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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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43/122

なぜ……?

 ソフィーの字の汚さを加味し、私が書記を、彼女には時間管理をやるのでどうかと提案したところ……。


 顔を真っ赤にしたのだ、ソフィーは。


 なぜ……?


「ジョーンズ公爵令嬢、申し訳ありません。懐中時計はとても高価なもの。男爵家の我が家では、懐中時計は父親しか持っていません。母親はペンダント時計を持っていますか、それは既に時を刻まず、装飾品に過ぎません。我が家が裕福ではなく、大変申し訳ありません」


 真っ赤になったのは恥じらっていたから。それが分かり、これは申し訳ないことをしたと思う。


「ベネット男爵令嬢、ごめんなさ」


「私が先に書記をやりたいと言えば良かったのです! 本当に、私が愚鈍でごめんなさい! 懐中時計やペンダント時計さえ持たない私が、この学園に入学したこと自体が間違いみたいなもの。でも私、精一杯頑張りますから!」


 そこでホロリとソフィーが涙をこぼし「まあ、ソフィー嬢、泣かないでください!」と、メアリー子爵令嬢がソフィーを抱きしめる。


 そして彼女の囁きが聞こえてしまう。


「こんなみんなの前で恥をかかせるなんて! 懐中時計やペンダント時計が高級品であること、知らないわけがないのに。なんて意地悪なのかしら。ソフィー嬢、大丈夫ですよ。もしもの時は私の懐中時計をお貸しします」とメアリー子爵令嬢がソフィーに小声で話していた。


 悪気があったわけではない。でもとてもネガティブに捉えられている。


 ソフィーとメアリー子爵令嬢が仲が良いとはいえ、こうも悪印象をもたれると……。


 やはりリナは悪役令嬢という扱いなんだと、少し暗い気持ちになってしまう。


「ベネット男爵令嬢、落ち着いて。君が書記で構わないから。時間管理はリナに任せる。リナ、君も懐中時計は持っていないだろう? ペンダント時計は装飾品で、精度があまり良くないと聞く。僕の懐中時計をその日は貸すから、時間管理は任せたよ」


 レイモンド……!


 今のフォローで、私だって懐中時計を持っていないことをアピールしてくれた。実際、私もペンダント時計は持っているが、懐中時計は持っていない。公的な行事で動く時は、侍女が声を掛けてくれるし、むしろ高位な貴族令嬢ほど、時間を気にしなかった。


 なぜなら特に社交界において、時間を気にする=優雅ではないと思われてしまうからだ。時間に縛られる令嬢マダムは、余裕がない、品がないと見られてしまう社会だった。


「王太子殿下! 懐中時計をお借り出来るなら、私が時間管理を担当しますわ! 私、ちゃんと時計を読めますから!」


 時間を気にしない貴族令嬢が多いので、時計を読めない者もいた。特に分針を上手く読み取れず、大まかな時間が分かっても、何時何分かまでちゃんと理解できていないこともある。それに時計の読み取り方を教えてもらうこともない。時計を読めるようになりなさい=時間を気にして生きなさい、になってしまうからだ。


 ゆえに前世と違い、時計回りの意味を正しく分からないなんてこともある。だがそこで馬鹿にされることもないのが、この社会だった。


 時計を読めない令嬢が大半なのだ。よって時計を読めることはアピールしてもいいだろう。ただそれすなわち、自分は時間に追われて生きています!とアピールすることでもある。そこは実は貴族令嬢としては、恥ずかしいことであるのだけど……。


 ソフィーは分かっていない。

 メアリー子爵令嬢はハッとして指摘するかどうか悩んでいるが、言わないだろう。


 レイモンドも何か言い掛け、そして呑み込み、こう告げる。


「なるほど。このチーム『アドベンチャー』のリーダーはキルリル皇太子殿下。彼に委ねようか」


「そうですね。では私が判断させていただきます。書記はジョーンズ公爵令嬢に任せ、時間管理はソフィー嬢にお願いします。宜しければ、懐中時計をプレゼントしましょう」


「まあ、キルリル皇太子殿下! 宜しいのですか!? 懐中時計はとても高価なものですのに!」


 さすがにこれはソフィーが目を丸くする。


 とはいえ、皇太子という身分からすると、貸すというのも中途半端。そこは身分的にも差し上げます、になったのだろう。


 一方、レイモンドと私の場合、婚約者という関係の気軽さで、貸すという発想につながったが……。


 うがった見方をしたら、レイモンドは王太子なのに、私にプレゼントせず、貸そうとしただけ……とマイナスに見えかねない。ここはキルリル皇太子、レイモンドの発言に合せ、貸すでも良かったと思う。だが既に言葉として発せられている。「やっぱり貸します」と言い直すのも変な話。


「確かに高級品ですが、それぐらい贈れるだけの国力はありますから。良かったらジョーンズ公爵令嬢。君にも懐中時計を贈りますよ。時間を気にするための道具と言うより、宝飾品として美しいものを贈ります」


 つまりは必要に応じて時を確認すればいいが、時間に追われる必要はない。貴族令嬢らしく優雅に、オシャレに懐中時計は活用するといい……と言うことだ。それは理解できるが、私にまで贈るなんて……。レイモンドは私に貸すと言ったのだから、ここは……と思い、すぐに理解する。


 懐中時計は高級品であり、本来、ただのクラスメイトに贈るようなものではない。キルリル皇太子は婚約者もいないし、ここでソフィーにだけ贈るとなれば、誤解を招きかねなかった。


 ソフィーとは仲良くしているので、そこは誤解されてもいいのかとも思ったけれど……。


 そうではないようだ。


 それに皇太子と噂になる相手として、他国の男爵令嬢はあまりよろしくない。身分の釣り合いという観点で。


 これがキルリル皇太子攻略ルートだと、そこはまた変わってくる。早々にソフィーの両親の爵位が上がり、皇太子と噂になっても遜色のない身分になるのが、キルリル皇太子攻略ルート。だがここは王太子攻略ルートなのだ。


 というわけでソフィーを特別視していると思われているのを回避するため、私にも贈ると言い出したのだとすぐに理解できた。そして贈り物は、前世日本人のように遠慮せず受け取りましょうの文化だった。むしろ「そんな、受け取れません」は、相手との関係性を否定するので好まれない。厚意はありがたく受け取り、御礼の気持ちを適切に示すことこそが重要だった。


 ゆえに「ありがとうございます。とても高級な物ですが、せっかくですので受け取らせていただきます」と私は応じる。これを見たソフィーも慌てて「わ、私も受け取ります!」と被せるように答えた。


「ではお二人に後ほど、懐中時計は贈るとして、美術館での体験教室、どれに参加するか決めましょうか」


 キルリル皇太子がアイスブルーの瞳を細め、ニッコリと笑顔になった。

お読みいただき、ありがとうございます!

本日も読者様の日頃の応援への感謝&GWで

もう1話公開です☆彡

月曜から夜更かしということで

22時頃の公開です!

お疲れの方やご予定がある方はご無理なさらず

翌日ご覧くださいませ~

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