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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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40/122

ようやく

 お茶会ではヒロインであるソフィーが、自身が主役であるとアピールする一幕もあったが、それはそれで終わる。


 というのも貴族のお茶会。基本はお茶をして、軽食などを楽しみ、おしゃべりをすることになるのだけど。


 私はレイモンドから「今回はおしゃべりよりも、とにかく場が盛り上がるようにして欲しい。お茶会としては趣向を凝らしたと思わせる演出、頼めるかな?」とお願いされていたのだ。


 そこで私は著名な朗読家を招き、かつ伴奏者も呼んでいた。


 ピアノ、バイオリン、チェロなどの演奏と一緒に、優雅に詩の朗読がされる。それを聞きながらのお茶会は、実に優雅。


 ソフィーは感動し、「こんなお茶会は初めて! さすが王太子殿下」と感動している。


 あくまで褒めるのはレイモンドで、私のことは眼中にないようだが、気にしないことにした。


 こうしてお茶会は、おしゃべりよりも詩の朗読が多くを占め、終わることになったが……。


 ソフィーの満足度は高い。


 一方の私は、楽なお茶会だったというのが本音の感想。もし詩の朗読がなければ、客人に気を遣いながら、話題を振る必要がある。さらには客人をよいしょする必要だってあるのだ。


 だが詩の朗読と素敵な演奏がされるだけで、それらが一切免除される。


 私はレイモンドがヒロインであるソフィーを歓迎するため、特別なもてなしを求めたのかと思った。だがソフィーが詩の朗読と伴奏に夢中になっているのを見て、彼が安堵のため息をもらすのを、私は見逃していなかったのだ。


 つまり。


 レイモンドはホストとして、最初からソフィーをもてなす気などさらさらなく、表向き、おもてなしをしたと思われる演出を私に求めていたのだ。


 ここは王太子攻略ルートなのだから、レイモンドのこの行動は……本当に驚きしかない。


 しかもきっちり二時間でお茶会を終え、庭園を見たがるソフィーに「この後、僕とリナは公務があるから。もし庭園を見たければ、キルリル皇太子殿下と楽しむといいのでは?」と退出してしまったのだ! しかも私を連れて。


 アンジェリーナ王女はこの後、公務などないことを知っているが、マークと一緒にそこは何も指摘しない。むしろ目が「まあ、お兄様ったら!」と笑っている。


 こうしてレイモンドは私を連れ、宮殿を抜け、王宮へと向かう。さらに王宮深くにあるプライベートガーデンへと私をエスコートする。


 プライベートガーデンは王族のみが入れる場所。


 レイモンドの近衛騎士と私の侍女は控えているが、ソフィーもキルリル皇太子も、ここに踏み入ることは出来ない。そしてアンジェリーナ王女とマークは、レイモンドと私が二人きりになりたい時、ここへ来ることを知っている。今日もここへ向かったと分かっているはずで、邪魔もしないはず。


 本当は温室へレイモンドはいくつもりだった。でもソフィーとキルリル皇太子が庭園を散歩する。宮殿の庭園から温室は丸見え。


 だからこそ、このプライベートガーデンにレイモンドは来ることにしたのだろう。


「ようやくリナと二人きりになれた」


 厳密には近衛騎士や侍女もいるが、そこを言ったらきりがない。


「さあ、リナ、座って」


 レイモンドがハンカチを広げ、芝生に私が腰を下ろせるようにしてくれる。


「詩の朗読家を招き、さらに伴奏者も呼ぶ。最高の演出だったよ。あの男爵令嬢も満足だっただろう」


 私が腰を下ろすと、レイモンドが隣に座る。


「レイは……ベネット男爵令嬢と一緒に学級委員もやっているのよね。放課後も毎日のように郊外学習のことで打ち合わせをして。すっかり仲良くなって、お茶会も大歓迎かと思ったら……違うの?」


 スカートを整えながら尋ねると、レイモンドは肩をすくめる。


「リナは不思議なことを聞くんだね。あの男爵令嬢は、同じ学級委員をしているに過ぎない。それだけだよ。今日だってアンジェリーナが言っていた通り、キルリル皇太子がぜひにと言うからお茶会を開催しただけ。それよりも」


 そこでレイモンドは、体を大きく傾けたと思ったら……まさかの私の膝に自身の頭を乗せたのだ!


 つまり私に膝枕をされた状態になった。


 これにはいきなり心臓がドキドキしてしまう。


「……セイボリーもペストリーもとても美味しかった。やはりリナに任せて正解だったな」


 レイモンドが碧眼を輝かせ、微笑む。そして「ありがとう、リナ」と私の手をぎゅっと握る。


 その手の温もりに、胸がキュンとしてしまう。


「リナ、今日のお茶会、頑張ってくれた御礼だよ」


 そこでレイモンドはセットアップの上衣の内ポケットに手を入れると、ぎゅっと握りしめた拳を差し出す。そして私の手の平の上で拳を広げた。コロンと私の手の平に転がるのは……。


「すごいわ、レイ! 私の片手に余裕で収まるサイズの瓶なのに! 精巧な帆船が入っているわ……!」


「キーリングがついているから、鞄に飾ることができるよ」


「本当だわ。ありがとう、レイ! 大切にする」


 レイモンドが私に会いたいと、眠れぬ夜に作ってくれたミニチュアサイズのボトルシップ。心から大切にしたいと思ったし、彼の気持ちがとても嬉しくて……。


 学園に入学し、ヒロインとレイモンドが出会ったら、断罪までのカウントダウンが始まると思っていた。でもこれなら大丈夫かもしれない……。


 そんな風に私は思っていたが。


 これが嵐の前の静けさだったとは、後々気が付くことになるのだった。

お読みいただき、ありがとうございます!

読者様の応援感謝&GW記念で

今晩もう1話公開です☆彡

明日はお仕事という方もいると思うので

21時頃で公開しますね!

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