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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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その誓いは……

 間もなく四歳だろうが、現在は三歳。

 それで弓を使い、野ウサギを仕留めた。

 これはものすごいことだった。


 通常なら拍手喝采だ。


 だが私は王太子であるレイモンドにヒドイと言い、しかも泣き出した。これは失礼極まりない事態で、両親は青ざめている。


 レイモンドの後ろに控える近衛騎士や付き人達の表情も強張っていた。


 私は内心でほくそ笑む。

 これは婚約破棄につながるのではないかと!


「マーク、すまないけれどその袋をかしてほしい」


 間もなく四歳児とは思えない冷静さでレイモンドはそう言うと、ズタ袋を受け取り、そこに仕留めた野ウサギを収めた。


 一方の私は、マークに反応している。


 マークと言えば宰相の息子マーク・ライトでは!?


 ダークオリーブ色の髪にグリーンの瞳。今はまだメガネをかけていないが、王立アルデバラン学園に入学する時は、メガネ美男子になっている。そう、彼もまた攻略対象の一人だった。


 私がそんなことを脳内で分析している間に。

 レイモンドは野ウサギの血のついたグローブ(手袋)を外し、代わりに白の手袋をつけ、そして弓を近衛騎士に預けると――。


 まずは自身の上質そうなハンカチをポケットから取り出すと、私の涙を拭った。


 既にマークの登場に驚き、涙は止まっていた。しかしレイモンドはとても真剣な表情で、私の涙を拭ってくれたのだ。それだけでも驚きだったが、それを終えると……。


 まるで騎士のようにレイモンドは片膝をつき、跪くと私の手を取った。


 小さな狩人に続いての、小さな騎士レイモンドの姿は、これまた激レア。


 食い入るようにじっと見てしまう。


「リナ。ごめんね。君が最近、屋敷で子ウサギのしいく(飼育)を始めたと……聞いていたことを思い出したよ。デリカシーのないことをしてしまった。本当にごめんなさい。僕はもう生涯、野ウサギは狩らないと誓うよ」


 これには「えーっ」と驚くことになる。


 乙女ゲーム“ハピエン”に登場するエピソードに、王立アルデバラン学園で行われる狩猟大会があった。そこで悪役令嬢リナは、野ウサギを狩る。するとそれを見たヒロインは泣き出す。


「私、屋敷でウサギを飼っているんです。それなのに目の前でウサギを狩るなんて……! ジョーンズ公爵令嬢、ヒドイです!」


 そんなことを言い出すのだ。

 それを受け、レイモンドは……。


「ソフィー。かわいそうに。ジョーンズ公爵令嬢! 君はなんてデリカシーがないんだ!? ソフィー、安心して。僕はもう生涯、野ウサギは狩らないと誓うよ」


 そう。野ウサギを狩らない……という誓いはヒロインに対してするはずなのに。


 こんなに幼い時に、しかも悪役令嬢である私に誓うなんて。


 驚き過ぎて、口をぽか~んと開け、レイモンドを見ていると。


「リナ。さっきの僕の行動、許してくれる?」


 間もなく四歳児。まだ幼子なのに。

 レイモンドはあのえくぼのできる笑顔で、すまなそうな表情をしたのだ。


 こんな顔を見せられて「許しません!」なんて言えるわけがない。「許しましゅ」と自然と答えてしまう。その瞬間レイモンドは、間もなく四歳児らしい、はにかむような笑顔になると……。


 ふわっと私を抱きしめた。


「まあ」「おっ」


 両親の驚きの声が聞こえる。


「こうして見ると、本当に愛らしくてお似合いの二人だわ」


「可愛いリナ。いつまでもパパのそばにいてほしいが……殿下だったら安心して任せられる」


 そこまで両親に言わしめるなんて!

 さすが“ハピエン”で一番人気の王太子!!

 まだ幼いながら、大人のハートも鷲掴み!!!


 さすがレイモンド!!!!!


 思わず私もレイモンドをぎゅっと抱きしめそうになり、そこで気づく。


 何をやっているんですか、私!?と。


 婚約破棄を目論んだ行動だったのに。

 これでは――。


 チラリとレイモンドの後ろにいる近衛騎士や付き人を見ると、両親と同じように大変ほっこりとした表情をしている。


 違う、これでは違う!


 レイモンドから離れようとするが、間もなく四歳児とは思えない程、力強い!


 ううん、違う。

 そうではなく、私がまだ幼くて非力なんだわ。


 そこに「昼食の用意ができました!」の声が掛かり、両親が「では殿下、一緒に昼食を摂りましょう」と声をかける。


「うん。そうしましょう。ありがとうございます、ジョーンズ公爵」


 レイモンドは大人顔負けのしっかりとした口調で応じ、さらに「リナ、行こう」と手を差し出してくれる。


 間もなく四歳児だというのに。

 既にエスコートもできるレイモンド。

 この手を払いのける……ことも考えたが。


 私がもたもたしているので、レイモンドが自身の手を私の手の平にぺたっとつけ、エスコートを始めた。その上で、あのえくぼができる朗らかな笑顔で私を見る。


 ここはかろうじてフイッと横を向くことに成功した。


 ところが!


「まあ、照れて余所見をするなんて」


「殿下があまりにも素敵で、照れ隠しをしているのだろう」


 両親の余計なフォローが入り、レイモンドもニコニコしている。


 前世記憶が覚醒したばかりで、早々に失敗し、何だか前途多難に思えるのですが……。そして悪い予感ほど当たる……というのは、前世でお馴染みのマーフィーの法則なのか。それともそもそもとして悪役令嬢がそうなるこの世界の設定だったから?


 ともかく私の奮闘が始まるのだが――。

お読みいただきありがとうございます!

本日もよろしくお願いいたします☆彡

次話は13時30分頃公開予定です~

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