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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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乙女ゲームの世界の罠

 春のピクニックでの()()という名の出会い以降、急激にレイモンドと私が会う機会が増える。


 まずは日曜日。


 王侯貴族は、王都の中心部にある大聖堂で祈りを行う。朝は軽く朝食をとり、九時からの祈りの場に参加。そのまま帰宅すると、ブランチとなり、その日はティータイムが豪勢になる。


 これまで日曜日のブランチは屋敷に戻り、家族全員揃って食べていたのだけど。


「リナ。今日から日曜日のブランチは、パパと王宮へ向かい、そこで国王陛下夫妻とレイモンド王太子殿下とアンジェリーナ王女殿下と食べよう」


 これには「えっ」だった。

 「なんで?」とも思う。


 ただ、うっすらとは理解する。

 私は王太子の婚約者なのだ。

 王太子であるレイモンドと仲良くなるのは勿論、王族とも今のうちに親しくなるように……ということなのだろう。


 だがしかし。


 そんなことになったら悪役令嬢街道まっしぐらになってしまう。これには当然、「ノー」であるが、ストレートにそんなことは言えない。そこで「ママやおにい()さまたちと、はなればなれはイヤです」と伝えると……。


「リナ。いつまでも子供ではいられないんだよ。三人の兄達も。長男のグレイは家に残るが、後のみんなはリナも含め。あの屋敷を出ることになる。いつまでもみんなで一緒にいられるわけではないんだよ」


 前世において。

 海外では子供でも自主性を早くから求められ、精神的に自立することが良しとされていた。だからと言っても。間もなく四歳になるとはいえ、いきなりこんなことを父親が私に対して言い出すことに、ビックリしてしまう。


 後から考えれば、なぜ父親がこんなことを言い出したのか。理解できたのだけど……。この時の私は、中身がアラサーなだけに、「いつまでも子供ではいられない」と言われると、妙に真面目に「そうですよね」と思ってしまった。そして毎週日曜日の王族の皆さまとのブランチも、受け入れてしまうのだ。


 受け入れたはいいが、王族との食事。

 最初はドキドキだった。


 前世に於いても王族となんて接点ゼロ。

 いくら公爵令嬢として生まれたとはいえ、まだ三歳と十カ月程度しか生きていないのだ。王族との食事なんてこれが初めてであり……。


「おや。パンケーキは苦手だったかな?」


 大好物のパンケーキさえ、喉を通らない。

 すると……。


「父上。リナはきんちょう(緊張)しているだけだと思います。それにこのダイニングルームは広すぎませんか。もう五月になり、ひざし(陽射し)も風も気持ちいいですよね。来週は外で食べませんか?」


 そう提案してくれたのは……レイモンドだった。


 こんな意見を進言できるレイモンドに驚きだったし、実際、翌週は……。


 庭園を見渡すテラス席で食事をすることになった。


 新緑の季節。

 沢山の蝶が舞い、綺麗な花も沢山咲いている。鳥もやって来て、美しい鳴き声を聞かせてくれるのだ。


 なんだか気持ちも開放的になり、緊張感も弱まる。


 そうなると用意されている卵料理やカリカリのベーコンも美味しくいただける。焼き立てのマフィンにクリームチーズとブルーベリージャムをたっぷり塗り、ぱくぱく食べることもできたのだ。


 そうやって私がこの王族とのブランチの席に慣れてきた五回目。


「そういえばレイモンド。お前が作ったボトルシップをリナに見せてあげては?」


 国王陛下がそう提案した時。


 このブランチの席がセッティングされた、もう一つの理由に気が付く。王族と私が仲良くなるためだけではない。レイモンドと親しくなるよう、組まれたものであると。


「ええ、そうですね。リナ、僕が作ったボトルシップ、見てくれる?」


 レイモンドが小首を傾げたその姿は……アイドルの卵のように愛らしい。まさに天使(エンジェル)のように、あのチャームポイントのえくぼの笑顔で提案されたら……。


 「……みましゅ」としか答えられない。


 イエスマンな答えしかできないが、これは乙女ゲームの世界の罠であることも、よく理解している。


 私が幼いうちに婚約破棄されたいと願っていることは、気づかれているのだろう。そこでゲームの世界はレイモンドを魅力全開にさせ、私が彼に夢中になるよう、仕向けているのだ。


 ゆえに。


 ボトルシップを見ることに同意したが、婚約破棄されるような行動をとるつもりでいた。よってブランチを終え、レイモンドにエスコートされ、彼の部屋にも大人しくついて行った。


 父親は当然だが付き添いで私達の後ろをついて来ている。仲が良さそうにしか見えないレイモンドと私を見て、父親はとても嬉しいに違いない。


 ところがその笑顔、間もなく凍り付くことになるはずだ。


「リナ、ここが僕の部屋です」


 通された部屋は、私の部屋とは全く違う。


 私の部屋にはぬいぐるみや人形が溢れていたが、レイモンドの部屋は……。


 ここは前室だと思うが、窓際に大きな天球儀が置かれ、さらに子供用の甲冑も飾られている。その周辺には武具や立派な剣も飾られていた。


「ボトルシップはこっちの部屋で作っているんだ」


 案内されたのは書斎だろう。

 本棚が壁一面を埋め尽くしている。そこには大人が読むような本もズラリと並んでいた。


 その本棚のところどころにスペースがあり、そこにボトルシップが飾られている。


 前世で見た時もすごいと思ったが、やはり瓶の中でマストを広げている船の模型を見ると、不思議でならない。どうやって作っているのか。実は瓶底が外せるようになっているのではないかと思ってしまうが。


 「ピンセットを使い、ビンの中で組み立ているんだよ」とレイモンドが教えてくれた。さらに勉強机のテーブルに置かれた木製のトレイを見せてくれる。そこには作りかけのボトルシップがあった。そして沢山の気が遠くなりそうなパーツが、その周辺に置かれている。


 これだけの細かいもの。作るには時間がかかると思う。


 既に王太子であるレイモンドは、王太子教育がスタートしているはずだ。私も屋敷ではマナーや礼儀作法の勉強が始まっている。


 まだ幼いが忙しい身。その日々の中でこのボトルシップを作ったのだ。


 その苦労と彼の努力を思うと……。


 でもそこは心を鬼にした。

 レイモンドはヒロインにロックオンされている。将来、私と婚約破棄をして断罪し、絞首刑を告げる人物なのだ。


「あ」


 私は何かに躓くふりをして、作りかけのボトルシップが入った木製トレイに手を伸ばす。


 手がトレイの底に触れ、ひっくり返り、中身は全て床へと落下していく――。

お読みいただきありがとうございます!

次話は20時頃公開予定です~

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