように命じた。


 私は自分の生存のため、彼が大切に作ったボトルシップをわざと落とした。それなのにレイモンドは……。


 コツコツと時間をかけ、集中し、そして完成を楽しみに作っていたボトルシップ。瓶は割れ、中に入っていた船の模型も無残な姿になったのに。怒ったり、嫌味の一つを言うこともなく、私の身を案じてくれた。それどころか「また作ればいい」とサラッと言ってくれたのだ。


「殿下、隣室のソファに座りましょう。そこで治療します」


 やって来た宮廷医に声を掛けられたレイモンドは「分かった」と応じ、私を見ると……。


「リナ、泣かないで。本当に君にケガがないなら、それが一番なんだ。もしその可愛い顔にキズがついたら大変だった」


「でも……」


「僕はおこっていないし、リナも気にする必要はないのだけど……」


 するとレイモンドは天使(エンジェル)のように、あのえくぼを見せて朗らかに笑う。


「じゃあリナ。おわびとして僕がちりょう(治療)してもらう間。僕の隣にいて。そして手をにぎってくれる? しょうどく(消毒)はしみるから、そうしてもらえるとがまん(我慢)できそうだ」


「もちろんでしゅ、でんか!」


「ありがとう、リナ」


 レイモンドはエスコートではなく、間もなく四歳児らしい幼さで、私の手をぎゅっと握り、歩き出す。


 その様子を見て父親は安堵し、宮廷医は「さあ、こちらへ」とレイモンドを先導する。


 レイモンドがソファに座ると、看護師が彼のシャツのボタンをはずした。宮廷医は早速、消毒を始める。


 傷口はそこまで大きくはない。だが小さな切り傷こそ、見た目に反し、痛みがあり、しみるもの。


 消毒液を染み込ませた綿が、傷口に触れた瞬間。レイモンドは目をつむり、私の手をぎゅっと強く握りしめた。それを見た私は、再びポロッと涙をこぼしてしまう。


 婚約破棄を目論見、やったことなのに。レイモンドは怒ることなく、怪我をして、そしてただただ私が悲しくなっていた。申し訳ない気持ちになり、涙をこぼす事態になっている。


 さらにこの日、帰宅した私は父親から、こう提案されることになった。


「ボトルシップの中に入っている模型は手作りだ。パーツが販売されているわけではない。細かなパーツ、その全てを殿下はご自身で用意された。我々が準備できるとしたら、瓶と、あとは染料だ。この二つを用意しよう。それを次のブランチの時に殿下に『ごめんなさい』でお渡ししようか、リナ」


「わかりました」


「ちゃんと手紙も書こうね、リナ」

お読みいただきありがとうございます!

次話は明日の12時頃公開予定です~

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