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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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52/122

出題者は教師陣

『森の中のガラス美術館』。


 最短ルートの直線コースがあるが、そこは使わない。三か所のチェックポイントは、直線ルートではない迂回コースに設置されている。そこへ向かうため、メインの道をそれ、脇道へと入っていく。


 脇道は緑が増え、その木々はまだ夏の名残で青々としている。気温は完全に秋、でも木々は緑。そんな二つの季節の中を進むと、チェックポイントが見えてくる。


 木の幹に釘で打ち付けられた紙には問題が書かれているのだ。そこにはなかなかに難しい問題が出題されていた。出題者は学園の教師陣である。


「問1:

 コンパスの北を示す針。真北を指していません。何を指しているでしょう?」


 正直、この問いを見た時。

 真っ先に浮かんだのは前世で好きだった映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の主人公、ジャック・スパロウが持っていたコンパス! あれは北を指さないコンパスとして有名だった……でもこの世界には映画はない。誰もジャック・スパロウを知らない。ここで「真北ではない。その人が欲しいものを指す!」と言っても無反応で終わる。


 そう思ったら……。


「これ~、私、正解、分かります~!」


 ソフィーが元気よく手を挙げた。その手をレイモンドに指してもらいたかったようだが、彼は反応しない。代わりにメアリー子爵令嬢が「ソフィー嬢、答えは何ですか?」と尋ねる。


「コンパスは、人の心。その心が指すもの。それはその人の欲しいものです~!」


 そこでソフィーは指でピストルの形を作り、レイモンドのハートをズキュンとやったが……。理解できたのは私だけだと思う。


「正解は磁北ですので、『磁北』と記入していただけますか」


 リーダーであるキルリル皇太子に言われ「あ、はい」と書記である私は慌てて羽根ペンを走らせる。当たり前のように彼が回答できたことに驚きながら。


「磁北って何ですか~、王太子殿下!」


 ソフィーが甘えるような声で尋ねる。


「磁北はコンパスが指す北であり、地理上の真北……北極点とはずれている。そのずれは、磁北が地球の磁場の影響を受けるために生じているんだ。そのずれのことを、磁気偏角と呼んでいる」


「へ~え、何だか難しいですね。メアリー子爵令嬢、分かりました?」


「よく分からないですけど、私達は船乗りになるわけでも、地質学者になるわけではないので、分からなくても大丈夫ですよ」


「そうよね~」


 ソフィーとメアリー子爵令嬢の会話を聞いたレイモンドは肩をすくめ……。こちらを見ると思ったので、慌てて逸らしてしまう。そしてキルリル皇太子に「回答記入できました」と報告する。


「ありがとうございます。ジョーンズ公爵令嬢。では次のチェックポイントへ移動しましょう」

「はぁ~い!」


 ソフィーだけが明るい返事をしている。

 

 私は羽根ペンとインクを片付けながら心臓がドキドキしていた。どうしてレイモンドの視線を避けてしまったのだろう。さっきも私を責めるように見ている違いないと視線を逸らしてしまった。二回も私から視線を避けられ、レイモンドは……。


「ジョーンズ公爵令嬢、大丈夫ですか?」

「大丈夫です」


 キルリル皇太子に問われ、大丈夫と答えたが、全然大丈夫ではない!


 きっと一年生のうちに私は……レイモンドから婚約破棄されるだろう。そうなることを望んだ。そして今の私はヒロインであるソフィーに何もしていない。挨拶をして、たまに宿題の手伝いをしようかと申し出て「大丈夫です」と言われたりするが、レイモンドといくら絡んでいようと見て見ぬふりを続けているし、断罪はないはずだ。そう思い、なるべく心を無にしようと誓い、歩き出した。


 ◇


 次のチェックポイントに着くと、さらに問題の難易度が上がっている。


「問2:

 高度が千メートル上昇すると、気温は平均的に何度低下すると考えられていますか?」


 問題を見たソフィーは「えー、問題自体の意味が分からない~」と言い、メアリー子爵令嬢もこれには同意している。そこでキルリル皇太子、レイモンド、私の三人で考えることになった。


「これは何か計算式があるのかしら?」


「こんな場所で複雑な計算をさせるわけがないでしょうから、何らかの理論で既に計算されたものを当てはめて回答するだけに思えますね。つまり知っているか、知らないか。勿論、理論を成立させる前段で、計算はされていると思いますが……」


 この会話から、私とキルリル皇太子はこの理論を知らない。あとはレイモンドが知っているかどうかだ。


 どうしても分からない場合はチェックポイントにいる教師にヒントをもらうことになるが、この場合は正解を導き出せても、減点となる。


「レイモンド王太子殿下、どうですか? 何か思い出せそうですか?」


 キルリル皇太子がレイモンドに問い掛けた。


 ソフィーとメアリー子爵令嬢は既に匙を投げたようで、少し離れた場所に咲いている花を眺め、なんだかキャッキャッと話している。


「これは気温の逓減率の話だと思う。理論値で行くと千メートル……1kmの上昇で6.5度の低下のはずだ。もし湿度や気圧を考慮すると、乾燥断熱減率で9.8度/km、湿潤断熱減率で5度/kmだったと思う」


「ああ、なるほど。言われてみれば山岳の授業で習った気がします」


 キルリル皇太子がそう言うと、レイモンドはこう応じる。


「僕は軍事の授業で習ったよ。山越えでの戦闘知識として。まさかここで役立つことになるとは。いずれ地理の授業で習うのかもしれないね」


 二人ともサラリとそんなことを会話しているが、それぞれ皇太子教育、王太子教育で習ったことだと思う。


「分からないと投げ出せず、ちゃんと考えようとしたところ。リナらしいね」


 不意打ちのようにレイモンドがアクア色の瞳で私を見て告げた一言。たった一言なのに、胸がキュンとして涙が出そうになる。それを誤魔化すように、私は視線を伏せ「回答を記入します」と羽根ペンとインクを取り出す。


 レイモンドと過ごした時間はあまりにも長かった。自分の両親よりも長い時間をレイモンドと過ごしたのだ。深呼吸をして気持ちを静める。


 諦めるの、レイモンドのことは――。

お読みいただき、ありがとうございます!

本日もよろしくお願いいたします☆彡

次話は12時頃公開予定です~

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